2022年3月の記事一覧

ラオスの農村では、豊かな森から食料や木材などの資源を、「必要な分だけ」とる生活が営まれてきました。
しかし、急速な経済発展が進む近年、プランテーションやダム建設、森林伐採などが進み、明確に分けられた村や森の区域がないこともあり、農村部住民は不当な土地収用や、森林伐採のトラブルに直面しています。
ラオスの豊かな森を巡ったトラブルを防ぐため、JVCは2村を対象に、
「コミュニティー林」の設置を行いました。住民が利用している森で保存したい区域を保全林として行政登録し、さらに規則や範囲を示す看板も設置することで、村外の人びとにも「伐採してはいけない」ということを伝え、開発事業などによる不当な土地収用にも対抗できるようになりました。

現地の村人からは、
「村境が明確になった現在は、自分の村の土地であるとして声を上げられるようになりました。」
「コミュニティー林は将来にわたって役に立つと思います。これまでに違反はありません。村内の会議のたびに規則を伝えてきました。これからも規則を守ってこの森を保全していくことができると思います。ドンプライの森にはタケノコ、ローズウッド、マイニャンなどの大きな木が多く残っていて、豊かな森だと思います。保全していなかったら木が切られていたかもしれません。規則もしっかりしていて、委員会によってよく管理していけると思います。これまで水力発電の送電線建設のために村の森の一部が収用されたりしましたが、共有の森がコミュニティー林として登録され、区域や利用の実態が明確になったことで開発事業の関係者と交渉しやすくなりました。これからは相手のなすがままにならないようにしたいと思います。」
というような力強い声を聞くことができました。
村人の手で守られていくミュニティー林が、今後もラオスで土地収用や森林伐採を防いでくれることに、大きな期待が寄せられます。


ラオスでは、農村部の住民が普段利用している土地が、開発事業などによって、十分な補償もないまま破壊されたり、とり上げられてしまうといったことが起きています。
また、住民自身によるものも含めた換金作物栽培や木材伐採などが行き過ぎた結果、森がいつの間にか失われてしまうこともあります。
このような状況を改善していくためには、村人自身が生活の基盤である自然資源や、土地、そして自らの権利を守り、安定した暮らしを営んでいけるような仕組みが必要です。
そこで、JVCは土地利用などに関する法律研修を実施。2018年から21年にかけて、10村で住民に対し、研修を計46回行い、参加者はのべ2,279人にのぼりました。
活動の内容としては、住民の土地や自然資源の利用権利を守ったり、土地問題などの係争への対処法を伝えたりするため、関連する法令をまとめたカレンダーやポスターを使うなど、分かりやすい形で村人に説明を行ってきました。
2019年度には、法律研修に参加した村人のうち、平均して72%の村人が研修内容に理解を示し、さらに2020年度、参加した村の自治会メンバーの64%が研修内容を7割以上理解するという結果を生み出すことができました。


村人からは、
「これまでは証書がないことによるトラブルを避けるために、土地の貸し借りなどが控えられてきた。法律研修を受けてからは、土地を収用されたとしても補償金を得たり、土地の貸し借りでトラブルが起きたりしないように、面積や持ち主などが詳細に記載された公式の土地証書を得る作業を一部の村人が始めている。」
「森林、土地、河川などに関する様々な法令を学ぶことができた。以前はカレンダーと言えば日付や月齢を確認するだけだったが、今は法律カレンダーの法令の内容をみている。村の会議で法令の内容やカレンダーについて村人たちに説明した。」
というような声を聞くことができ、法律研修の内容が、村人自身の手によって実践・共有されていることが窺えます。
自然と共生する素晴らしい術と共に生活してきたラオス農村部の村人たち。
日々の生活の基盤となる自然豊かな土地を失わないためにも、村人自身による保護・管理が今後も続いていくことが重要です。