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パレスチナでの活動

栄養強化ミルクとビスケットの配給の終了とガザ事業の今後の方向性について

パレスチナ現地代表 今野 泰三
2012年12月25日 更新

本事業が始まった経緯

2002年当時、第2次インティファーダが激化する中でパレスチナの経済は急激に悪化していました。同時期、ガザ地区に対する封鎖政策も厳しくなり、ガザへの人・物の移動が著しく制限され、ガザの子どもの栄養失調が深刻な問題となりました。そのような状況の中、JVCは2002年から、米国NGOのANERA(American Near East Refugee Aid)と共同で、ヨルダン川西岸地区(西岸)で緊急食糧支援を実施し、地元の工場で生産された牛乳を支援物資として使用するようになりました。それは、緊急支援を実施しながら、地元製品を用いて、打撃を受けたパレスチナの経済を少しでも活性化することが重要だと考えての取り組みでした。

さらにJVCは2003年から、ANERAと共同で、ガザの子どもたちの栄養失調(特にタンパク質不足の改善と貧血症)の予防を目的に、ガザの幼稚園児への鉄分強化牛乳および栄養ビスケットの食糧支援事業を開始しました。この事業でも上記と同じく、西岸のナーブルスで生産された牛乳をガザの子どもたちに配布するようになりました。その後、本事業には他の支援団体も加わり、最大時には年間2万人の子どもを対象に実施されるようになりました。JVCも毎年350~400人程の幼稚園児を担当し、受け持った幼稚園とのつながりも強くなっていきました。

本事業の目的

JVCは、本事業において4つの目標を掲げてきました。

  1. 栄養ミルクとビスケットによる子どもの栄養状態の改善
  2. 地元産品の購入を通じた経済活性
  3. 健康教育による、子どもの栄養状態の改善
  4. 現場の活動で得たガザに関する情報の発信(JVC独自の目標)

1. 栄養ミルクとビスケットによる子どもの栄養状態の改善

本事業では、JVCの提案で、牛乳に鉄分を加える技術を牛乳工場に導入しました。それによって、貧血の子どもの割合が開始時の約40%から終了時は約20%にまで減少し(2007-2008学年分やその他微量栄養素が豊富な牛乳とビスケットが子どもたちの貧血予防に役立っていることがわかるとともに、子どもの栄養状態も改善されました。

2. 地元産品の購入を通じた地元経済の活性化
開始当初から、パレスチナの産業を応援することも大きな目的でした。牛乳は事業の開始時から西岸産を用いました。また鉄分強化ビスケットは、パレスチナで作ることが困難だったため、西岸の製菓工場に鉄分強化ビスケットを作る技術の指導を行い、結果的にビスケットも西岸産を使用できるようになりました。さらに2010年9月からはビスケットをガザ産のものに変更し、疲弊したガザの地場産業を後押ししました。

3. 健康教育による子どもたちの栄養状態の改善
子どもたちの栄養状態を改善するためには、幼稚園の教員、保護者、子どもたちに栄養や衛生についてより深く知ってもらうことも重要です。JVCと他の支援団体の事業担当者は、食糧支援が将来途絶えたとしても、教育を通じて得た知識や技術は持続し、子どもたちの栄養失調の予防・改善に役立っていくと考え、2004年からは本事業の一部として健康教育も始めました。

4. 現場の活動で得たガザに関する情報の発信

さらにJVCは独自に、本事業での活動を通じてガザの状況に関する情報を収集し、それを日本国内に発信していくという目的も持ってきました。JVCにとっては、ガザの子どもたちに関わり続けることは彼/彼女たちの健康を守るためだけではなく、封鎖・紛争が与える経済的影響や子どもたちの健康状態への影響などを理解し、日本社会に伝えていくための重要な手段でもありました。JVCは本事業を通じて、ガザの人々の暮らしを日本社会に伝えることに尽力してきました。

配布事業の終了決定の経緯

開始当初は緊急支援の性質が強かったこの事業ですが、事業が長引くにつれ、次第に「子どもたちに継続的に栄養を与え、子どもたちの健康を守ること」が主目的となっていきました。ガザの封鎖が続き、経済状況に改善の兆しが見えない状態においては、子どもたちの栄養不足の原因となる貧困状態の改善は困難です。幼稚園に通う子どもたちの貧血状態は、牛乳とビスケットを提供することで確かに軽減されます。しかし、毎年、幼稚園には新しい子どもたちが入園してきます。同じ子どもたちを対象に事業を行っているわけではないため、翌年には、別の子どもたちに対し、同じ状況からの改善を繰り返すことになります。このように事業自体の発展性や持続性がないということを現場で実感しながらも、毎年ゼロからの繰り返しになっても子どもたちの健康を守るために牛乳とビスケットの提供を続けなければならない、という厳しい現実が長く続いていました。

そのためJVCは、この事業の必要性を感じて支援を継続する一方で、緊急支援が落ち着いた2009年頃から、これが果たしてJVCが行うべき支援なのかどうかについて内部で議論を始めました。そして、幼稚園児に牛乳とビスケットを提供し続けることがいまだ必要であるならば、WFPやUNICEFなどの国連機関に引き継ぐのが最善だと考えるに至り、ANERAとともに国連機関に働きかけを行いました。同時にJVCは、事業開始当初は不定期に行われていた健康教育をより重視するようにANERAに働きかけました。その結果、事業の一つの柱として健康教育が組み込まれてきたため、JVCが撤退しても「残る効果」をつくることができたと判断しました。国連機関への引継ぎは叶いませんでしたが、後者が配布事業から撤退を決めるための一つの判断材料となりました。

