5月初旬、新しい活動地シェムリアップ州にて、新たなプロジェクト地の選考調査に同行させていただきました。ここチークラエン郡は私にとっては特別な思い出の地。10年前「悪魔の兵器・地雷」(ポプラ社)という子ども向けの本を名倉睦夫さんと小林正典さんがつくる際に通訳として同行し、はじめて地雷除去を見学した地です。今では日帰りも簡単なシェムリアップまでの陸路が緊張の連続だったのは、たった10年前のことなのです。北に見える山の方では、クメール・ルージュと政府軍の最後の戦闘が続いていました。Halo TrustというイギリスのNGOの地雷除去現場はスイカ畑になる予定地。世界の紛争地で写真を撮る小林さんが「早く帰ろう。ここは子どもが笑っていないから」と言いました。この言葉はその後も私が平和を測る一つのバロメータになっています。今カンボジアではどこでも子どもが笑って手を振ってくれます。

国道から山に向かって入る道の両側の村の高い木々には見覚えがあるものの、秘境コーケー遺跡群への観光道路として拡張された道には、かつての緊張した面影はまったくありません。比較的早く続けて降った雨がたまった農地で、農民は田起こしを始めていました。このあたりも土地投機が進んでいるらしく、四駆でゆっくり走る私たちは都会から来た土地買い人に間違われたりもします。
さて、本道を離れて農道に入ります。ゆっくり走る車窓からJVCスタッフ全員が外を眺めながら、「いいネ…いい所だ…」と左に座る山崎さん。「ロオー・ナッ!(すごくいい)、ロオー・ナッ!」と右に座るクメール人スタッフ。出張なのに漢方薬の草木を採集したり食用犬を買い付けたりと仕事そっちのけで自分の興味に走る人たちも多いので、「もしかしてJVCスタッフも土地買いに興味があるのかなー、それとも農業に適した土地って意味かなー」とちょっと心配になり、「さっきから『いい』って言っているけど、どういう意味?」と恐る恐る質問。

「それはね、JVCプロジェクトにとっていい場所って意味よ」と。そして「やることがいっぱいあるってこと!」とドンぴしゃり!山崎さんも日本語で同じことつぶやいていましたよ(山崎さんは、農業のやる気が見られるねーともつぶやいていた)。「ふつうの人が『ロオー』っていう場合とは違うよね・・」と車内大爆笑のうちに、コミューン議会所へ。1ヶ月前の選挙で新メンバーが決まったばかりで、彼らにはこれが初仕事、妙にまじめな感じ。村の様子や他団体の活動の状況などを聞き、JVC活動紹介の集会日程を打ち合わせ。
「あっという間に雰囲気かわるからねー」と山崎さん、ぜひ後日確認しに行きたいです。子どもが笑わなかった地にも笑顔が戻ったけれども、土地投機などが進み農民の暮らしは厳しくなっている中で、JVCの活動によって人々が落ち着いて農業できる暮らしになったらと願います。それにも増して今回の同行では、地方事務所での自炊・雑魚寝をしながら同じ気持ちで働く素晴らしいJVCスタッフの人柄に触れたことが一番の収穫でした。