イラク・ヨルダン現地情報
JVCイラク事業担当の原は2010年8月9日より17日まで、イラク北部クルド地区内のスレイマニヤ市とアルビル市を訪問し、キルクーク市で実施中のプロジェクトのフォローとキルク−ク及び近接する地域のローカルNGOとの打ち合わせを行いました。この訪問を通して聞いた現地の人々の声とこれを受けての原の雑感をお伝えします。
今年もあっという間に年末が近くなり、やり残したことが気になるこの頃、ヨルダンでは「クル・アーム・ワ・アントン・ビヘイル(あなた方一同に平穏がありますように)」の挨拶に季節感を感じます。イスラームの二大祭りの一つ、イード・アル・アドハー(犠牲祭)の挨拶の声が、11月末の街のあちこちで聞かれました。
イラクは11月27日(金)から12月1日までの5連休。スンニ派は27日から30日までが祭日、シーア派は一日ずれていて28日から12月1日まで。もともと金曜は礼拝日で祝日なので、ちょうど両方に都合の良い形。
犠牲祭は、神の試練により自分の息子を犠牲として殺すことになった預言者イブラヒムが、最後は神の思し召しで、息子の代わりに羊を差し出すことになったという故事に基づいています。
まだまだ治安が安定しないバグダードでは、祝日前の買い出しで賑わう市場での事件発生が懸念されましたが、今年は大きな事件にはならず、とりあえずは無事に祝日を迎えたようです。
イラク隣国のヨルダンからレポート
治安状況は安定に向かっていると報道されることの多いイラクですが実際のところはどうなのでしょうか。治安が安定した理由としては、07年の米軍増派やマリキ首相の治安作戦の成功がよく取り上げられます。しかし国民融和と言う点では問題はなにひとつも解決しておらず、来年1月に予定されている選挙に向けて今後党派間の抗争や治安事件が激化する可能性があります。その予兆といえる事件が8月19日や10月25日にバグダードで発生した連続爆破事件です。10月25日の事件について日本での一時帰国を終えてヨルダンのアンマンに戻ったイラク事業調整員の原からの報告が届きました。
今の治安とイラク避難民の状況
JVCは、2007年よりイラク国内で治安の悪化により避難を余儀なくされた人びとへの支援を行っています。2006年に内戦状況と呼ばれる最悪の状態であったイラク国内の治安の状況も、その後はいったん落ち着きを取り戻して来たと言われていました。しかしそれでもイラク国内で避難生活を続ける人びとが元の場所に戻り、元通りの生活を安心して営める状況にはなっていません。
JVCは2002年よりイラク支援を始め、筆者も2003年以来イラク支援に関わり、イラクの人々が戦争の惨禍から立ち直り、将来への希望を持てる様に見守って来た。しかしこの6年間はイラクの人々にとって将来の希望を持っては裏切られる日々ではなかったか。
家から逃げて暮らす人々
今イラクでは500万人近くの人々が家を逃れて国外や国内各地で避難生活を送っています。その半数は2003年に始まった戦争、そしてその後の治安の悪化のために避難民となった人々です。
3月20日にバグダッド在住の友人のひとり、ムハンマドさん(仮名、50歳台)に日本から電話をしてみた。イラク戦争開戦から6年が経っての状況を聞いてみるつもりで電話したのだが、どうも彼らにとっては3月20日の日付はピンと来ない様子で、