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未だ不安定なイラクの治安

イラク事業担当 原 文次郎
2009年11月25日 更新

イラク隣国のヨルダンからレポート
治安状況は安定に向かっていると報道されることの多いイラクですが実際のところはどうなのでしょうか。治安が安定した理由としては、07年の米軍増派やマリキ首相の治安作戦の成功がよく取り上げられます。しかし国民融和と言う点では問題はなにひとつも解決しておらず、来年1月に予定されている選挙に向けて今後党派間の抗争や治安事件が激化する可能性があります。その予兆といえる事件が8月19日や10月25日にバグダードで発生した連続爆破事件です。10月25日の事件について日本での一時帰国を終えてヨルダンのアンマンに戻ったイラク事業調整員の原からの報告が届きました。


約1ヶ月の日本帰国の後に10月24日に成田を発ち、丸1日がかりの後に翌日25日の昼前にアンマンのアパートにたどり着いた。しかし、一服する間もなく、その日の朝にバグダードで起きた2発の爆破事件による惨事を伝えるTV報道にくぎ付けとなった。

JVCの活動に関わる直接の知り合いは無事が確認されたが、以前、私も隣国のシリアで会ったことのあるドライバーのアブ・アフメドさん(仮名)はバグダード中心部の自宅に居たところがこの爆破事件により壊れたガラスの破片で足を負傷し、病院に担ぎ込まれた。幸いにも彼は翌日には病院を退院することができ、爆破当時は学校に行っていた彼の息子や、やはり外出中で自宅に居なかった彼の奥さんは無事だった。しかし、この事件で140名余りの人びとが亡くなっていることに深い悲しみを覚える。

この事件を受けて、翌日の26日にはいち早くイラクで活動するNGOのネットワーク組織NCCI(”NGO Coordination Committee for Iraq”日本名「イラクのためのNGO調整委員会」)が、加盟団体に毎週送付されるレポート上に分析とコメントを発表している。以下にそのレポートの報告をしたい。

10月25日バグダード爆破事件:暗黒の日

安定に向けての努力をようやく見出したイラクの無辜の市民たちが、147名余りの死者をもたらした昨日のバグダードでの爆破事件のような、恐ろしい攻撃に恐れおののき過ごさなくてはならないことは今日のイラクの悲しい現実である。100名余りの生命を奪い、首都の主要な官庁を標的にした8月19日の爆破事件とともに、多くの人びとがこれらの攻撃は政治的な動機付けによって行われたものと信じている。

昨日の爆破は法務省とバグダード州政府を標的とし、間接的には公共事業省を狙ったものである。イラクの現在の政治制度は政党が省庁に対して甚大な影響力を及ぼすことを許しており、今回の爆破攻撃はこれらの省庁の幹部クラスを標的にしたものと思われる。

公共事業省に対しては、イラクのシーア派政党の中で最もイラン寄りである、イラク・イスラーム最高評議会(ISCI)が、また、法務省に対しては2007年以来、シーア派のイラク統一同盟(United Iraqi Alliance)がそれぞれ顕著な影響力を及ぼしている。バグダード州政府は2009年1月以来、ヌーリ・マリキ首相のシーア派主導の法治国家連合の支配下にある。

したがって、今回の爆破攻撃がアルカイダやバアス党支持者など、イラクの政治の中で非主流派とされてきたスンニ派が、シーア派の権力の代表者に対して仕掛けた攻撃であると見ることもできる。

また、一方で、これらの攻撃は、来年1月に予定されている、潜在的にはイラク国民の統合の進捗度合いを示す上で不可欠な連邦議会選挙を遅らせ、党派性を脱した政治への希望に揺さぶりをかけることが目的であったと見ることもできる。

8月に起きた爆破攻撃のように、今回の攻撃も、治安改善の利得とマリキ首相の国家の守護者としてのイメージを突き崩そうとするものであった。マリキ首相は国家の守護者のイメージのみならず、イラクにおける最も確信的なナショナリスト(国家主義者)のイメージを作り上げていた。2010年のマリキ首相の政権下での統一イラクは、政治のいかなる領域でもバアス党支持者のようなグループの占める場所がないことを意味する。この点ではアルカイダは政治には興味が無く、単にイラク政府の失敗をもたらそうとしているだけである。他方で、アルカイダやバアス党支持者といった2つのグループにとどまらず多方面で、イラクの人びとに対して、選挙を前にしてマリキ政権はイラク市民の安全を守ることができない、ということを知らしめようとする動きがある。

今回の攻撃で使われた爆弾が非常に強力なものであったことを気に止めておくことは重要である。犯人たちがこのように強力な爆発物を入手し、使用するためにはかなり強力な共犯者を必要とした筈であるからだ。

ちょうど8月の爆破攻撃の後のように、政府の公式声明はきっぱりとアルカイダやバアス党支持者を犯人として名指ししているが、治安確保の失敗には言及を避けている。8月の爆破攻撃があった際には、ワシントン・ポスト紙がイラクのジバリ外相のコメントとして、イラク治安部隊が攻撃を共謀した可能性は排除できないという見解を報道している。昨日の攻撃も同様のケースではないかと疑う声もある。


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