「全てのものが高くなっている。誰が6シェケル(約180円)/kgもするトマトを買えるんだい?今のガザで一番安いのは"人間"だよ」と、栄養失調児の治療を行っている現地NGO「人間の大地」のドクターは皮肉を込めて言いました。
この日は、JVCが栄養失調児への栄養食提供を支援しているハンユニスの栄養センターの様子を見に行きました。ガザ市からハンユニスへ海岸沿いの道を車で走ったのですが、海からの悪臭がひどい地域がありました。現在ガザでは、日々8千万リットルの一部未処理の汚水が垂れ流しになっていると言われています(Palestinian Economic Prospects: Aid, Access and Reform –World Bank、September 2008)。これは、汚水処理施設の修理に必要な資材が入ってこない、また汚水を処理するために必要な電力、燃料が十分に入ってこないためと聞いています。海岸沿いには「この地域の海水は汚染されているので泳がないように」という注意の看板が立てられていました。これから冬になり雨季になると衛生状態も心配です。道端では、ゴミから物を拾っている学校帰りの子どもたちも見かけました。

この日は初めてセンターに来た3人を含む34人の子どもたちが来ていました。そのうち、重度の栄養失調として治療を受けているのは3人。現在治療を受けている重度の栄養失調児は10人だそうです。
このセンターでは、栄養失調の度合いを軽・中・重度(レベル1〜3)のレベルに分けていますが、この日はレベル4の、"超"重度の子どもが来ていました。アラちゃんが来たのは、9月初旬。20ヶ月だったその時は、体重は5.3kgしかありませんでした。今日までに6kgまで体重が増えましたが、6kgでもまだ健康な3ヶ月児の体重です。「放っておいたら命の危険だってあった」とセンターの栄養専門家の女性は言います。
栄養失調の治療と同時に貧血症の治療のためにもセンターに通っている12ヶ月のドハちゃんは、1ヶ月と1週間前にセンターに始めて来ました。この日まで体重は5.35kgから5.6kgに増えています。まだ重度の栄養失調状態から回復していませんが、貧血症の治療も受けて、顔色はよくなっているとお母さんは言います。「大丈夫、頑張って」と栄養専門家の女性にも励まされ、お母さんに笑顔が見えました。
なかなか回復が見えない子どもたちに関しては、センターに通ってきている子どもであっても、栄養専門家のスタッフたちが家庭訪問を行っています。家庭でどのような食事をさせているのか、家の中の衛生は保たれているかなどを実際に見て、指導を行うそうです。とても根気のいる仕事ですが、「お母さんたちがどれだけ家で頑張ることができるかも大切。そこをサポートしなければ」といいます。

「封鎖が続くガザは"刑務所"だと言われてきたけれども、刑務所はまだ、食事は出されるし最低限の人権は保障されるからまだましだよ。今のガザは放置された"檻"だよ。窒息しそうな人たちがたくさんいる。もしラファの国境が完全に開いたら、三分の一の人たちがエジプトに"脱出"するだろう」と、ガザに住む友人は言います。子どもたちにとってもお母さんたちにとっても厳しい状況が続くガザですが、なんとかセンターに通い続けてもらい、一日でも早く子どもたちが元気に回復することを願うばかりです。
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