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トンネルの先に灯りは見えたか?

イラク事業担当 原 文次郎
2009年7月14日 更新

JVCは2002年よりイラク支援を始め、筆者も2003年以来イラク支援に関わり、イラクの人々が戦争の惨禍から立ち直り、将来への希望を持てる様に見守って来た。しかしこの6年間はイラクの人々にとって将来の希望を持っては裏切られる日々ではなかったか。

米国主導による連合国暫定当局(CPA)からイラク暫定政権に主権が委譲されたのが今から5年前の2004年6月28日のことである。この時点で少なくとも形式的にはイラクは独立国として主権を回復したことになっているが、治安の権限は引き続きイラク駐留多国籍軍が担った。以来、イラクの人々は本当の意味での主権回復と治安の安定を願ってきたが、期待はむなしくむしろ状況は悪化する一方で、2006年には国内対立の激化で事実上の内戦と呼ばれる最悪の状況になった。

その後の治安作戦が功を奏して治安が回復したとして、そして2008年末までに取り決められた米国とイラクの間の二国間協定にもとづきこの6月30日までにイラク駐留米軍は市街地からの撤退を完了した。イラク政府のマリキ首相はこの日をイラクの本当の意味での主権回復の記念となる日だとして祝日とし、米軍の市街地からの撤退を歓迎した。
主権回復から5年間。裏切られる日々を経験してきたイラクの人々にはこの日はどう受け止められたのだろうか。トンネルの先に灯りが見えるようになっただろうか。以下は電話等で聞いた、この日の前後のバグダッド市民の声である。

Aさん「きょうのバグダッドは砂嵐で少し曇っている、2日前にひどい砂嵐で空港が閉鎖されたので、今後そのようにならなければ良いが。」

Bさん「砂嵐のおかげでのどがやられるなど体調を崩して病院に駆け込む人も多い。もう夏なので昼間は40度を超える暑さだが、砂が入ってくるので家の窓を開ける訳にはいかない。でも、相変わらず電気も十分に来ないので、家の中の扇風機も回せないし、もちろんエアコンのスイッチも入れられない。こんな状態でどれほどの暑さか想像できるかい? 夜も暗闇の中で耐え難い暑さで眠れない日々が続いている」

7月6日のバグダッド市内。砂嵐はこれでも4日前と比べればまだだいぶましな方だと言う7月6日のバグダッド市内。砂嵐はこれでも4日前と比べればまだだいぶましな方だと言う

Cさん「米軍の市街地からの撤退をバグダッド市民は歓迎している。しかし式典を身近に見ることができるわけではないし、グリーンゾーンも主要部分は従来通り厳戒体制なので、きょう(30日)をもって大きく変わったという実感はまだない。」

Dさん「既にきょう(30日)になる前に市内で見かける米軍の姿はかなり減っていた。それでも数日前まではたまに米軍の巡回パトロールが見られたが、きょうは一回だけ、それも単に通り過ぎたという感じで、巡回して行ったり来たりする様子はもう見られない。空を飛ぶヘリコプターも、以前はもううるさいほどだったが、最近はあまり見かけなくなってきた。」

Eさん「バグダッドのきょう(30日)は祝賀ムードで大きな事件も無く過ぎたが、イラク北部のキルクークでは爆破事件が発生している。バグダッドが安全と言うのも、市内のあちらこちらといたるところで警官ばかりで、そのおかげで治安が保たれている気がする。私はスンニ派だが近所に住む知人にシーア派の警官がいる。彼なども職業柄かこの3日間ほど大忙しで、家に帰った姿を見ていない。」

Fさん「市内の厳重な警戒態勢の中をきょうも外出したが、この厳戒態勢のおかげで治安が保たれている。警官も検問所ごとにイスの下にいたるまでくまなく車をチェックして爆発物や武器を持っていないかどうか調べている。しかし身分証明書のチェックはそれほど厳しくなかった。」

Gさん「電気の供給は5月にはここ数年のうちでは最高で、以前は一日数時間がやっとのところ、8時間から10時間位は来るようになって良かったと思っていたら6月に悪化した。前よりはましだが今は一日4時間程度が精一杯。電力省による公共電力の配電だけではあてにならないので、家で発電機を動かしたり、地域の民間業者にお金を払って配電を受けたり、3回線をやりくりしている。公共の電力がいつ来て、いつ切れるのかもわからないので、停電のたびに切り替えをして、てんやわんやになる。家の発電機も長時間動かしていると壊れてしまうので、休ませる必要があり、使えるのは長くても1日5−6時間が限度だ。」

Hさん「きょうからグリーンゾーンの周辺の道路通行が解禁され、アル・ラシードホテルの裏側や国際会議場までアクセスが可能になった。これに合わせるかのように交通信号もきょうから機能するようになった。これは進歩であり、先々への良い兆しだ。嬉しい。」

Iさん「バグダッド市内、カラーダ地区辺りでは中国やインド、スリランカ、バングラデシュなど、アジア系の外国人労働者や街角の行商人の姿を見るようになった。
(同じく30日に石油の国営化以来40年ぶりに外国企業の石油開発の入札があったことに触れた質問に答えて)                             「今後、石油開発等でイラクのビジネスの発展が見込まれても、それがイラク人の雇用拡大に結びつくのでなくてはならない。」「単純労働の仕事は現在バグダッドでも見かけるようなアジア系の外国人の低賃金労働者に取られてしまい、イラク人に仕事が回って来なくなるのではと心配だ。今まで給料の良かった公務員でさえ、昇給が物価の上昇に追いつかず四苦八苦しているのだから、一般の人々の暮らしぶりが悪くなるのが心配だ。」

Jさん「10代〜20代の息子たちが友人宅を訪問して夜の遅い時間帯まで市内に外出できている。でも母親は相変わらず子どもたちの安全のことが心配で、いつ無事に帰ってくるかといつもそわそわとしている。最近は心配し過ぎで血圧が上がり体調が悪い。男の自分はまだ昼間でも市内を歩き回る機会があるからどの程度安全か、そうでないかわかるが、女性はそれほど外出する機会がないから訳がわからず余計に心配することになる。仕方がないが、その一方で、確かに市内でも危ない時は危ない現実もある。」


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