スーダン日記
子どもたちへの補習学級と並行して、保護者やコミュニティの住民たちとワークショップを開催し、「コミュニティの公共物を守っていくためには?」について話し合いました。
このようなワークショップを開催する背景には、政府や国連、NGOなどの支援団体の援助により設置された施設の多くが、コミュニティによって適切に維持・管理されずに使用されなくなっている事実があります。設置から数年後に使用されずに朽ち果てているハンドポンプ式井戸、しっかりと管理されずソーラーパネルやジェネレータが盗難され機能しなくなった給水施設、ぼろぼろになった学校の机・椅子。
3月、スーダン教育省は、COVID-19の感染拡大を防ぐ対策として、全国の学校の休校を決定しました。JVCが活動する南コルドファン州の就学率は低く、避難民を中心に多くの児童が正規の学校に通っていないため、今年1月から、学校に通っていない子ども達が一定の学力をつけて正規の学校に編入することを目指し、補習学級を開始していました。しかし、学校の休校を受けて、補修学級も3月中旬から休止せざるを得ませんでした。
その間、テレビやインターネットへのアクセスがなく遠隔教育が難しい避難民を対象に、どういった手段で教育の機会を提供することができるのか試行錯誤していました。州保健省がCOVID-19の啓発活動以外でのコミュニティへの立ち入りを許可しなかったため、啓発活動と一緒に宿題を配布する、コミュニティ内の先生が対面で教える、など様々な案を検討している中、以前報告した通り、JVCの活動地域にて集落への武力攻撃が発生して、子どもを含む多くの住民が避難を余儀なくされたのです。
前回の記事にて、それぞれ異なる民族から成る武装グループの衝突があり、各集落の住民への攻撃に発展した状況をお伝えしましたが、本記事ではJVCが実施した緊急食料支援について報告します。
避難民への聞き取り@ヘル・ジャディーダ地区
現地の行政機関などによる調査は、事態発生直後の混乱や人の動きが流動的な中で行われることもあり、避難民の登録数などが正確でないこともしばしばあります。活動にあたっては、こうした調査報告書を参考にしつつも、より詳細な状況調査を行う必要があるため、JVCのスタッフがヘル・ジャディーダを訪問し、家族の人数、出身地域、居住地、家の被害、帰還の意思、行政サービス(保健・医療や水)へのアクセス、支援状況、困りごとを含めた聞き取りを実施しました。
先月中旬、JVCの活動地である南コルドファン州カドグリにて、アラブ系牧畜民ハワズマとヌバ民族アンゴロの間で武力衝突が発生し、少なくとも26人が死亡し、負傷者も多数にのぼります。2歳の男の子やJVCのスタッフの親族2名を含む多数の一般市民も犠牲になりました。
JVCは2011年のスーダン政府と反政府組織との紛争により避難民となった人々が暮らす避難民地区にて長年支援を行ってきましたが、こうした地区でも甚大な被害が出ています。銃やロケット弾による攻撃が行われ、略奪・放火により家や社会インフラが破壊され、緊張状態は続いています。カドグリで今、何が起こっているのかを報告します。
前回の記事では、主にCOVID-19影響下における首都ハルツームの様子をお伝えしましたが、本記事ではJVCの活動地である南コルドファン州カドグリの状況をお伝えします。
COVID-19による影響
カドグリを州都とする南コルドファン州では、5月6日現在、COVID-19の感染者は確認されていません。しかしスーダン政府からは周縁の地として扱われ、発展・開発から取り残された地域であり、長い間紛争の影響を受けてきました。その為ハルツームと比較しても医療の水準は低く、手洗いに必要となる「水」へのアクセスも十分とは言えず、COVID-19に対して敏感になっている人も多いです。
元々カドグリでは多くの物資をハルツームからの輸送に依存しています。例えば新聞でさえ、毎日ハルツームから運搬されるので、カドグリの売店に新聞が並び始めるのは夕方になってからです。そのため、給与は相対的に低いものの、物価はハルツームより10%程高いのです。それに加え、外貨不足によりスーダンポンドの通貨価値が暴落し、スーダン全体でも2月のインフレ率は71.3%(スーダン中央統計局発表)を記録しており、COVID-19の影響を受ける前から、厳しい生活を強いられています。
世界中で瞬く間に拡大しているCOVID-19はここスーダンにもやってきました。5月6日現在、感染者は累計852人、死亡者数は49人に達しています。スーダンでの感染状況、政府の措置、そして街の様子や人々の声をお伝えします。
COVID-19感染者数の推移と政府の大胆な措置
日本政府の対応と比べてみても、スーダン政府の措置が早いことは明らかです。これはスーダンだけでなくアフリカ諸国に当てはまることですが、国内の医療水準(施設、器具、医者のレベル)を考慮した場合、感染爆発をどうしても防ぐ必要があるため、多くの国で早期の国境閉鎖、ロックダウンなど強硬的な措置が取られています。
日付 | スーダン政府の措置/出来事 | 累計感染者 | 累計死者数 |
