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2013年7月29日

「カンボジアの春」は訪れるのか?
- カンボジア第五回国民議会選挙を通して-

CLEAN 環境教育担当 樋口 正康
2013年7月29日 更新

去る7月28日(日)、カンボジア国民議会(下院)選挙が開催されました。定数123議席に対して、暫定的な発表では、与党カンボジア人民党が68議席(前回90議席)を獲得し過半数を維持した一方で、野党カンボジア救国党も55議席を獲得し躍進しました。こうした結果につながった背景には何があったのでしょうか。選挙活動の様子を通して、カンボジアの今を考えます。

与野党の選挙活動

大きな傷跡を残した内戦を乗り越え、1993年にUNTAC(国連カンボジア暫定統治機構)の支援のもと実施された第一回国民議会選挙から数えて5回目となる今回の選挙は、前回の選挙以上の盛り上がりを見せています。その理由は、一党独裁体制を長期間維持してきた与党カンボジア人民党に対し、現状に不満を持つ人々が声をあげ始めているためです。こうした声に応えるように、分裂していた野党は統一会派である「カンボジア救国党」を結成し、ある種の「社会運動」になりつつあります。

また、こうした野党の動きを後押しするように、フランスに亡命していた救国党の党首サム・ランシー氏にシハモニ国王より恩赦が出され、選挙を前にしてカンボジアへの帰国が実現しました。帰国日当日は、何万人という観衆がプノンペン空港で彼を出迎え、野党への期待の大きさがうかがえました。

コンポントム県を訪問したサム・ランシー氏。多くの観衆が彼を出迎える。 (写真撮影:坂本貴則)コンポントム県を訪問したサム・ランシー氏。多くの観衆が彼を出迎える。 (写真撮影:坂本貴則)

圧倒的支配にチャレンジする民衆

では、なぜ選挙活動が社会運動のように映るかというと、権力やカネを握る与党支持者に対し、カンボジア救国党の支持者は若い世代が中心で、フェイスブックやなけなしの私財をなげうって戦っておうとしているためです。人民党の政治集会に参加すると1日5ドルの日当が貰えるそうですが、救国党の支持者の場合、自腹を切って選挙運動に参加している人が多いそうです。

選挙運動では、人民党の選挙カーにはマイクや拡張器が備えられ、人民党の帽子やTシャツがしっかり配布されています。そして、支持層が多く乗る高級車には、党ステッカーが貼ってあります。その一方で、救国党の選挙カーにはそのような装備はほとんどなく、マイクを使わずに「ドー」(クメール語で「交代」の意味)という人々が声をあげています。そして、支持者の多くはバイクで移動しながら選挙運動に参加しています。

マニフェスト!?社会変化メッセージ!?

日本で公約「マニフェスト」という単語が国民に知れ渡ったのは、ここ10年の話ではないかと思います。私が幼い頃は、祖父母や両親が各政党のマニフェストを見て投票を行うということはなかったと思いますが、カンボジア人民党とカンボジア救国党も、それぞれユニークなキャッチフレーズを掲げています。

人民党:
「人民党は、クメール・ルージュから人々を開放した」
「人民党は、インフラ整備の充実と安定した経済発展をもたらした」

救国党:
「変えるのか、それとも変えないのか」
「工場労働者の最低賃金150ドル、教員の最低給料250ドルにします」
「燃料やコメの価格を調整します」

現在の経済成長を続けるために与党を応援するのか、汚職や民主化のために野党を応援するのか、これが今回の選挙の争点でした。カンボジア経済が急速に成長する理由の一つは、安い人件費を見込んで海外から進出する企業が増えているためです。そこで生まれる雇用、取引、投資が、今の好調な経済を支えています。そうした中、工場労働者の最低賃金が150ドル(現在の約2倍)になれば、縫製業にとっては頭を抱える問題です。

その一方で、給与が安い公務員が副業をすることはこの国が抱える大きな問題で、公務員も含めて最低賃金を上げることに対して反対する意見は少ないと思われます。経済成長を優先するのか、賃金の改善を優先するのか、カンボジアの国民は大きな選択を迫られています。

街頭パレードを行う、野党カンボジア救国党の支持者街頭パレードを行う、野党カンボジア救国党の支持者

「アラブの春」から学ぶ!?

「アラブの春」の民主化の流れからは、独裁的な権力へ挑戦する運動としては歓迎すべきことですが、今のカンボジアにとっては、現政権の地位が揺らぐことで、順調に続く経済発展やその上に成り立つ暮らしに陰を落とす恐れもあります。民主化の動きは歓迎されるべきということに相違ないと思いますが、エジプト、シリアなどの教訓から、民主化を目指す運動は、社会が抱える全ての問題の解決策になるということはなく、短期的には秩序が大きく乱れる一因になったことも否定できません。一部のメディアでは、イスラムという教えを大切にする国では、「アラブの春」が失敗だったのではないかということも議論されていることは、みなさんもご承知の通りです。

オバマ大統領が始めて黒人の大統領になったこと、エジプト独裁政権が民衆の力で倒されたこととも重なり、今回のカンボジアの総選挙でも大きな動きが感じられます。ただ、今回の選挙だけでは、社会変革の大きな期待をするのは難しく、今後も長期的かつ持続的に民主化の動きが続いていく必要があると思います。

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