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【番外編】 土地を守る人々、日本とパレスチナの間で

パレスチナ現地代表 福田 直美
2010年5月14日 更新

4月下旬、千葉県成田市にある三里塚の農民の方々とお会いし、パレスチナの状況についてお話させていただく機会がありました。関係者の方々がパレスチナを訪れたのは2月のこと。分離壁や検問所、分断された農地などを見て、「三里塚ととっても似ている。ぜひパレスチナを紹介してほしい」との紹介で、帰国時に三里塚を訪れました。

東峰に向かう道は高いフェンスで囲まれ、上には滑走路への迂回路が走る。東峰に向かう道は高いフェンスで囲まれ、上には滑走路への迂回路が走る。

お昼過ぎ、成田空港第二ターミナルから出るバス停に集合。「東峰」行きのバスに乗ったのは、私たち関係者だけでした。バスが行くルートは、空港の中なのか外なのか、どこをどう通っているのか乗っていてもよくわかりません。途中、高いフェンスや、高架になっている道路の下を通っていく様子が、パレスチナを思い起こさせ不思議な気分になります。

「東峰」でバスを降り、まずはこの地域の歴史についての説明を受け、その後歩きながら農地やその他の施設を見学させていただきました。

成田空港は1978年に開港しました。成田空港の建設が決定し、土地収用に対しての反対運動が始まったのは60年代。戦後間もなく御陵牧場や山林原野を鍬一本で開墾し、農地に変えていったこの地では農業を営んでいた家族も多くいました。しかし政府は、ここに新国際空港を建設するとして、農地を強制収用し農家を追い出そうとしたのです。71年から土地の収用が行われ始めた際には、反対運動と機動隊の間で衝突も発生しました。農地が没収され、木々が切られ、農民の家屋も破壊されました。合意をとるどころか、説明すら十分にされなかったといいます。

現在まで、土地をめぐっての戦いは続いています。東峰集落は空港が計画している滑走路の延長に存在しており、2000年以降も、防風林や神社の木々の伐採などが行われています。「この道が以前はこのフェンスの先まで続いていて…」と、すぐ3メートル先でその道路はフェンスで遮断されていました。しばらく歩いて逆側に行くと、「さっきの道路はこっちまで続いていたんだ」と、その遮られた向こう側の道路の「続き」が見えます。こんな風景もパレスチナを彷彿とさせます。

農地を見学する間も、すぐ横を大きなジェット機が滑走路へ向かっていくのが見えました。常に強風と轟音の中にあり、歩きながら話すのもままなりません。ここで農業を営んだり住んだりするのはどれほど大変か想像もつきません。

農地の向こうを行くジェット機が絶え間なく見える。農地の向こうを行くジェット機が絶え間なく見える。

この地で有機農業の取り組みが始まったのは70年代初め。それは、「国策である国際空港建設を阻止するために政府と真っ向から闘っているとき、足元で政府が進める農薬や化学肥料に頼る農業をやっているのでは筋が通らない」と、権力と闘うために始まったといいます。有機野菜の宅配「ワンパック」は、三里塚闘争を支援する市民と提携する農家の協同組織として始まり、拠点方式ではなく1パックでの宅配を行っています。現在、東峰集落には5戸の農家と1軒の漬物工場がありますが、もともといた農家の人たちは減ってきているそうです。

農薬や化学肥料は一切使わず、堆肥場で牛糞やおがくずなどから作った肥料を使います。その堆肥を少し足でひっくり返すと、大きなみみずがにょろにょろとたくさん出てきました。この堆肥がどんなに安全で良いものか、これだけでわかります。また、養鶏場ではこちらも有機肥料のみで育った健康で元気一杯な鶏たちが駆け回り、おいしそうな卵を産んでいました。「卵アレルギーを持っていたけれども、ここの卵だけは大丈夫という子もいるんですよ」と生産者の方は誇らしげにいいます。採れた卵は、ひとつひとつ、人の手によって布で丁寧に磨かれていました。餌から出荷まで、人々の手間と思いがこもっていることがわかります。

三里塚の土は、とってもふかふかしていて歩くのもとても気持ちが良い土です。パレスチナには歩くだけでこんなに豊かな土壌と感じられるような土地はありません。「ここに何も植えていないなんてもったいないね」と言いながら畑の間の何も植えられていない土の上を歩きます。緑が生い茂りみずみずしい匂いのする柔らかい土の感触が、私にはとても新鮮でした。

ふかふかの土に緑が繁る。中央に見えるのが堆肥場。ふかふかの土に緑が繁る。中央に見えるのが堆肥場。

ここで農業を営む方は、農地を見せてくれながら「土が基本」と繰り返しました。土を作るのは、とても時間がかかる作業ということも説明してくれました。ここで生産される野菜は、何十年も人々が大切に育ててきた土だからこそ、おいしいのです。それは土地の質だけでなく、人々の野菜作りに対する思いも表しています。ずっと丁寧に、土地とともに、土地を守って、土を守り育ててきた人々が、この地から離れるなんてことはできないというのはもっともだと、この土を踏んで実感しました。そして、それはまさにパレスチナと同じなのです。

パレスチナでは、樹齢何百年ものオリーブの木がある日突然やってきた入植者に切り倒されることも珍しくありません。オリーブの木は、パレスチナの人々にとって生活の糧であるとともに、この地に生きてきた証でもあります。パレスチナ人の友人の母親は言います。「私が小さい頃は、あの山裾の井戸まで毎日水を汲みに行っていたの。でも入植地に水源ごととられてしまったわ。向こうの平地では、羊や山羊を放し飼いにしていたわ。だけどそこにはもう行くこともできない。こうやって、家の窓から見える風景が日々変わっていく。仮に『代わりにこの土地を提供します』と代償を与えられたって、動かないわ。ここに居続けることは、私たちの歴史と生活を守ることなの」。そう語る彼女の目は、以前のパレスチナを懐かしむ感じとともに、パレスチナへの穏やかだけれども強い思いを感じさせます。

報告会を行った「木の根ペンション」の窓から見える監視塔。報告会を行った「木の根ペンション」の窓から見える監視塔。

三里塚を訪れて、フェンスや検問所、監視塔などパレスチナを思い起こさせる光景に、日本にもこんなところがあったのかという衝撃を受けました。またその一方で、農業に対する取り組みや、土地を守り、土と生きる人の誇り高く自信にあふれた姿も、パレスチナの農民を思い出させました。かたや国家、かたや占領者という違いはありながらも、権力による一方的な土地の没収に立ち向かう人々。日本でも、パレスチナでも、彼らが守ろうとしているのは、土地であり、私たちが日々必要とする食べ物を生む土そのものであり、人々の生活であり歴史であること。そして、くらしと社会を作っていくのは私たち一人ひとりの市民の意思と声であり権力ではないということ。

この共通する気づきは、パレスチナと日本をつなぐ1つのキーワードになるかもしれません。そんなことを感じ、私が元気付けられたような気がしました。


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