---|---|---|---|
3/12 | スーダン国内で初めてのCOVID-19感染・死亡1名 | 1 | 1 |
3/14 | 全国の大学・学校の休校を発表(1か月) | 1 | 1 |
3/17 | 空港の閉鎖、国境の閉鎖を発表(4月23日まで) | 1 | 1 |
3/24 | スーダン全土にて外出禁止開始(午後8時~翌午前6時) | 3 | 1 |
3/31 | 外出禁止時間変更(午後6時~翌午前6時) | 7 | 1 |
4/13 | 4月18日から首都ハルツームでのロックダウンを発表 (州を超える移動制限、必需品(野菜・パン・石油等)以外の店舗営業停止) | 29 | 4 |
4/15 | 宗教省、モスクでの礼拝を禁止 | 32 | 5 |
4/18 | ハルツームでロックダウン開始(午後1時~翌午前6時) | 66 | 10 |
4/20 | 空港閉鎖を5月20日まで延長 | 92 | 12 |
5/5 | 一日の感染者数が初めて100名を突破 | 778 | 45 |
【COVID-19関連情報】スーダンでも新型コロナウィルスの感染者が確認されたため、夜間外出禁止などの措置などがとられています。スタッフは今のところ通常通り勤務していますが、保健省等の行政の指示に従い、一部の活動を休止・縮小しています。今後も状況を注視し、住民の方々やスタッフの安全を第一に活動して参ります。(スーダン事業担当 小林)
JVCはスーダンの首都ハルツームと活動地のカドグリの2か所に事務所を構えて、活動しています。この度、カドグリ事務所に新しい仲間が加わりました。
約30人の候補者の中からたった1人選ばれた新スタッフ、モナ・イブラヒムへのインタビューです。
昨2019年4月に30年続いた独裁政権が倒れてから、スーダンでは大きな変化が起きています。国内紛争の解決を優先課題に掲げる新政権の主導と、南スーダンのキール大統領の仲介により、反政府組織との包括的和平合意の署名に向けた交渉が続いています。
JVCが活動する南コルドファン州にも、大きな変化が訪れています。2011年の紛争以来、人々は政府地域と反政府地域に分断されてきました。両地域間の移動は厳しく管理され、特に反政府地域から出ることは、病人や女性・子どもなど以外、難しい状況が続いていました。
両地域に生き別れになった家族は、8年以上もの間、お互いに会うことができずにいましたが、和平交渉が進む中、移動の制限が緩和され始めました。そして昨年11月、両地域の境界の村に市場が設置されると、双方からの人々が来て商売をするだけでなく、家族との再会の場にもなりました。また、市場を通じて、たくさんの人が家族や親せきとの再会を求めて、政府地域にやってきました。

およそ8年ぶりに再会した家族が、涙と笑顔に溢れる再会を果たす瞬間に接し、長引く紛争の中、再会の日が来るのかもわからず、計り知れない辛さと戦ってきたのだと改めて思います。また、8年ぶりの再会の気持ちについて聞くと、「8年6か月だ」と強調するその言葉から、彼らがどれほどこの瞬間を待ちわびていたのか、ここに至るまでの時間の重みを感じます。
JVCは正式な和平合意による正式な紛争の終結を見据えて、新たな展開を視野に、活動を続けています。
Yahoo!ネット募金でもご支援受け付けています!
スーダンで国内紛争の影響を受ける人々と子どもたちを支えたい! - Yahoo!ネット募金
日本国際ボランティアセンター(JVC)の募金ページ | Tポイントでも寄付できます。
アッサラームアライクム!スーダン駐在員の今中です。
今、スーダンは劇的な変化を迎えています。最新情勢を現地からお伝えします。まず、今までの情勢はこちらをご参照ください。
8月にエチオピアとアフリカ連合(AU)の仲介により憲法宣言が署名され、スーダンは民主化への道を歩み始めました。
こんにちは、スーダン駐在員の今中です。
スーダンでは大規模デモにより4月に30年続いた独裁政権が崩壊しました。しかし、実質的に権力を掌握した軍・警察から成る暫定軍事評議会に対し、デモを主導する反体制同盟は文民政権への移行を求めて、対話が重ねられていました。その最中の6月、ハルツームの軍本部前で続けられていたデモ隊による座り込みに対し、治安部隊は武力による強制排除を行い、多くの犠牲者を出しました。エチオピアやアフリカ連合の仲裁によって協議は続き、つい先日、民政移管を可能にする憲法宣言が暫定軍事評議会と反体制同盟によって署名され、市民も概ね歓迎しています。一連の政情不安を受け、日本人駐在員及び現地スーダン人職員は、十分に注意しながら安全を確保し、活動を続けています。
さて、活動地の南コルドファン州では、今回の政変による混乱は少なく、学校建設などの活動を続けています。現在活動の対象としているのは、紛争により反政府地域を含む様々な地域に避難した人々が、情勢の安定を受けて故郷に戻ってきている地域ですが、水・医療・教育など基本的な行政サービスが崩壊し、住民は厳しい生活を強いられています。これは避難民の帰還を妨げる大きな要因ともなっています。