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「壁」と医療サービス

パレスチナ現地代表 小林 和香子
2004年1月31日 更新

オスロ合意以降、入植地(入植拠点も含む)と入植者の数は倍増したと言われています。イスラエルの団体ピース・ナウは、西岸(東エルサレムを除く)・ガザには145の入植地と102の入植拠点があると報告しています。入植拠点のほとんどは、オスロ合意以降に出来たものです。パレスチナの内部奥深くまで進出しているこれらの入植地は、バイパス道路と言われる多くの場合入植者専用の道路で結ばれています。そして、蜘蛛の巣のように張り巡るバイパス道路は、パレスチナの村や町を包囲し、孤立させています。それに加えて、パレスチナの人々は730を超える検問所や道路閉鎖あるいは盛り土などによって、移動の制限を受けています。人や物の移動の制限はパレスチナの経済活動を破壊し、生活の糧を奪い、教育や医療サービスという生活に不可欠な社会サービスへのアクセスも困難にしています。

このような劣悪な状況に追い討ちをかけるように建設されているのが「壁」です。この「壁」は国際法的に認められた67年停戦ライン(グリーンライン)を大きくパレスチナよりに食い込むだけでなく、壁とグリーンラインに挟まれた「縫い目地域」や、壁に囲い込まれた「飛び地」をも造りだしています。その「壁」の医療サービスへの影響を調査したレポートがThe Health, Development, Information and Policy Institute (HDIP)により作成され、記者発表がありました。発表者はこのレポートを作成したHDIPの代表で、またパレスチナ全域に医療サービスを提供している医療NGO Union of Palestinian Medical Relief Committees(UPMRC)の代表でもある、ムスタファ・バルグ−ティ氏です。バルグ−ティ氏は、この「壁」の建設によりすでに75万人、40%のコミュニティーが影響を受けていると話しました。

記者会見でのバルグ−ティ氏(左)と調査担当のジュブラン氏記者会見でのバルグ−ティ氏(左)と調査担当のジュブラン氏

このレポートの主要調査結果を要約すると以下のようになります。
・壁の第一期(北部の西側)により、15,000人が「縫い目地域」に位置し、2万人が農地へのアクセスを失い、20万人の医療サービスへのアクセスが極めて困難になっています。
・これらの地域では26のプライマリー・ヘルス・ケア・クリニック(基礎保健医療病院)が「縫い目地域」あるいは「飛び地」となることにより、孤立することになります。
・これらの地域では救急治療が難しくなっています。ツルカレムージェニン間の飛び地やカルキリアの南北の飛び地には医療施設がなく、アクセスもほとんど不可能になっています。また搬送システムも検問や道路閉鎖のために機能していません。
・これらのクリニックの半分では専門医療が受けられません。特にカルキリアでは眼科、婦人科、小児科、皮膚科の治療を受けられません。糖尿病を治療できるのは1つの診療所だけです。
・予防医学サービスも限られます。特に新生児の検査や各種予防接種も極めて制限されます。
・壁により、半分以上の医師は診療所に通うのが困難になります。移動に費やす時間のため、診療時間や診療日が削減されます。地域に住む看護師などに頼らざるを得なくなります。
・壁建設の第二期(中部・南部の西側)が計画通り実行されれば、さらに45のプライマリー・ヘルス・ケア・クリニックが「縫い目地区」あるいは「飛び地」に取り残されます。そして、81の医療施設と約30万人が直接影響を受けることになります。また、第三期(東側全体)が着工されれば、その被害は急増することが予測されます。

バルグ−ティ氏はこのような結果をもとに、パレスチナの医療団体が国際社会に求める支援について語りました。
まず、「壁」の建設に反対表明してほしい。
次に、孤立してしまった病院の機能向上。病院で働く地元の医療従事者(看護師、産婆)の技術促進のための研修。専門医療サービスの移動クリニックによる補完。地域での緊急救援・応急手当研修。

印象的だったのは、バルグ−ティ氏が何度も地域の「エンパワーメント」という言葉を使ったことです。彼は、
「国際法に違反する『壁』は必ずなくなる。だからそのときまで各地域が持ちこたえることが出来るように、住民や医療従事者をエンパワーすることが大切で、その部分で特に国際社会の協力を求めている」と話されました。

今、巨大な「壁」により、地域社会が分断されたパレスチナでは、地域社会のエンパワーメントという言葉をあらゆるNGOが語ります。困難な生活の中で、隔離された地域社会がどうやって生き延びるかという問題に直面している彼らは、その答えを地域住民の教育・研修を通してのエンパワーメントに求めています。どんなに苦しい状況でも地域で協力して子供を大学や専門学校に行かせ、人材を育成することを優先課題にしているところも少なくありません。国際NGOの支援のありかたも、これらの地域社会の気持ちにいかに応えていくかであるかを強く感じさせられました。

(参考)HDIP Homepage: http://www.hdip.org


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