ムルタ村で始まった共同菜園づくりのプロジェクト。なんとか用地が確保され、家畜の侵入を防ぐフェンス作りなどの準備が進んできました。1月も中旬になり、次は野菜の種子と農具の配布、そして菜園づくり研修の実施です。
研修は、ムルタ村の三つの地区(南地区、中地区、北地区)でそれぞれ40人を対象に行われます。菜園への参加者は各地区それぞれ100家族以上になりますが、時間や場所の制約から、その中から40人に研修を受けてもらい、その40人が研修で学んだ内容を他の家族にも伝えていく、というやり方です。
各地区には菜園づくりの世話役として、数名の村人からなる「菜園委員会」がつくられています。南地区では、この菜園委員会が40人の研修参加者を選ぶことになりました。

菜園委員会のリーダーは、野菜作りの経験が豊富な農家の主婦、アシャさんです。アシャさんは、この「現地便り」にも何度か登場しているお馴染みの顔です。
研修の参加者を確認するためJVCスタッフがアシャさんを訪ねると、いつもは温厚な彼女がなぜか今日に限って「村人の中によくない人たちがいる」とカンカンに怒っていました。
「一体何があったのですか?」
と尋ねると、おおよそ次のような話でした。

研修は午前から午後にかけて行われるので、JVCが食材を持ち込んで村の主婦に調理してもらい、昼食を提供します。「食い物の恨み」なんてコトバがスーダンにあるかどうか分かりませんが、どこでも食事の内容はもめごとのタネ。なので、私たちもそれなりに気を遣って、牛肉の煮込みと豆料理、それに皆が大好きなタハニヤ(すりゴマと砂糖を混ぜたもの)とジャム、という村では「おもてなし用」とされるメニューを用意します。南地区では、アシャさんの近所の主婦たちが調理を担当します。
アシャさんが研修への参加について村人に話したところ、何人かの男性が「昼飯には何が出るのか」と尋ねてきたのだそうです。そこでアシャさんが説明すると、男性はみるみる不機嫌になって「村で作った食事なんかダメだ。昼食をカドグリの町から運んでこないのなら研修には参加しない」と言ったのだそうです。
「町から運んでくる食事」というのは、恐らく、町の食堂で調理される鶏のモモ焼きなどを想像しているのでしょう。ちなみに、日本とは違い、スーダンなど多くの国では一般に鶏肉のほうが牛肉よりも高価で贅沢な食事と考えられています。
「アシャさんたちが作ってくれる食事で、皆さん楽しんでくれますよ。それが不満だという人は、研修には参加してもらわなくていいと思いますよ」
JVCスタッフはそう言ってアシャさんをなだめたのでした。
さて、研修の当日。午前中、参加者は大きな木の下に集まって、州政府農業省の専門家2名の講義を受けます。

まず、これから菜園で育てるモロヘイヤ、オクラ、ルコラ、ナスなどの野菜がどんな栄養素を持っていて、どんなに健康に大切かが説明されました。また、乾季にはカドグリの町の野菜は遠くの産地から運んでくるため鮮度は悪いのに値段は高く、ムルタのような近くの村で野菜を作れば、町の消費者は安く新鮮な野菜が手に入るし、村人にとっては収入が増えるので、こんなに良いことはない、という話がされました。
そして、昼食の時間。もちろん、予定通り村の主婦たちが調理した料理です。 アシャさんに文句を言った男性は参加していたのでしょうか?
それは分かりませんが、誰から不満が出ることもなく、みんな昼食を美味しくいただき、お茶やコーヒー、それにおしゃべりを楽しんだところで、午後の研修が始まりました。
午後は、近くの菜園に移動して実技を学びます。灌漑用の池から水を引いてくる方法、まっすぐな畝の作り方、それぞれの野菜の種の蒔き方と栽培法など、実際に役立つことを学びました。


たっぷりと2時間は行ったでしょうか。終了した頃には、日が傾きかけています。
元の木の下に戻ると、研修受講者以外の菜園への参加者も三々五々、集まってきました。そして1家族ごとに6種類の野菜の種子と2種類の農具の配布が行われ、すべて終了。
いよいよ、このあとは種まきです。でも、そのためには畑に十分な水が必要です。次回は「どうやって畑に水を引くか」についてご報告します。
【おことわり】
現在、JVC現地代表の今井をはじめNGO外国人スタッフが南コルドファン州に入ることは、スーダン政府により制限されています。このため、2012年1月以降の「現地便り」はカドグリの状況や活動の様子を、JVCスーダン人スタッフの報告に基づき今井が執筆したものです。
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