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アフガン・レポート 第一部 歯止めのかからない治安の悪化

JVCアフガニスタン現地代表 谷山 博史
2003年12月 2日 更新

ラマダンは「聖なる戦い」の月?

今アフガニスタンはイスラムの断食月ラマダンの真っ最中である。私たちが駐在している東部の町ジャララバードは、これまで治安が比較的よいと言われていた。しかしラマダン入りの前後、立て続けに爆弾事件が起きた。10月22日には1日の内に電力局の事務所などを狙って3件、26日にNGOの事務所を狙って1件、翌27日にはバザールの一角を狙って1件という具合である。JVCの事務所の近くの四辻でも11月17日に爆発があり、女の子が即死した。これまでの同種の事件と異なり今回は初めてタリバンが犯行声明をだしている。ラマダン前後に社会不安を煽り、政府への信頼を失わせようと意図するものだと言われている。

国連フランス人職員の殺害事件

この原稿を書いている間にも新しい情報が次々に入ってくる。11月16日南東部の町ガズニで国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のフランス人職員が殺害されるという事件が起きた。市内のバザールを国連車で走行中、バイクに乗った二人組に銃で狙い撃ちされたのである。彼女のドライバーのアフガン人も負傷した。この事件の後、国連は立て続けに新たな警戒措置を出している。16日南部・南東部・東部駐在の外国人スタッフは一両日の自宅待機。17日外国人は2-3週間市外への移動禁止、市内でも不急の外出を控える。18日ローカルスタッフも含めて2-3週間自宅待機。18日UNHCRは外国人スタッフ30名をカブール等に待避。

国連がこれら過敏とも見える措置を取る背景には、この1-2週間に援助機関を狙った襲撃事件が頻発していることや、タリバンが繰り返し国連やNGOに対する襲撃や誘拐を警告しているという事実がある。UNHCRの職員が殺害された翌日には、同じガズニ県で地雷除去NGOのMDC(Mine Detective Dog Center)のスタッフが武装集団に車ごと連れ去られるという事件が起きた。また同じ日、ガズニ南方のパクティカでも連合軍の民生部門(CMOC)で働くアフガン人が殺害されるという事件が3件も起きた。

東部でのゲリラ活動の復活

JVCが活動する東部地域の状況に目を向けてみよう。毎日ひっきりなしに米軍の軍用ヘリコプターが事務所の上空を通過する。ジャララバードの北クナール県とヌーリスタン県で米軍による大規模なタリバン掃討作戦が展開されているのである。ガズニでの殺害事件に先立って、国連は11月4日両県全域での業務を一時的に中止した。これは10月31日夜クナール県中部ワタプール郡役所をタリバンが襲撃し一時占拠した事件や、11月1日米軍機がヌーリスタン県の村を誤爆し4人の子どもを含む6人の村人が犠牲になるという事件が起きたことも関係している。

私がクナール県の県都アサダバードで保健局長から聞いた話では、クナール県での襲撃事件というのは、北に隣接するヌーリスタン県からモーリー・ガフールの兵が越境してゲリラ活動を行っているものだということだった。このモーリー・ガフールというのは、以前ヘクマティアル(タリバンと同様反政府・反米活動を展開している軍閥)のイスラム党に属していた将軍で、昨年12月NGOの名前を騙ったアメリカの工作員に暗殺されかけた人物である。

また、ヌーリスタン県の誤爆事件で犠牲になった6人の村人は、皆ヌーリスタン県の前知事モウラヴィ・ラバニの親戚であった。モウラヴィ・ラバニは今年カルザイに解任されたばかりである。ヌーリスタン県は昨年まで治安が良いところだったのに様変わりしてしまった。私の見るところいわゆるテロ活動を行っているのはアメリカがテロ組織と名指ししているタリバンやアル・カイーダやヘクマティアルだけではない。タリバンが組織を立て直しゲリラ活動を活発化させていることも脅威だが、アメリカや政府に反感を抱く様々な武装勢力が雨後の竹の子のように湧き出してきているように思えてならない。あるNGOの地域代表をしている友人は、クナールとヌーリスタンの状況を見て対ソ連のゲリラ活動が始まったときの状況にそっくりだと言っている。ソ連に対するゲリラ活動は、クナールとヌーリスタンで始まったのである。

各地のNGOからの報告

10月2日にカブールで行われたNGOの緊急治安会議では、各地のNGOから治安の悪化を訴える報告が相次いだ。その時点では特に治安が悪いのは南部と東南部、そして北部だった。9月には東南部のNGOのアフガン人が6人も襲撃によって犠牲になった。昨年に比べて襲撃事件の頻度が15倍になっただけではなく、カブールに比べ特に地方での治安の悪化が深刻である。北部の治安の悪化はウズベク人の将軍ドスタムとタジク人の将軍アッタ・ムハマッドの衝突が激化したことと関係している。

もっとも気になるのは、東南部でタリバンと思われるグループが、NGOと関わりのある人間を探し出して制裁を加えよとしていることである。ロガール県でNGOが支援している村の評議会議長の兄弟が首を切られて処刑されるという事件があった。9月にガズニ県で起こったNGOスタッフ4名の殺害の際もNGOと協力したことが理由であったが、この事件ではNGOに協力したことを理由に処刑したということを、切り取った首に貼り付けた書面で明示しているという念の入れようであった。

地域社会がNGOと関わることで危険になる、あるいは村人がそういった危険を恐れるという局面が現れ始めているようである。事態はJVCが問題にしているPRT(連合軍の復興援助活動チーム)の問題のレベルを越えてしまった。米軍とのかかわりを誤解されることが危険なのではなく、既に政治的な脈絡の中でNGO=米軍の手先という構図でNGOが襲撃のターゲットになっているのである。地域社会に与える影響も甚大なものと考えざるを得ない。

南部や東南部で活動するNGOで撤退したNGOも多い。一方で深刻な状況にも関わらず、止まる決意をしているNGOもいる。これらのNGOは状況の悪化を表立って言わないことが多い。なぜなら支援者やスタッフ、活動地域への影響を心配しているからである。ここにNGOのジレンマがある。あまり過敏に反応すれば悪戯に社会不安を煽(あお)ることになる。と言って、アメリカのように米軍の介入を正当化するために、ことさらよい方向で状況が進展したことのみを強調することはできない。来年6月の選挙までの間に治安が悪化するであろう事は前から分かっていたことである。では、治安の悪化に翻弄(ほんろう)されず政治プロセス全体を見て将来に希望を繋ぐことができるであろうか。


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