栄養改善事業の新たな展開

さらに、2011年度事業の開始を前に、ANERAの資金難のため、事業そのものの実施を取りやめると伝えられました。この通達を受けたJVCはこれを、母親の主体的な参加や自立支援などのJVC独自の工夫を採り入れた事業へと展開していくチャンスでもあると考え、これまでの配布事業を「子どもたちの栄養・保健改善のための母親への教育事業」とする形で継続することに決定しました。前年度に行った調査で、衛生面が栄養状態に大きく関係することと、母親が子どもの健康状態などについて幼稚園に相談する機会が少ないことが分かっていたからです。そのため2011年学年度からは、本事業の目的3「健康教育による栄養状態の改善」が持続するように、新たに2つの目的を加えました。

  1. 子どもたちへの実践教育を通した衛生面の強化
  2. 幼稚園と母親が協力し、母子がともに栄養・衛生について学ぶ機会をつくることで、母親と幼稚園の協力関係を強化する

JVCは、幼稚園で歯ブラシ、歯磨き粉、石けんなどを配布し、子どもたちが手洗いや歯磨きを習慣づけるための実践教育を行いました。その結果、幼稚園教師から、「トイレの後や遊んだ後に、自ら手を洗いに行くようになった」「『子どもへの歯磨きの教え方がわからないから教えてほしい』と相談に来る母親がいた」という感想が挙げられ、母子の衛生面での意識が向上していることがわかりました。

また、月に一度幼稚園で、母親を招いてオープン・デーを開催しました。以前は、母親が幼稚園に来て子どもたちの健康に関して幼稚園の先生と話し合うはほとんどなく、「いくら幼稚園で子どもに『体に悪い食べ物』について教えても、母親が気にせず与えていれば意味がない」というのが幼稚園の先生の懸念でした。そこで、オープン・デーでは、母子が一緒に衛生・栄養について学ぶ機会作りの一環として、母親と先生が人形劇、紙芝居、歌や踊りなど工夫して作成し、披露しました。人形劇に参加した母親は、「このように自分でストーリーを考えて人形劇を行うのは初めてだったが、とても楽しかった。家でも子どもたちに教えていきたい」と感想を述べていました。

さらに、安価で栄養価の高い食事を作る研修も実施しました。この研修では、調理用ガスや調味料などを持ち寄る母親がいたり、毎回のオープン・デーに積極的に参加する母親もいたりするなど、これまで幼稚園に来る機会がなかった母親たちの積極的な参加が見られました。また、母親たちが子どもの成長に関する悩みなどを幼稚園と共有するようになったり、幼稚園でのボランティアを申し出るようになったりするなど、母親と幼稚園が協力して子どもの健康を守っていくという関係が少しずつ生まれてくる様子が見られました。

今後のガザ事業の方向性

JVCは、牛乳とビスケットの配布事業を終了する一方で、これまで関わり続けてきた幼稚園とのつながりを保ちつづけ、教育事業が持続していくよう見守っています。さらに2011年からは、活動の持続性をより重視した取り組みとして、現地NGOのArd El Insan(AEI=人間の大地)と共同で、地域全体で子どもたちの健康を守っていく活動も開始しました。本事業では、その地域出身の母親に研修を受けてもらい、その研究を受けた母親ボランティアたちが、母親・妊婦に栄養・衛生教育や子どもたちの成長状態の検査を行います。

2011年は、ガザ市内3地域で母親ボランティア40人が、母親と妊婦約3000人に栄養・衛生教育やグループ・カウンセリングを行い、子どもの成長状態を検査して貧血・栄養失調・くる病が疑われる場合に専門医に紹介する活動を展開しています。また、栄養教育の一環として地域ぐるみで栄養価の高い食事作りのための調理実習を実施し、母親と母親ボランティアとの交流の場、栄養改善に関する情報交換の場の提供も行っています。さらに、2012年からは上記の活動に加え、医療クリニック・学校・幼稚園・モスク・地域センターなど地域の関係者が一緒に子どもたちの健康の維持・促進に取り組んでいく地域健康委員会の設置も目指して活動しています。

JVCパレスチナ事業のスタッフはこれらの事業を通じ、自らの生活や社会を守り、変えていきたいという意思を持つ人々の存在が、ガザの最大の資源であるということを学んできました。封鎖が解除されない限り、根本的に現在の状況を改善することは困難です。牛乳とビスケットがなくなることで、その分の微量栄養素の補給はなくなります。しかしその代わりに、母親が調理実習等で学んだ知識を使って、同じ食材から栄養価のより高い食事を作れるようになります。また、国際支援がたとえなくなっても、母親ボランティアの育成や、家庭訪問先での教育により、子どもたちの栄養失調を早期発見し、地域の人々自ら問題に対処できるようになります。あるいは、子どもたちへの手洗い指導によって、子どもたちをアメーバ感染から守り、貧血の原因が減少することも期待されます。

JVCは、ガザの封鎖が子どもの栄養問題の根本にあることを国際社会に発信しながら、一方で、今ある社会資源を最大限にいかし、その潜在性を花開かせることで、ガザの人々が自らの手で子どもたちの健康を守り、社会を守っていけるようにガザの人々を支援することを目指しています。

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