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2015年1月16日 【 その他・未分類

パレスチナ/イスラエルの人道状況と政治情勢-2014年度まとめ-

JVCパレスチナ事業
2015年1月26日 更新

新年あけましておめでとうございます。昨年は、JVCパレスチナ事業をご支援いただき、どうもありがとうございました。

昨年は、ガザ戦争をはじめ、パレスチナ/イスラエルは大きな事件が数多く起こりました。JVCパレスチナ事業では最近、昨年の主要な出来事と現地の人道状況をまとめましたので、ご覧いただければ幸いです。

ガザ戦争と復興支援

14年度の最大の出来事は、7月7日から8月26日までの50日間にわたる「ガザ戦争」(ガザ大規模侵攻、ガザ虐殺と呼ばれる場合もあります)でした。
パレスチナ・ガザ側で、死者2,205人(うち民間人1,483人)、負傷者11,099人、イスラエル側で死者71人(民間人4人:うち1人は外国人)の被害がありました。JVCは、この戦争に関する声明を公表し、要請文を各国関係者に提出しました。

ガザ戦争の被害(国連人道問題調整事務所14年9月発表)

対象被害状況その他
死者(市民)2,205人(1,483人)
負傷者11,100人
家屋破壊18,000戸
医療施設の破壊全壊23、半壊62、救急車47台
教育施設の破壊全壊26校、半壊122校
食糧支援を必要とする住民数130万人
爆撃を受けて全壊したガザ地区、アル・ワファー病院。9月14日、金子撮影爆撃を受けて全壊したガザ地区、アル・ワファー病院。9月14日、金子撮影
町の中に残されたイスラエル軍の不発弾。9月9日、金子撮影町の中に残されたイスラエル軍の不発弾。9月9日、金子撮影
ガザ市内の避難所で、子どもの心理ケアを行うガザ事業スタッフ。9月14日、金子撮影ガザ市内の避難所で、子どもの心理ケアを行うガザ事業スタッフ。9月14日、金子撮影

イスラエルとハマースの間で停戦合意が結ばれ、戦争状態は一旦終息しました。にもかかわらず、停戦合意で約束されたガザとイスラエル間の通行所開放はその後も実施されず、停戦が保証されてから1か月間その他の議題(ガザの空港・港建設、パレスチナ囚人釈放等)に関し両当事者間の間接交渉を継続するという合意事項についても、新たな合意はなされないまま、現在も、通行所の封鎖と物資の搬入・搬出制限が続いています。

こうした封鎖と戦争中の工場・商店の被害により、ガザ域内での失業率は45パーセントを超え、一日12時間以上の停電が日々続いています。また、封鎖以降の度重なる攻撃への疲労と絶望が人々の間で広がっています。雨季でもある冬を迎えてガザ内では凍死者も複数出ており、現地は一層悲惨な状況になっており、引き続きの人道支援が必要となっています。

JVCパレスチナ事業は、こうした状況の中、アルド・エル・インサーン(AEI)と緊急人道支援チーム(EHST)を通じ、避難民に医薬品・生活物資・飲料水・衛生キットなどを配布するとともに、避難所内の診療所運営、栄養失調児の治療、心理ケアの活動などを支援してきました。

避難所の診療所での活動を視察するJVC金子。11月17日、今野撮影避難所の診療所での活動を視察するJVC金子。11月17日、今野撮影
JVCとAEIは、戦争直後から緊急支援物資を避難民に届けました。AEI撮影JVCとAEIは、戦争直後から緊急支援物資を避難民に届けました。AEI撮影

他方、ガザ戦争直後の10月12日、カイロで支援者会議が開催され、70以上の国・地域や国際機関が参加しました。パレスチナ自治政府は、ガザ復興に40億ドル、2017年までのパレスチナ自治政府予算に45億ドルの支援を求めていましたが、今回の会議参加国が表明した拠出金の総額は 56億ドルに留まりました。また、56億ドルには戦争前から約束されていた支援金も含まれており、実際のガザ復興のための拠出金総額は24〜27億ドルにすぎないばかりか、そのうちどれだけが新規の援助かも分からないという批判も上がっています(参考:ニューズウィーク・ジャパン、2014年10月28日号)。

