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2015年2月 3日 【 その他・未分類

「イスラエルは、地下水だけでなく、雨水さえもユダヤ人のものだと主張するのです」

パレスチナ現地代表 今野 泰三
2015年2月 9日 更新

みなさん、こんにちは。

私は昨年12月末に、ヨルダン川西岸地区の中でも、隣国ヨルダンとの境界地帯に位置するヨルダン渓谷に、日本からのゲストを数名お連れして訪問しました。ヨルダン渓谷は、農業に適した肥沃な土地で、パレスチナ人にとって生活の糧として重要な意味を持ちますが、その大部分はイスラエルの違法入植地に奪われ、イスラエル軍によるパレスチナ人の家屋破壊や強制的な追い出しも頻繁に起こっています。

また、入植者とパレスチナ人の間での水の分配も極めて不平等で、西岸地区の中でもパレスチナ人に対するイスラエルの人権侵害が特に著しい地域の一つです。(詳細は、現地便り最後の表をご覧ください。)

ヨルダン川西岸地区の地図(東側の白い部分がヨルダン渓谷)ヨルダン川西岸地区の地図(東側の白い部分がヨルダン渓谷)

今回私たちがヨルダン渓谷を訪問した際にも、イスラエル軍が、パレスチナ自治政府とヨルダン渓谷の住民らが作った農業用貯水池を破壊している場面に出くわしました。イスラエル軍は、「自分たちの許可を取らないで建設された違法な貯水池」といういつもの理由で破壊しました。

しかし、破壊された側のパレスチナ人農民は、私にこう言いました。

「イスラエルは、私たちに井戸を掘ることを禁じています。イスラエルの違法な入植地のために、彼らは多くの井戸を掘り、そこから24時間体制で水を取っています。そのために、私たちが昔から使っていた井戸は枯れ、塩水が入ってきて使えなくなってしまったのです。だから雨季に雨水を溜めるために貯水池を作ったのに、イスラエルはそれさえも破壊しました。
私がイスラエル軍将校に文句を言ったら、『地下水だけでなく雨水も、ユダヤ人のものである。だから勝手に貯水池を作るのは許されない』と言われました。水なしで、私たちにどうやって生きろと言うんですか。あまりにひどいじゃないですか」

貯水池を破壊する、イスラエル軍の軍用ブルドーザー。ヨルダン渓谷中部にて。2014年12月23日。今野撮影貯水池を破壊する、イスラエル軍の軍用ブルドーザー。
ヨルダン渓谷中部にて。
2014年12月23日。今野撮影
家屋破壊などに使用されるイスラエル軍の米国製軍用ブルドーザー。ヨルダン渓谷中部にて。2014年12月23日。今野撮影家屋破壊などに使用されるイスラエル軍の米国製軍用ブルドーザー。ヨルダン渓谷中部にて。
2014年12月23日。今野撮影
貯水池の破壊現場を警備するイスラエル軍兵士たち。2014年12月23日。今野撮影貯水池の破壊現場を警備する
イスラエル軍兵士たち。
2014年12月23日。今野撮影
生活の基盤である貯水池を破壊されても、ただ傍観するしかない地元住民たち。2014年12月23日。今野撮影生活の基盤である貯水池を破壊されても、ただ傍観するしかない地元住民たち。
2014年12月23日。今野撮影
破壊された貯水池は、雨季に増水する川の水を溜めて農業利用するために建設されたものだった。2014年12月23日。今野撮影破壊された貯水池は、雨季に増水する川の水を溜めて農業利用するために建設されたものだった。
2014年12月23日。今野撮影
イスラエルが違法入植地のために大量の水を吸い上げているため、パレスチナ人が伝統的に利用していた水路はことごとく枯れ果てている。2014年12月23日。今野撮影イスラエルが違法入植地のために大量の水を吸い上げているため、パレスチナ人が伝統的に利用していた水路はことごとく
枯れ果てている。
2014年12月23日。今野撮影

「貯水池を破壊する、イスラエル軍の米国製軍用ブルドーザー。ヨルダン渓谷中部にて。2014年12月23日。今野撮影」

「貯水池の破壊現場で警備するイスラエル軍兵士と、傍観するしかないパレスチナの地元住民。ヨルダン渓谷中部にて。2014年12月23日、今野撮影」

こうしたイスラエルによる一方的な政策は、パレスチナ人の基本的人権と尊厳を奪うだけでなく、多くのケースで国際人道法・人権法にも違反します。しかしこれらの政策は、「イスラエルの安全保障」のためとして正当化されています。

国際社会(特に欧米諸国や日本政府)はイスラエルの「安全保障」を、パレスチナとイスラエルの間での和平交渉の大前提としていますが、それがパレスチナの地元住民にとって一体どういう意味を持つのか、地元の声を拾い上げながら、もう一度しっかり考え直す必要があると思います。

■ヨルダン渓谷の概観(OCHA2011年報告)

西岸地区全体のうちヨルダン渓谷が占める割合 30%
イスラエルが完全支配し、パレスチナ人による開発・住宅建設などが禁止された地区(C地区)の割合 渓谷全体の87%
イスラエルの違法入植地数 37ヶ所
イスラエルの違法入植地が占める割合 渓谷全体の15%
イスラエル人入植者数 9,500人
パレスチナ暫定自治区の割合 渓谷全体の13%
パレスチナ人が実際に住宅建設・農業を行える地域の割合 渓谷全体の6%

■ヨルダン渓谷のパレスチナ人住民の状況
(OCHA2011年報告、ICHAD2011年報告)

第三次中東戦争(1967年)以前の住民数 32万人
2011年現在の住民数 5万6千人
村落数 29ヶ所
失業率 21%
食糧支援を必要する住民の割合 53%
2009-11年に破壊された住宅・貯水池等 531戸
2009-11年に域内避難民となった住民数 733人以上

■不平等な水の分配(IHCAD2011年報告)

イスラエルが建設・利用する井戸数 28ヶ所
入植者が使用できる水量(1人当たり) 487リットル/日
パレスチナ人住民が使用できる水量(1人当たり) 60リットル/日
人間が生きるうえで必要な最低水量(1人当たり、WHO) 100リットル/日

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