2013年7月の記事一覧
6月14日、カドグリは朝から激しい爆発音に包まれました。
明け方からの政府軍の攻撃に呼応して、郊外に陣取る反政府軍が市内めがけて砲弾を撃ち込んできたのです。
「今日は、これまでとは違う。ずっと近くから撃ってきている」
電話口から、少し興奮したハマッドさんの声が聞こえてきました。
カドグリの緊迫した状況を知った私たち首都ハルツームのJVC事務所は、現地のJVCスタッフだけでなく、カドグリにいる知り合いに電話をして情勢の把握に務めていました。ハマッドさんは、いつも私たちのパソコンを修理してくれる業者さん。カドグリの事情に詳しい「物知り屋さん」です。
「ハマッドさん、『近い』って言うけど、どのくらいの距離か分かるの?」
「ハッキリとは分からない。でも、反政府軍が丘のすぐ向こうまで来ているっていうウワサ話が2、3日前からあったんだ。それに、使っている爆弾も今までとは違うみたいだ」
「えっ、爆弾が違うって?」
ここで携帯電話が途切れてしまいました。回線が込み合っているのでしょうか。多くの人が、不安に駆られて連絡を取り合っているのかもしれません。
「ハルツームは暑いな。カドグリは雨が降り始めていい季節だっていうのに」
JVC事務所に顔を出すなり、ユヌスはそう言って笑いました。彼にとっては久々のハルツームです。そして、今回のハルツーム出張をもって彼のJVCスタッフとしての任期も終了することになります。
元々はJVCカドグリ事務所の大家さんだったユヌス。カドグリの市場で仲間と商売をしていました。「NGO」とか「人道支援」とかには、縁もゆかりもなかったわけです。
その彼が、一昨年の南コルドファンでの紛争勃発後、緊急支援を始めようとしていたJVCの臨時スタッフに志願してきました。きっかけは、紛争の口火となった2011年6月のカドグリ市街戦です。あの「恐ろしい夜」がなかったら、未知の世界であるNGOで私と一緒に仕事をすることも、あり得なかったでしょう。
それ以降、1年半にわたりJVCカドグリ事務所の中心メンバーとして活動してきたユヌス。この「現地便り」でも、私よりもはるかに登場回数が多い主役でした。しかし、事務所の運営も落ち着いた今、お互いに話し合った末、元々の領分である商売の世界に戻ることになりました。