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ガザ:オヤジたちの「調理実習」

パレスチナ現地代表 福田 直美
2010年12月10日 更新

「うちのニワトリが卵を生まなくなった!」と各参加家族で騒動が始まったのは一ヶ月以上前のこと。それまでも卵の生産には家族によってばらつきがあったのですが、生まなくなった理由を聞けば「鶏用のエサを買うことができないのでヤギ用のものを与えたら、卵を生まなくなった」とか、「実は、エサの量を減らした・・・」とかとか。ああ、なんてかわいそうなニワトリたち・・・と思いながらも、彼らの支出を抑えながらもなんとか生産性を上げられないかと、獣医さんに相談しながら考えていました。

そこで思いついたのが、ガザの北部、ベイト・ハヌーンで有機農業を営むアブデルムネムさん。彼の農場を訪問したのは今年の夏のこと。「ガザには水がないとか、土地がないとか言われているけれども、あるもので安全でおいしい野菜を作ることは可能」という彼は、3〜4年かけて破壊された農地の土を改善し、また農業に有益な昆虫を呼び込むためのハーブを植えたり、野菜を植える場所や並び順を工夫したり、また農場内で堆肥も作りながら、有機栽培の野菜を生産しています。アブデルムネムさん曰く、「一般に売られているニワトリのエサには化学飼料も含まれている。一時的に生産は上がるかもしれないけれども、自然のものを使えば、ニワトリも健康になって長期的に生産が望める」とのこと。そこで、コーディネーターのファリッドさんに打診です。彼は最初、「エサを『作る』の?」と驚きながらも、「そういえば参加者は、ニワトリに麦のくずをやったりパンの残りをやったり、バラバラだけれども色々なものを与えている。個々人でエサを買うよりも、いい配合を習う方がよいかもしれない」と賛同し、アブデルムネムさんを招いてエサ作りのワークショップを行うことになりました。

アブデルムネムさんの有機農場。夏に訪れた時は、立派なカボチャができていたアブデルムネムさんの有機農場。夏に訪れた時は、立派なカボチャができていた

今回のワークショップで作るエサの材料は、
・とうもろこし(乾燥して砕かれたもの):60%
・大麦:20%)
・フスマ(小麦の生産後に残る種皮):20%
・塩:少量

まずは、アブデルムネムさんがそれぞれの材料の栄養価の説明をしました。どの材料もカルシウムやビタミンなどのミネラルが豊富です。加えて、イラクサというこちらでよく見る草を混ぜてもよいこと、また、卵の殻を砕いてあげてもカルシウムの摂取によいこと、ニワトリは自ら足りない栄養素を探し出して食べる特性を持っているので、昼間は雑草なども食べられるようにできるだけ外に放してあげることなどなど。普段、お母さんたちの子どもの栄養に関する教育はよく聞いている私たちですが、オヤジたちが(ニワトリ用とはいえ)栄養に関する「講習」を受けているのを見るのは初めてです。

試しに、参加した男性に「最初に配られたエサには何が入っていたか知っている?」と聞くと、「知らない!」と答えが返ってきました。ある男性は「卵の殻を砕いてニワトリに与えると、カルシウムの摂取によい」ということを知って実践していましたが、知らなかった参加者がほとんどのようです。

アブデルムネムさん(手前)による「ニワトリのための栄養」についての講習アブデルムネムさん(手前)による「ニワトリのための栄養」についての講習

さて、その後皆でペットボトルで作った「カップ」やバケツを使い、どうやって材料をバランスよく混ぜるか実践しながら学びます。「計量なんてしたことないぞ」的なコメントを耳にしながら、オヤジたちが「トウモロコシがこのカップ3杯に対して、ええと、こっちの大麦が1杯で・・・」「忘れるな、最後に塩を一振り!」なんて作業をしているのを見ているとまさに、女性たちの調理実習を見ているようで、なんとなく微笑ましい光景です。アブデルムネムさんはエサのやり方についても助言を行います。エサの摂取量はニワトリ1羽あたり、一日多くて100g。10羽いれば一日多くても1kgです。朝と晩に500gずつ、バランスよくやるようにとのアドバイス。ちゃんと皆、実践できるでしょうか。

ワークショップの後、オヤジたちが集まり、このワークショップの目的を再度共有しました。
それは、
(1)費用を見る:市場から個々人でエサを買うよりも、皆で材料を買って調合した方が安いか?
(2)効果を見る:市場から買うエサよりも生産性が上がるか?

(1)については、最初に購入したエサは50kgで90シェケル(約2,250円)、今回作ったエサは74シェケル(約1,850円)と、わずかですが今回作った方が安価です。材料の調達に奔走したファリッドさん曰く、「ロシアの飢饉以来、麦などすべての穀物の価格が倍に上がったんだよ」とのこと。そのおかげですべての材料の値段が高騰しているそうですが、そうであればこの後材料費が下がる可能性もあります(ないかもしれませんが・・・)。(2)について、今後しっかり見ていこうと皆で確認して、引き続き記録をつけてもらうことにしました。1ヶ月、2ヶ月後、効果が見られるのを楽しみにしながらオヤジたちを応援したいと思います。

配分を間違えないように・・・参加者全員が、最後は粉まみれで真っ白になりました配分を間違えないように・・・参加者全員が、最後は粉まみれで真っ白になりました

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