2008年10月の記事一覧

こいつもエアコンの風が弱い、この車で今月3台目。ブロアスイッチを最強にしても吹き出し口からはため息のような風しか出てこない。モーターはゴウゴウと全開で回っている。やはり外気導入にしていると、たとえ走行距離3万キロでもここスーダンではこうなってしまう。「あーまたエバポ掃除かー、使い方さえ気を付けてくれたらこんなことにはならないのに」と独り言を言いながらガスを大気放出しつつエバポレーターを取り外す。そうなんです、ここでは砂埃がひどいため外気導入にしていると写真のようにエバポの結露に砂埃がくっついて積もり積もってフィンが完全に塞がれてしまうのです。
JVC整備工場では元難民の若者14人が車両整備士を目指して研修を受けていますが、1年半から2年にわたる長期の研修期間も、残りわずかになりました。12月末には彼らは卒業し、社会に巣立っていかなければいけないのですが、そのためには就職先を見つけなくてはいけません。内戦終結後の南部スーダンでは政府機関やNGOが多種多様な職業訓練コースを提供していますが、最も難しいのが、この「就職先探し」だと言われています。
20年以上に及んだ内戦のため、南部スーダンには職業訓練を受けた若者たちの受け皿になるような「企業」がありません。復興景気を当て込んでレストラン、ホテル、建設関係などの企業が周辺国から進出してきていますが、経営者も従業員も外国人というケースが多く、なかなかスーダン人が割って入る余地がないのが実情です。
自動車整備業界も事情は同じこと。ある程度設備の整った工場はケニア人、ウガンダ人の経営が多く、従業員も同国人というパターンです。そこに割って入るか、それとも南部スーダン政府に所属する整備士になるか、道路工事業者の車両整備部門を目指すか、或いは国連機関やNGOに整備士として就職するか、そういったところが彼らの選択肢になります。
JVC整備工場の研修生たちが12月に卒業するまで、いよいよ残り3ヶ月。実技面ではぐんぐん力量を付けてきた彼らですが、学科面でも、私たちが立案した講義スケジュールの最後のトピック「電装システム」を残すだけとなりました。しかしこの「電装システム」、今までの授業内容と比較してはるかに難しいのです。