JVC整備工場が修理する主力車種は、トヨタ・ランドクルーザー。ちょっとした馬力が要求されるこのクルマのエンジンはボリューム感のある直列6気筒。工場の中では、あちこちでこのエンジンが取り外され、整備士や研修生が作業しています。

「最近、エンジン分解修理(オーバーホール)の注文がやたらに多い。去年まではこんなことはなかった」と苦笑いするのは、工場長のサイモンさん。「2005年に内戦が終結して難民の帰還が始まり、UNHCR(国連高等難民弁務官事務所)をはじめ多くの国連機関、NGOが人道支援活動を開始した。その頃に購入したクルマが、南部スーダンの過酷な環境の中で最近になってガタが来ている」
今日も、国際NGOがエンジンの調子が悪いクルマを持ち込んできました。「この整備工場の評判を聞いて来たんだ。この前、ここでエンジンを分解修理した別のNGOのクルマが、すごく調子良く走っているみたいだからね」
良い評判が広まるのは何ともありがたい話ですが、数えてみると、整備スペースに入っている8台のうち半分がエンジン分解修理のための入庫。まるで、重症患者を専門に扱う病院のようになってしまいました。
「クルマは人間の身体と同じ。とってもデリケート。特にエンジンの分解修理には細心の注意を払わなくてはならない」とサイモンさんは朝礼でスタッフ・研修生を前に力説します。「分解したら根気よく洗浄して、少しでもキズがないか、破損していないか、見極めなくてはいけない。少しの破損や摩耗でも、そこからシリンダー内の圧力が漏れて、十分なエンジン出力が得られなくなる。自分の修業時代は、洗浄ばかり何年もやらされたものだ」

さて、研修生たちは分解修理に興味津々。サイモンさんの言う通り、まずは洗浄が彼らの役割ですが、少しでも知識を得ようとベテラン整備士の作業を見つめています。

「自分にも手伝わせてくれ」と言ってきたのは、昨年の研修コース卒業生で現在は整備士として働くボスコ。「自分が研修生の時には、エンジン分解修理なんてやる機会がなかった。だから分解修理の仕方も知らないまま整備士になっちゃったけど、これじゃ一人前とはいえない。もっと勉強したい」熱心な彼に刺激されたのか、ほかの卒業生たちも競うように作業に参加してきました。

車両の老朽化について「南部スーダンでの3年は、ほかの国の10年以上にあたる」と言う整備士もいます。劣悪な道路状況だけでなく、燃料(ディーゼル)の粗悪な品質が、クルマに深刻なダメージを与えています。
しかし、UNHCRはじめクルマの持ち主である国連機関、NGOには申し訳ありませんが(笑)、さまざまなダメージを負った車両は研修生にとって格好の勉強材料です。ベテラン整備士の指導でエンジン分解修理をしながら、今日も彼らは多くのことを学んでいます。
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