「ユヌスさん、菜園にはフェンスが必要だよ」
ここは、JVCが菜園作りの活動を進めているムルタ村の南地区。村人から選ばれた菜園委員会のメンバーとの打ち合わせの席で、メンバーのひとりがJVCスタッフのユヌスに向かってそう切り出しました。たちまち、その場はフェンスの話で持ちきりになりました。
「この前も、となり村のウシがエサや水を探してたくさん来ているのを見かけたぞ」
「となり村だけじゃないぞ、数は少ないけどムルタのヤギやウシだってあちこち歩き回っている」
「もし菜園を囲むフェンスがなかったら、菜園の野菜はみんな食べられてしまうぞ」
皆が言うには、草がほとんど生えない乾季には、菜園は格好のエサ場になってしまうのだそうです。
「それで、JVCはフェンスを作ってくれないの?」
JVCがフェンスを作らないことは以前の住民集会でも説明をしたのですが、それでも村の人たちは、JVCが金属製の立派なフェンスを作ってくれると期待しているようです。
「JVCは灌漑用の溜池の改修をして、農具と野菜の種を配布する。菜園づくりに慣れていない人に対しては研修会も行う。でも、申し訳ないけれど、それ以外のことはできないよ」
ユヌスがあらためてそう説明すると、委員会のメンバーはがっかりしたようでした。
「資材を集めて自分たちでフェンスを作ったら?」
とユヌスが言うと、
「以前は、山から枯れ枝を集めて作っていたよ。でも紛争が起きてからは、あちこちに見張りの兵士もいるし、遠くの山に行って木の枝を集めるのが難しくなったんだ」
という答えが返ってきました。
「では、家畜が菜園に入ってこないように、昼間は交代で畑仕事をしながら見張っていたらどうか?」
ユヌスはそう提案してみました。
「うーん、何もしないよりいいかも知れないが・・・でもやっぱりフェンスの方がいいかな」
はっきりと結論が出ないまま、その場の話は終わりました。
その後の数日間、JVCスタッフは農具や種子の調達、研修の準備に追われていましたが、1週間ぶりに南地区を訪ねてみました。
なんと、菜園用の広い土地のあちこちで村人がフェンス作りを始めています。集めてきた枯れ枝があちこちに積まれ、その脇では地面に等間隔の穴を掘っています。この穴に、枯れ枝を差し込んで、さらに横に結んで補強をしてフェンスにするのです。


枯れ枝は、無事に集められたのでしょうか?
「あっちの山から取って来たよ」
作業をしていた村人はこともなげに言っています。
なかには、フェンスに囲われた菜園の入口にトタン板の扉を付けている人もいます。そして既に、フェンスの中を耕し始めている人もいます。


「おお、みんな、本気になっているな」
と思わず嬉しくなるユヌスでした。

【おことわり】
現在、JVC現地代表の今井をはじめNGO外国人スタッフが南コルドファン州に入ることは、スーダン政府により制限されています。このため、2012年1月以降の「現地便り」はカドグリの状況や活動の様子を、JVCスーダン人スタッフの報告に基づき今井が執筆したものです。
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