現在、JVCカンボジアでは、米の収穫量が増える「幼苗一本植え(SRI)」という農業技術を研修し、農家に勧めています。カンボジアの伝統的な稲作のやり方と異なるやり方を試すのは、農家の人たちから見ると、カンボジアの他の地域で成功していると聞いても、やはり不安ですし、半信半疑、というのが正直なところです。それでなくても大多数の農家が、毎年、自分の家族が食べる分の米すら十分に収穫できないので、SRIのために田んぼの一部でも使うのは、大きな冒険です。

JVCの「生態系に配慮した農業による家族経営農家の生計改善支援(Community Livelihood Improvement through Ecological Agriculture and Natural Resource Management[CLEAN])」プロジェクトでも、SRIを紹介しています。今年、新たに活動を開始したシエムリアップ県ソトニコム郡で、農家から30mx35mほどの田んぼを借り、実際にSRIをスタッフで実践してみることにしました。この際、プロジェクト担当者だけでなく、JVCカンボジアのスタッフ総出でSRIで田植えを行い、スタッフ全員がSRIについて理解を深め、JVCがカンボジアの農家の食料確保を支援していることを体感してもらいチームワークを強めるねらいもありました。

SRIの主な改善点は、以下のとおりです。
・田を2回耕し、たい肥を1ヘクタールあたり3-5トン入れ、土を平らに
・実の入った良い種を選ぶ(塩水選)
・種をまいて15日以内の元気な若い苗を選ぶ
・苗を抜いて田植えをするまで長く置いておかず、15-30分以内に植える
・苗は一本ずつ植える
・田植えは浅く

・田植えは苗と苗の間隔を30cmあけ直線に植える(風通しと日当たりを良くし、除草も楽にできる)
・田植え後、水が多すぎぬよう、水を管理する
・草抜きし、根と土壌に酸素を入れる
2006年、JVCがSRI研修を行なったシエムリエップ県チークリエン郡の20村では、およそ130世帯がSRIを実践しました。初めての試みなので、一世帯あたり平均4.8アール(480�u)、約4割(53世帯)が1アール(100�u)以下で試験的にSRIを実践したところ、同地域では米の収穫量は、伝統的な方法では1ヘクタール当り1.3トンですが、SRIを実践した田では、平均2.3倍、1ヘクタール当り3トンに増えました。

カンボジアは現在雨季で、各地で田植えが行なわれています。今年、JVC活動地でSRIを試す農家が増えるか、収量があがるか、農家にとってもスタッフにとっても、真剣勝負が続きます。
