ハルツームの街中を歩いているとポケットの携帯電話が鳴り始めました。と思った瞬間、1コール鳴っただけでプツリ。
「ワン切り」してきた奴はいったい誰だ?と思いながら携帯の着信記録を見ると、「タバン・ウィルソン」。もちろん、私から掛け直させて通話料を節約しようという魂胆です。
女性からの電話ならさておき、男から「ワン切り」されたって掛け直すもんか、と思ったのですが、タバンはJVC車両技術研修の卒業生。これも仕事のうちか(笑)と思い直して掛け直すと、電話口からはいつもの早口で「はい、元気?オレ、今ジュバに戻ったんだ。登録だよ、登録。住民投票の有権者登録をするために、休暇もらって戻ってきたんだ」と、思いっきり弾んだ声が返ってきました。
タバンは、卒業後に国際NGOに就職し、南部の中心都市ジュバを離れてジョングレイ州で働いています(「現地便り」No.79参照)。南部スーダン自治政府は役所、企業や各種団体に対して「従業員が有権者登録のため故郷に帰りたいと申し出た場合、必要な休暇を与えるように」との通達を出しており、タバンもそのおかげでジュバに戻ることができたようです。
「さっき登録所に行ってきたんだ。登録証をもらったよ。見せてあげたいけど、電話じゃ無理だね、ハハハ」とはしゃぐタバン。よほど嬉しいのでしょう。

南部スーダン各地の2,623ヶ所の登録所には、連日多くの住民が詰めかけているようです。登録期間は12月8日まで続き、年が明けて1月9日が、スーダンの歴史に刻まれることになるであろう、南部独立を問う住民投票の日です。
しかし、南部での高揚感とは対照的に、「北部スーダンに居住する南部出身者」を対象とする有権者登録は極めて低調です。北部には、内戦を逃れてきた国内避難民を中心に現在も100万人以上の南部出身者がおり、こうした人々ももちろん住民投票の有資格者として、居住地の近くで登録・投票することができます。しかし、首都ハルツームを中心に北部に設置された175ヶ所の登録所では閑古鳥が鳴いているようです。
このことは連日新聞で大きく報道され、ハルツーム市民の間でもちょっとした話題になっています。そして、これを巡ってハルツーム中央政府与党(国民会議党:NCP)と南部自治政府与党(スーダン人民解放運動:SPLM)とが激しい非難合戦を繰り広げています。
ハルツーム政府側は「南部自治政府は北部に居住する南部出身者に対して『有権者登録するな』と脅している。『統一スーダンの維持』に投票されるのを恐れているのだ」と主張します。これに対する南部側の言い分は、「そのような脅迫は一切していない」とした上で、「人々は、北部で登録・投票したら投票結果がハルツーム政権によって改ざんされるのではないかと恐れて、登録できないのだ」。加えて、南部政治家の非公式発言として「登録所周辺に秘密警察を配置して有権者登録に来る住民をチェックしているのはハルツーム政権だ」というものまであります。
はたして、どちらの言い分が正しいのでしょうか?
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