そのため、カイロ会議前に西岸地区の支援としてすでに約束されていた援助の一部がガザ復興支援に流用されることになり、西岸地区で実施中もしくは実施予定のプロジェクトの一部が停止されるという二次被害も報告されています。

日本政府も、ガザ緊急支援に780万ドルを拠出し、カイロ会議では2000万ドルの追加支援を約束しました。しかし、そこにも既に決定されていた支援金が一部含まれると言われています。

また、戦争直後(8月29日付)の岸田外務大臣は談話で、

  1. 持続的な停戦は過去の諸合意を基礎として行うべき
  2. 関係当事者はその具体的な方法につき前提条件なく話し合うべき
  3. 停戦は中東和平交渉の再開と中東全体の安定化に資するものであるべき
  4. 国際社会は停戦定着後のガザの安定化のための支援を行うべき

との考えを述べ、ガザ戦争の原因となった封鎖・暗殺・入植地建設などの国際人道法・人権法上の問題や、紛争当事者の戦争犯罪が裁かれてこなかったという問題には一切触れず、米国・イスラエルの要求を繰り返す形となりました(参考:外務省ウェブサイト)。

爆撃された家屋内に残されていたミサイルの破片。イスラエル軍によって、あらゆる種類の砲弾・ミサイルが使われたと報告されています。11月17日、今野撮影爆撃された家屋内に残されていたミサイルの破片。イスラエル軍によって、あらゆる種類の砲弾・ミサイルが使われたと報告されています。11月17日、今野撮影

他方、復興支援の実施に関しては、イスラエル政府、国連、パレスチナ統一政府が、14年9月、ガザへの物資搬入を監視する仕組みについて暫定合意しました。しかし、JVCが署名した共同声明「ガザ復興支援で守るべき原則」で述べられているように、この仕組みが家屋・インフラの復旧を早める可能性は低く、貧困と紛争の原因である封鎖と人権の否定といった問題に対処するようにも作られていないといった問題が残っています。封鎖の完全な解除を伴わない復興支援は、ガザの人々を閉じ込めた刑務所を再建するようなものであり、ガザと西岸を領土とするパレスチナ国家の実現もさらに遠のくと、共同声明では批判しました。

西岸地区・東エルサレムの状況

ヨルダン川西岸地区では、ガザ戦争前の6月12日から約1ヶ月間、イスラエル軍は、行方不明になった入植者3人の救出作戦という名目で西岸全土に地上軍を派遣し、500人以上のパレスチナ人を拉致・拘束し、多くのNGO・慈善団体・一般住居の捜査・破壊を行いました(詳細は、6月19日付の現地便り「イスラエル軍が西岸地区で大規模侵攻を開始」をご覧ください)。

イスラエル政府は、入植者がハマースのメンバーによって拉致されたと当初から断定しましたが、イスラエルのメディアでは、今回の軍事行動の真の目的はファタハやハマースなど主要各派が6月に合意し、パレスチナ自治政府の統一内閣を成立させたことに対する報復・妨害であると報じられました。この軍事行動が、7月からのガザ戦争を誘発する契機となりました。

西岸・東エルサレムでは、2014年を通じ、49人のパレスチナ人がイスラエル軍・警察によって殺害され、5,000人以上が負傷しました。また、6月の地上侵攻開始からガザ戦争を経て、現在まで、東西エルサレムでのパレスチナ人とイスラエル人の確執・敵対心は強まり続けており、パレスチナ人単独犯によるシナゴーグ襲撃事件やトラム駅でのひき逃げ事件が発生する一方、イスラエル・ユダヤ人社会では反アラブ感情が一層強まり、極右ユダヤ人によるパレスチナ人の拉致、殺害、暴行といった事件や、ヘブライ語・アラビア語の両言語で教育を行う学校を焼き討ちする事件が発生しました。

