2010年3月の終わり、まだ雪が残った道路を車で走っていくと、宮城県伊具郡丸森町筆甫地区に到着しました。何やら道路で看板を立てている集団が目に入ってきました。
集団の中に8年前、タイの農村で学ぶインターンシッププログラムに参加した吉澤武志さん(以下:タケさん)がいました。この地域の桜、「ウバヒガン桜」の観光名所を知らせる看板を立てていました。

タケさんは、インターン6期生(2002年5月〜2003年3月)として、タイの農村に派遣されていました。現在は宮城県の農村地域で、地域の住民自治組織の事務局長となって、地域の福祉・教育・地域づくりなどをおこなっています。具体的には、高齢者福祉のための介護予防教室や、地区の特産品の開発、地域内の農産物販売ルートの開拓、災害対策としての自主防災組織の設立など、地域の課題全般を行う地域づくりNPOのようなものです。
インターンに応募する際はNGOや国際協力の仕事に興味があったタケさんですが、インターンが修了し、帰国した後は農的な生活をしながら地域活動をすることを選択しました。インターン時代はどんな経験をしたのでしょうか。
今回はタケさんにインターンで学んだことが現在どのように生かされているのかを聞きました。
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タケさん:「インターン時代は、滞在先の家族と上手にコミュニケーションをとることができなくて、滞在先にもスタッフにも非常に迷惑と心配をかけたと思っています。タイの農村で1年間過ごすことで、『人が生きるとはどういうことか』『人生を楽しむ方法』『自分とタイの農民とのつながり』を学びました。
それらは仕事上においても、どのような方法や観点で自分の住む地区を活性化させていったらいいのかという点で生かされていると思っています。そして地域を活性化させていくことにどのような意味があるのかを学んだと思っています。」
−インターン修了後に農業研修を経て、日本の農村で地域活動をしたいと思い、めぐり会ったのは筆甫地区の人々でした。
タケさん:「外部から入ってきた人たちと元々住んでいた人たちが一緒になって地域おこしをやっています。私自身、外部からの人間ですが、それを認めてもらった上で、現在の活動が出来ています。この地域の上の世代の人たちが若い世代の意見を取り入れてくれる地域性が、この地域にIターンの人たちが入ってくる理由でもあります。周りのIターンは、有機野菜の宅配や農産物加工品の製造、最近ではアート関係のひとなんかも入ってきています。」
−タイの農村で学びが今に繋がっているんですね、現在の仕事のやりがいはありますか。
タケさん:「ここは宮城の中でも日本の中山間地が抱える課題をすべて持っているような場所です。地域の高齢化も進み、たくさんの課題があるので、地域づくり活動に関しては、やるべきものがたくさんあると思っています。地域づくりをみんなで行っていくことで、住民が自分たちの地域は自分たちでつくるという意志を皆が持てるよう仕掛けていくことを目指しています。
そして日本の中山間地に光を当て続け、古くて新しい価値がそこにあることを広く発信していくことを続けていきたいと思っています。活動をしていくには一人ではできません。周りの人たちと一緒にやっていくこと、また次を担う若い人を巻き込んで活動をすることが大切だと思っています。現在はスポーツサークルなどから若い世代の交流をはじめています。」
−このインターンシッププログラムをご自身の体験と重ね合わせて、どう感じますか。
タケさん:「一般的に人を育てるプログラムというものは、金銭と労力をかけたわりにはその効果は目に見えづらいものが多いと思います。このプログラムにおいてもインターンがその後どのような人生を歩むか、NGOにとってこの人材育成の効果がどれほどあるのかは、かなり未知数な部分が多いと思います。
ただし、このタイの農村(NGO)にみっちり1年間身を置くというプログラムは、講義や本など他人から聞いたことではなく、自分の考えを持ち行動する人を育てるにはかなりの効果を発揮するプログラムだと思います。
これからの時代・社会を切り開くのは、誰かから聞いたこと、本で読んだことを実践する者ではなく、自分の信じることを進める勇気を持つ人だと思います。インターンシッププログラムは、そのような者を育てることができるのではないでしょうか。
今求められているのは人材です。どのような突然変異が生まれるか未知数ですが、未知数だからこそ、このような人材育成の場を提供していく必要、価値があるのだと思います。」
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宮城の地域から、タイの農村で学んだことを実践しているタケさん。インターン生活はわずか一年間ですが、その後の人生においては影響力を持つ一年間でもあります。
「自分の信じること」を見つけたタケさんの姿はとても「かっこいい」と思いました。
今後も、インターン修了生の報告をしていきます。お楽しみに!!