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子どもたちに希望を!

南アフリカ事業担当・現地代表兼任 渡辺 直子
2010年6月16日 更新

格差、HIV/エイズ、貧困、犯罪...日本で報道される南アフリカの姿にはあまりポジティブなものがないような気がしますが、南アフリカにはもちろん、私たちと同じく「家族の幸せ」を願う普通のお母さんがいっぱいいて、お洒落が大好きで恋愛や将来に悩む少年少女たちもたくさんいます。

そして、南アフリカはアパルトヘイト時代「政府が何もしてくれないなら自分たちでなんとかしよう」ということで市民活動が盛んだったのですが、この名残として今でも「子どもたちがなんとか未来に希望を持てるように」と願って活動をしている素敵な人たちがたくさんいます。

南アフリカの「バルセロナ」

5月に日本のメディアの方の取材を受け入れた際に、「サッカー少年の様子が撮りたい」とのリクエストがありました。というわけで、急遽アレンジを引き受けてくれたのがシドニーさん。彼は普段、普通であればゴミになってしまうような紙くずとか新聞紙とか木や金属のかけらを使ったアートを地域の小学校の子どもたちに教えています。教員ではないのに「先生」と呼ばれて、子どもたちにも慕われています。

トロフィーとシドニーさん。トロフィーとシドニーさん。

そんな彼が今回サッカー少年たちのために用意してきたのが、もう捨ててしまう紙を利用してつくったトロフィー。写真にもありますが、とても紙でつくったとは思えないほどしっかりしています。そしてデザインがとっても素敵です!子どもたちも興味津々です。今回、シドニーさんは非常に短い期間で地域の小学1年生から中学生1年生の男の子たちのサッカーの対抗戦をささっとアレンジしてくれて本当に助かりました。これも普段から先生たちと信頼関係を築いている彼だからこそできたことでしょう。穏やかで笑顔がとても素敵です。

今回行われたサッカーの試合には、地域のサッカークラブの少年たちの試合もありました。私たちが訪問したのはJVCも活動しているソウェト内にあるマペトラ地区というところですが、サッカークラブの名前はその名も「マペトラ・バルセロナ」。1965年に創設された歴史あるチームですが、おそらく創設者がスペインのFCバルセロナがお好きだったのでしょうか。日本の立派なサッカークラブではなく、草野球チームを想像していただくとそのイメージに近いと思います。今でこそグラウンドには芝がありますが、つい昨年までは土まみれになって練習していたとのことでした。

男子に混ざって女子もサッカーしてます。男子に混ざって女子もサッカーしてます。

そんな「マペトラ・バルセロナ」、なんとこれまでプロのサッカー選手を3人も輩出しているのですが(一人は現役でケープタウン・アジャックスのトゥラニ・セレロ選手だそうです)、現在もなかなか強いチームのようです。当日は、子どもたちが限られたユニフォームを交換しながら試合に出ていましたが、このユニフォームの一つが、昨年ソウェトで行われた少年チームの試合で優勝したときにスポンサーからもらったものとのことでした(一つは地域の方の寄付)。

そこで長年コーチを務めているのがモロイさん。お話の文脈から察するにお歳は40歳前後の若い方です。「マペトラ・バルセロナ」には、9歳、11歳、13歳、15歳、17歳までの5チームがありますが、これらのチームの指導を、小さい子たちのチームについては地域の若者たちの力を借りながら、一人で引き受けています。

左端が子どもたちに指導するモロイさん。左端が子どもたちに指導するモロイさん。

音楽の時間で

JVCがソウェトで菜園研修を実施しているジフネレニ中学校はソウェトで唯一オーケストラがある学校です。その指導をしているのがツェツィ・モフケニ先生。彼はアパルトヘイト時代にプレトリア大学で音楽を学んだプロの先生です。大学では当時黒人の生徒は一人で、当然のことながら差別を受けたそうですが、その努力と才能で厳しいコースの数少ない卒業生となりました。ちなみに、普段は数学と科学を教えているそうです。

その彼が、ジフネレニ中学校に異動してきて2008年からオーケストラを始めました。楽器は古いものをどこかでもらったり、日本のNGOピースボートさんが日本で使われなくなった中古の楽器を運んできてくださって、それを使っています。

右端が指導するモフケニ先生。右端が指導するモフケニ先生。

先日、ひょんなことからその演奏を聴く機会を得ました。「普段どおりに練習しているところを見せて」と話していたのですが...。生徒たちがいつも練習している部屋に入ると部屋の壁に沿って椅子がずらっと置かれそこに生徒たちが座っています。中央に目をやるとモフケニ先生を中心にヴァイオリン、ヴィオラ、チェロを持った7人の生徒が。

「あれ? 今日はいつもより人数が少ないのかな? そして周りに座っている子たちは何?」と思ったものの、うながされるまま椅子に座り、演奏を聴き始めました。7人の生徒たちが指揮者である先生と楽譜をにらめっこしながら必死に音楽を奏でます。一年ほど前に聞かせてもらったときよりかなり上達していて驚きました。

直後、ふと座っている生徒が立ち上がって演奏者の後ろにやってきました。「おや...?」と思っていたらなんとオペラが始まったではありませんか!!! 音がお届けできないのが心から残念なのですが、ヴァイオリンの音色に合わせて、すらっとした細身の男の子がとても深く、それはそれは美しい声を出して切々とイタリア語で歌い始めたのです。モフケニ先生は大学でオペラも学んでいました。南ア人の歌のうまさをよく知っているはずの私と、同じく自分が日々教会で歌っている現地スタッフのドゥドゥも、一瞬何が起きたのかわからず言葉を失いました。

皆ほっそりしているのに驚くほどの声量です。皆ほっそりしているのに驚くほどの声量です。

その後、演奏にあわせて合唱あり、伝統的なダンスありで10曲もサービスしてくれたのですが、まさしく「心が震える」時間を過ごしました。南アの学校では、音楽の時間というものがなく、子どもたちも楽譜が読めません。そんな彼らにじっくりゆっくりと根気強く演奏やオペラを教える作業というのはどんなに根気がいることだろうと思います。

子どもたちに誇りをもってほしい

今回ご紹介した3人に共通しているのは、「子どもたちがこの経験を通じて自分に誇りを持てるような経験をしてほしい。なんとか希望を与えたい」という子どもたちへの強い思いです。彼らはそのために無償で自分の時間をささげています。]

JVCが活動するエリアは貧困地区と言われていて、中にはもちろん家庭環境が厳しく貧しい子も多くいます。サッカーや音楽に関わる場が唯一の憩いの場である子どもたちもいることでしょう。オペラを歌っていた男の子、女の子はこの春に中学校を卒業したばかりの高校一年生ですが、卒業した後もこうして歌いに帰ってくる場があり暖かく迎えてくれる先生がいて、仲間がいます。南アのような厳しい社会環境においては、子ども時代にこうした自分に誇りを持てる経験を持つこと、自分のことを気にかけてくれる大人がいると知ること、同じことを目指す仲間がいることは、子どもたちにとってかけがえのない経験であり、その後の人生を前向きに生きていく力となり、大人になったときの心の支えになると思うのです。それがサッカーでも、音楽でも、アートでも勉強でも同じです。

現在、南アフリカは残念ながら若い人たちが将来に希望を持てるような社会とはいえない現実がたくさんあり、私自身どうしたらいいのか途方にくれる思いをすることがあります。でもそんなとき、シドニーさん、モロイさん、モフケニ先生のような人がいるのかと思うと、心強く、前向きな気持ちになることができます。これは子どもたちにとっても同じことなのだと思います。


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