以下の表は、14年を通じた西岸・東エルサレムの人道状況の概観です。

西岸・東エルサレムの人道状況
(2014年総計、国連人道問題調整事務所)

対象被害状況その他
死者(イスラエル軍によるパレスチナ人殺害数)49人
負傷者(イスラエル軍によるパレスチナ人負傷数)5,865人
死者(イスラエル人)5人
負傷者(イスラエル人)129人
家屋破壊数(イスラエル軍・自治体による破壊)552戸
イスラエル人入植者による暴力事件329件
域内避難民となったパレスチナ人1,170人
食糧支援を必要とするパレスチナ人60万人

イスラエルの動向

前述したとおり、イスラエル国内では、ユダヤ系市民の間で反アラブ感情が一層高まる一方、パレスチナ人市民のデモ・暴動も一部で発生しました。ガザからのロケット攻撃によってイスラエル側で殺された民間人のうち、1人はガザ周辺のキブツで低賃金労働に従事していたタイ人、もう1人は政府がシェルターさえ提供していないネゲヴ砂漠の「非承認村」に暮らすベドウィンであることから、ガザ戦争は、イスラエルの社会・政治問題の一端を垣間見る機会ともなりました。

他方、ユダヤ系市民の間では、世俗派と宗教派の対立、ヨーロッパ系アシュケナジームと中東・アフリカ系ミズラヒームとロシア系新移民の対立、都市部・農村部・開発都市の間での資源争い、パレスチナ人の移送と占領地併合を求める右派と二国家解決案の実現を求める左派の間での対立が一層深まり、第一党の世俗右派リクード、ロシア系新移民を支持母体とする「イスラエル我らの家」党、ミズラヒームを支持母体とする宗教政党シャス、宗教右派入植者を支持母体とする「ユダヤの家」党、都市部の世俗的な中産階級を支持母体として宗教政党を敵視する「未来ある党」、和平実現を掲げるハ・トゥヌア党や労働党、世俗民主国家を目指すアラブ系政党などが、それぞれの影響力拡大を目指して熾烈な政治ゲームを繰り広げました。

リクードを第一党とし、宗教政党と世俗中道・右派政党で構成された連立政権は、中道・右派政党が2011年に国会に提出した、イスラエルを「ユダヤ民族の国民国家」と定義し、差別的体制を法制化する基本法(憲法に相当)を巡る対立、それまで兵役を免除されていた超正統派の学生の徴兵を強制する法律を巡る対立、さらにガザ戦争の戦費をまかなうための税率上昇を巡る対立などが深まり、14年12月ネタニヤフ首相は、連立政権に参加していた中道のハ・トゥヌア党と「未来ある」党の両党首を内閣から罷免しました。同時に、ネタニヤフ首相は内閣の解散を宣言し、国会選挙の前倒し実施を決定しました。15年3月に総選挙が実施される予定です。

最近の世論調査では、ハ・トゥヌア党と労働党の連合リストが第1位、リクードが第2位、極右宗教政党「ユダヤの家」党が第3位となっていますが、いずれの政党の予想議席獲得数も国会の総議席数(120議席)の3分1にも満たないため、選挙後も連立政権組閣の段階で波乱が起こることが予想されます(参考:Ynet News"New polls put center-left bloc ahead of Netanyahu's Likud"2015年1月15日付)。

パレスチナ自治政府の動向

「西岸地区・東エルサレムの状況」でも触れましたが、6月、ファタハとハマースなど主要各派が一同に介し、両党のメンバーを含まない統一内閣の樹立で合意し、米国政府を含め国際社会も統一内閣を概ね受け入れる声明を発表しました。イスラエル政府は猛反発し、ガザ戦争の勃発を受けて一度頓挫したものの、戦後に改めて統一内閣が成立しました。一部閣僚については、エジプトを通る等の手段で、ガザと西岸の行き来ができていると報じられています(参考:Maan News"Unity delegation heads to Cairo after successful Gaza visit" 2014年10月9日付 )。

