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ツリーを片づけられないのはなぜ?

―エルサレム・西岸&ガザのクリスマス事情―
パレスチナ現地代表 山村 順子
2020年1月28日 更新

皆さんはクリスマスと聞くと、いつを思い浮かべますか?
日本のみなさんにとっては、12月24日がイブで、12月25日がクリスマス!という認識が強いのではないでしょうか。日本では25日を過ぎると、ツリーが片づけられ、お正月の飾りつけが始まりますが、聖地・エルサレムでは事情が少し異なります。

エルサレムで暮らしていると、クリスマスツリーをはじめとするクリスマスに関する装飾が、25日を過ぎてもしばらく飾られているのを目にします。これは西岸に行っても同じでした。正直、おおらかなところがあるアラブ人の性格上、もしかして片づけるのが面倒でずっと飾っているのかなと駐在を始めたころは思っていたのですが、これにはちゃんと理由があるようです。

ベツレヘム、聖誕教会付近の装飾(2020年1月18日撮影)ベツレヘム、聖誕教会付近の装飾(2020年1月18日撮影)

宗派によって異なるイベントの日にち

下記が、パレスチナ人クリスチャンが関係する12月~1月のイベントです。

  • 12月24日:クリスマスイブ(西方教会)
  • 12月25日:クリスマス(西方教会)
  • 1月6日:クリスマスイブ(東方正教会)
         公現日(カトリック:東方の三博士のベツレヘム来訪を祝う日)
  • 1月7日:クリスマス(東方正教会)※グレゴリオ暦に基づく
  • 1月13日:大晦日(東方正教会)
  • 1月14日:新年(東方正教会)
  • 1月18日:クリスマスイブ(アルメニア正教)
  • 1月19日:クリスマス(アルメニア正教)
         公現日(東方正教会:東方の三博士のベツレヘム来訪を祝う日)

(出典:Passia, 2019)

上記のスケジュールを見ていただくとわかるように、エルサレム旧市街の4区画の一つ、アルメニア人地区を中心に住むアルメニア人たちは、1月半ばにクリスマスを祝うため、それまではクリスマスツリーが飾られていてもおかしくないということでした。(この時期に祝うのは、世界中に住むアルメニア人の中でもエルサレムに住むアルメニア人たちだけだそうです。)

ベツレヘムの聖誕教会前にある大きなツリー・昼間(2020年1月18日撮影)ベツレヘムの聖誕教会前にある大きなツリー・昼間(2020年1月18日撮影)
ベツレヘムの聖誕教会前にある大きなツリー・夜(2020年1月18日撮影)ベツレヘムの聖誕教会前にある大きなツリー・夜(2020年1月18日撮影)

年々少なくなるクリスチャンの人数

しかし、エルサレムでもクリスマスが盛大に祝われている一方で、クリスチャンの人口は当地では非常に少なくなっています。エルサレム・西岸・ガザに住むパレスチナ人クリスチャンの数も、今ではかなり減ってしまいました。

2018年のデータによれば、イスラエル全体で約190万人のパレスチナ人が暮らしており、そのうちの13万人がクリスチャンです (CBS, Statistical Abstract 2019)。これに比べると、エルサレムの総人口に占めるパレスチナ人クリスチャンの割合は1.8%と少数で、エルサレムに住むパレスチナ人の人口の中でもわずか3.7%にとどまっています(Passia,2019)。
また、西岸地区のパレスチナ人クリスチャンは人口の2%、ガザ地区においてはたった1%にも満たないと言われています(IMEU, 2012)。

なぜクリスチャンが減っているのかというと、パレスチナ人のムスリムに比べ、西岸の外に出るための許可(イスラエル側から出る)が下りやすく、欧米に移住していくケースが多いからです。また、パレスチナ人クリスチャンのほとんどは、ヨーロッパの教会系の団体が建てたキリスト教系の学校へ通うことが多く、宗教が同じである上に学校で西洋文化に慣れ親しんでいることも、移住しやすい理由のひとつになっているようです。

ラマッラー(自治区・中心地)の街中にあるツリー(2020年1月16日撮影)ラマッラー(自治区・中心地)の街中にあるツリー(2020年1月16日撮影)

連帯するパレスチナ人たち

エルサレムに住むとある40代のムスリムの女性は、「パレスチナ人の多様性がなくなってしまうから、クリスチャンの人口が減っていくのは悲しい」と言っていました。また、同じくベツレヘムに住む20代のタクシードライバーの男性は、乗客に信仰する宗教を聞かれた際、「クリスチャンもムスリムも同じパレスチナ人、どっちだって関係ないさ」と言って、あえて宗教を答えることをしませんでした。ときには「ムスリムは多数派で、少数派のクリスチャンのことをわかっていない!」というクリスチャンや、「クリスチャンは国外に出やすいし、経済水準が高い人も多いし、俺たちムスリムよりもずっと恵まれてる!」というような不満を口にするムスリムもいたりしますが、それよりは同じパレスチナ人として連帯している印象が強いです。

クリスマスシーズンのパレスチナを歩いていると、ムスリムのお店でもクリスマスに関連したグッズを売り出したり、クリスマスツリーの前でヒジャーブ(ムスリム女性が頭に被る布)を被った女の子たちが楽しそうに記念写真を撮っていたりなど、一緒にイベントを祝っている様子があちらこちらで見られました。また、2017年にアル=アクサー・モスクがイスラエルによって一時閉められてしまった際も、モスクの外でムスリムたちに交じってクリスチャンが一緒に祈る姿が伝えられていました。逆に、クリスチャンのイベントにイマーム(イスラムの宗教指導者)が参加することもあるそうです。実はエルサレムにあるクリスチャンの学校の生徒の大多数はムスリムなので、クリスチャンの子どもたちも日常的にムスリムの子どもたちと触れ合っています。

占領下の生活から脱出するために海外での暮らしを選ぶクリスチャンの気持ちは理解しながらも、パレスチナが多様性を認め合って人々が暮らす場であるために、できるだけ多くのクリスチャンがこの地にとどまっていて欲しい、とツリーを見上げながら願わずにはいられませんでした。



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