2013年12月の記事一覧
「本当に、来るのかよ」
「毎朝8時頃にはここに集まるって聞いたんだ。もう少し待ってみよう」
モスクの脇に停めたクルマの中で、JVCスタッフのタイーブとアドランはあたりの様子をうかがっています。ここは、ティロ地区の避難民向け住居に程近いティロ本村。時刻は8時を10分ほどまわっています。
「そろそろ来ると思うんだけどなあ」
アドランは、待ちきれない様子で外に出て遠くを眺めています。タイーブはクルマの中で半分居眠り。今日はいつもより早起きをしてここにきたので、寝足りないのかも知れません。

南コルドファン州の州都カドグリ市郊外、ティロ地区の避難民向け住居にJVCはウォーターヤード(井戸・揚水ポンプ付き給水施設)の設置を決めました。そして話し合いの結果、完成したウォーターヤードの運営は住民が自分たちで行うことになり、そのために7人のメンバーからなる井戸管理委員会が発足しました。
というのが、前回までの経過です。
建設予定地は、230戸の避難民向け住居が建ち並ぶ敷地の北西に位置しています。既に井戸の掘削や水質検査は終了し、次に給水塔や共同水栓の建設が始まります。9月末、下見のために建設業者が現地を訪れました。JVCスタッフも一緒です。
工事は、井戸を中心に発電機用の機械室、給水塔、共同水栓などを配置して、その周囲15メートル四方をフェンスで囲います。さらにフェンスの外側には、家畜用と「ロバの水売り」用の2か所の給水所を設置します。下見の目的は、これらの配置を決めることです。
JVCの赤いレンタカーは朝から大忙しです。ぬかるんだ道に気を付けながらティロ地区の避難民向け住居まで2往復、井戸管理委員会8人のメンバーをJVC事務所まで運んできました。いえ、正確に言えば8人プラス1名でしょうか。メンバーのサファさんが、1歳になる男の子、アダム君を抱いているからです。

今日、9月29日からの2日間、ここでマネジメント研修が行われます。8人全員が座ると、狭いJVC事務所はいっぱいになりました。アダム君はお母さんの膝の上から離れないようです。
「この研修では、みなさんの『委員会』がよりよい活動をするために、必要なことを一緒に勉強していきます。よろしくお願いします」
講師を務めるのは、州政府社会開発省の専門家、タリクさんです。州内各地で、研修を通じて住民の地域活動を手助けするのがタリクさんの役目です。

井戸管理委員会の会合に参加するため、JVCスタッフはティロ地区の避難民向け住居に向かいました。ティロ本村を過ぎて畑の中に入ると、すっかり背丈が伸びたソルガムの穂先が風に揺れています。収穫は、もう間近なようです。
ソルガムの合間から、給水塔の青色のタンクが見えてきました。
「おお、ウォーターヤードが、ついに!」
窓越しに給水塔を見つけたスタッフのタイーブは、やや興奮しています。トラックが資材を搬入してからほんの数日、工事はぐんぐん進んでいるようです。

建設現場に到着すると、作業員が共同水栓のセメントを塗っているところでした。既に井戸にはポンプが設置され、給水塔、共同水栓までの配管もつながっています。水回りの工事はもうすぐ終わり、最後の工程になる機械室やフェンスの工事に移れそうです。
井戸管理委員会のメンバーも、建設現場にやってきました。
「毎日工事を見ているけどね、順調に進んでいるよ」
と満足そうに言うのはアフマドさん。彼の家は現場のすぐ目と鼻の先なので、工事のお目付け役に任命されています。