こうした動きは、パレスチナの分裂問題において大きな進捗である一方、統一内閣内でのファタハとハマースの権力争い、自治政府職員の給料未払い問題、治安部隊の扱いや通行所管理の権限を巡る対立が続き、一般市民の間でも悲観的な声が聞かれています。ハマースからは国際社会の支援をファタハが不当に西岸のために使っている、といった非難の声も出ています。統一に反対する勢力もあり、ガザでは戦後に爆弾事件も起きています。

国際社会におけるパレスチナの地位向上の試み

12月、パレスチナ自治政府は国連安全保障理事会にてフランス等のバックアップを受け、2017年までにパレスチナを国家として独立させるという主旨の決議案を提出しました。しかし、この試みに対して米国が拒否権を発動しました。

その直後の1月1日、自治政府は、今度は国際刑事裁判所(ICC)への加入宣言を提出し、受理されました。同7日、バンキムン国連事務総長は、4月1日からパレスチナが正式にICCの締結国となる旨を承認しました。ICCの管轄権は14年6月13日にさかのぼって登録されており、これにより14年夏のガザ戦争について、ICCの検察官が調査を行えることになります(参考:アムネスティー日本「イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ自治政府:パレスチナのICC加盟への報復はやめよ」2015年1月14日付)。

加えて、安倍晋三首相がイスラエル国旗の前で、アラブ世界で戦争犯罪者と糾弾されるネタニヤフ首相と笑顔で握手した数日前、ICCはイスラエルのガザ地区で行った戦争犯罪について予備調査を開始することを決定しました(参考:Jerusalem Post"ICC opens inquiry into possible war crimes committed by Israel, Palestinians"2015年1月16日付毎日新聞「ネタニヤフ氏「日本もテロに巻き込まれる恐れ」」2015年1月19日付)。

一方、イスラエル政府はICC加盟の動きに反発し、自治政府に懲罰を与えるとともに、捜査に協力しない方向を示しています。イスラエルはICCの締結国ではありませんが、「1.締約国(A国)において犯罪が実行された場合→被疑者の国籍国が締約国か否かにかかわらず、 ICCは管轄権を有する」とのことで、パレスチナが締結国であれば、被疑者がイスラエル人であってもICCは管轄権を有するということになります。
この条件の場合、国連安保理の委託なしでも訴追可能です(ICCの背景や規定については、外務省ウェブサイトをご覧ください)。JVCでも、日本国内のNGO・市民団体とともに、12月16日、「ガザ紛争における戦争犯罪を裁くために、日本政府のイニシアチブを求める要請書」を外務省に提出しました。

ガザでは、完全に破壊されなかった家屋の多くも、セメントや修繕費の不足などにより、住めない状態のまま放置されています。11月17日、今野撮影。ガザでは、完全に破壊されなかった家屋の多くも、セメントや修繕費の不足などにより、住めない状態のまま放置されています。11月17日、今野撮影。

これまで、国連安保理では、米国政府の拒否権によって紛争当事者の国際法違反を非難する決議案がことごとく否決されてきた経緯があります。そのため、安保理を通さない集団殺害犯罪・戦争犯罪・「人道に対する犯罪」の調査と訴追が可能となれば、パレスチナ問題の解決にとっての大きな前進となる可能性があります。日本の外務省も、「国際社会における最も深刻な罪の不処罰を許さないという我が国の決意を国際社会に対して明確に表明」(参考:外務省ウェブサイト)することになると、日本のICC加盟の意義を強調しており、また安倍首相も1月のエジプト訪問時、「日本は、自由と民主主義、人権と法の支配を重んじる国をつくり、ひたすら平和国家としての道を歩み、今日にいたります」と述べていることから、こうした意思が中東和平問題でも表明されていくことが期待されます(参考:外務省ウェブサイト)。

以上が、昨年のまとめとなります。いまだガザの状況が改善する兆しがなく、西岸地区の占領も続く中ではありますが、本年も引き続き、JVCパレスチナ事業スタッフ一同、皆さまの思いと平和への願いを現地に届けられるよう尽力しますので、引き続きご支援いただければ幸いです。どうぞ宜しくお願い致します。

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