2014年11月の記事一覧
トマ集落での劇が、いよいよ始まりました。
現場の雰囲気はなかなか伝えられませんが、そのストーリーをご紹介します。

スーダン、南コルドファン州のある村でのお話...
「ママ、新しい井戸ができたのよ!」
娘のアイシャちゃんに言われて母親のハワさんが見に行ってみると、数日前に掘削をしていた井戸の工事が終わり、村の女たちが集まって水汲みをしています。
「こんどの井戸は近くていいわね。アイシャ、さっそく水汲みよ」
ポリタンクを持って井戸端で順番を待っていると、近所に住んでいるアダムさんが帳面を持ってやってきました。
「こんど、村の井戸管理委員に選ばれてね。みんなから、井戸を運営するためのおカネを集めることになったんだ」
「なんのおカネを集めるですって?」
「井戸の点検をしたり修理の部品を買ったりするためのおカネだよ。1家族あたり月に2ポンド(註)でいいんだ」
「何言ってるのよ。そんなおカネ払いたくないわ。井戸はできたばっかりなのよ。修理なんて必要ないじゃない」

ワゴン車に音響機材を積み込んで、JVCスタッフは幹線道路を北に向かいました。
行き先は、カドグリの町から20キロほど離れたトマ集落。今日はそこで、あるイベントを行うのです。そのために、クルマの中には役者さんや音響業者の人たちも乗り込んで、わいわいと賑やかです。
イベントとは、劇の上演を通じて、村の人たちに井戸の保守管理の大切さを理解してもらおうというもの。私たちにとっては初めての試みです。
JVCは今年、国内避難民が新しく住み始めた地区を中心に、生活に必要な水を供給するための井戸を掘削、設置してきました。また、故障したまま長らく放置されていた井戸の改修も行いました。いずれも手押しポンプ型の井戸で、新しく設置したものが7本、改修は10本にのぼります。
しかし、大切なことは井戸の設置よりも、それが何年間にもわたって稼働し、使い続けられることです。残念ながら、南コルドファン州には設置して2、3年も経たずに故障し、修理されずに放置されてしまう井戸が数多くあります。この「現地便り」の記事でも、そうした事例をご紹介してきました。