2012年6月の記事一覧
(前回から続く)
スーダンの主要穀物であるソルガム種子の支援を前にして、私たちはJVCが配布する品種について議論していました。在来種である「カラマッカ」に対して、最近の改良種である「ワッダハメッド」は少雨でも生育し収穫量が多いなど、いいことずくめです。
しかし、果たしてそうなのでしょうか。私は、疑問に思ったことを農業省からJVCに派遣されている専門家、ムサさんに尋ねてみました。
「ワッダハメッドを収穫して、そのうち少しの量を翌年の種まき用に保存しておくとします。翌年、畑にまいて育ちますか?」
するとムサさんは正直に、
「ワッダハメッドの種は1世代限りです。収穫した種を2世代目として翌年まいても、うまく育ちません」
「えっ、そうなの?」
私よりも、ワッダハメッドを支持していたイルアミンがこの説明に驚いたようです。
「じゃあ、次の年の種はどうしたらいいの?」
「また、種子会社から買うことになります」
日本人にとってコメが大切であるように、スーダンの人々にとって「ソルガム」がなくては食生活が成り立ちません。でも、読者の皆さんにとっては「ソルガムって何?」という感じではないでしょうか?

日本では「モロコシ」と呼ばれる雑穀で、食用とされていた時代もあるようですが、今はほとんど家畜の飼料としてしか流通していません。
しかし、ソルガムは作付面積で世界第5位の主要穀物、アフリカでは多くの地域で栽培されています。なにせ、乾燥に強いのが特徴。年間降水量が数百ミリ以下(日本の全国平均の3分の1程度)の地域が多いスーダンでは、圧倒的な主要作物です。
本日6月20日、「世界難民の日」を迎えました。今日この日も、スーダンから幼い子をかたく胸に抱き、空腹をこらえながら国境を目指す人たちがいます。
2011年6月のスーダン内の内戦勃発から、今年2012年3月には南北スーダン間の武力衝突に拡大した紛争により一般の人びとが大きな被害を受けています。多くの人が殺され、暴力をふるわれ、さらに多くの人が自分の家と畑を後にして、避難しました。

戦闘がなお続く南コルドファン州(スーダン領)から、国境を越えて、南スーダンへ入る人は日に300人とも500人ともいわれ、現在5万人以上が南スーダンのキャンプに身を寄せています。
キャンプ「イーダ」(南スーダン共和国ユニティ州)からJVCスタッフ、ジョージ・オケロの報告を紹介します。
(キャンプの様子をお伝えするため写真を掲載していますが、いずれも本文の登場人物とは直接関係はありません。)
(前号から続く)
ムルタ南地区の小学校の一角で行われた話し合いには、地区の住民リーダー、ジュマさんのほか7人が集まってくれました。どういうわけか女性が多く、先ほどまで一緒だったアシャさんも参加しています。
暑さのピークとなる4月が過ぎ、5月に入ると待っていたかのようにカドグリで今年最初の雨が降りました。そろそろ雨季の訪れ、耕作シーズンの始まりです。農具の配布を終えた私たちは、次の活動である野菜作り研修と種子の配布に向けて、住民との話し合いのためにムルタ南地区を訪問しました。
4月下旬、私たちはハジェラナル地区、ムルタ地区での農具配布の準備を進めていました。配布は、4種類の農具をひとつのセットとして行います。
耕作前の畑の掃除に使う「ケレン」は日本で言うなら熊手、畑を耕す「ウム・タバブ」は小型のクワ、「ジャラヤ」はシャベル。「ミンジ」は刈取りや雑草取りに使う鎌です。

こうした農具の名称はいずれも南コルドファン地方独特のものだそうです。その地方で長く使われてきた農具なのでしょう。配布数は合計650セット。小さな個人商店しかないカドグリの町で、それだけの数が調達できるのでしょうか?

「3日だけ待ってくれよ」何軒かの店を訪ね歩いたJVCスタッフのユヌスに、ある商店主が言いました。「そうか、3日ならいいぞ。どこから仕入れるんだ?」「仕入れるんじゃないよ。ここで作るんだ」その店は鍛冶屋だったのです。奥ではふいごで起こされた真っ赤な火が燃えています。地元で何でも作れてしまうことは、私たちにはちょっとした驚きでした。