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用務員の悲劇

中東 パレスチナ最新情報 中東担当 佐藤 真紀 佐藤 真紀 佐藤 真紀
2003年5月13日 更新

残念なことに戦争が始まってしまい、今まで出会った子どもたちがどうしているのだろうかと気がかりでなりませんでした。そこで、4月16日、医薬品などの救援物資とともに私たちはバグダッドの様子を見に行くことにしました。サダム政権が崩壊して一週間経ったものの、まだ戦争は続いています。夜の移動は危ないので夜中にアンマンを出発し、朝方国境を越えて日の出ているうちにバグダッドに入る予定でした。

途中では数箇所、橋が壊されていたり、道路わきには破壊されたイラク軍の戦車が置き去りにされていましたが、順調にバグダッドまでたどり着きました。バグダッドは、アメリカ軍の戦車がところどころに配備されており、何台か列を組んでパトロールをしています。まるでパレードのようです。兵士が持っているコカコーラの赤い缶がとても印象的でした。

街中の政府関係の建物は、米軍の空爆で激しく破壊され瓦礫の山のようです。しかし、加えてひどいなと思うのは略奪です。毎日のように、盗賊がお金のありそうなビルに押し入っては物を持ち出して、火をつけて逃げていきます。市内のあちこちから煙がでており、椅子や電気製品、蛍光灯やドアの取っ手にいたるまで、片っ端から持って行きます。病院からは医薬品をはじめ、医療機器なども盗まれ、本当にすっからかんです。唯一残っていたのはCTスキャンの装置で、大きな磁石が入っているのでさすがの盗賊も持っていけなかったようでした。

今まで絵を描いてくれた子どもたちに会いに、シンドバッドクラブを訪ねてみました。用務員のアリさんがクラブを守っています。
「ひどいもんだ。盗賊がすべて持っていってしまった」
床には図書館の本が散らばっています。そして16mmの子ども用の映画のフィルムも。置いてあったグランドピアノも持っていかれたようです。

アリさんの住み込んでいた部屋もあらされてしまい、たんすの中にあった洋服が散らばっていました。アリさんの子ども達はどうしているのでしょう。郊外の親戚の家に疎開しているというので連れていってもらいました。10歳のハイダル君、14歳になるハディールちゃんも元気そうです。

しばらくしてシンドバッドクラブに戻ると、そこには銃を持った人達がやってきて、掃除をしていました。
「今日からは、ここは私たちの事務所だ。出て行け」
といいます。子どもたちが描いた絵も、本も庭で彼らが燃やし始めたのです。

アリさんは、
「仕事もない。住むところもなくなった。どうすればいい?」
と落ち込んでいます。

私たちはスハッドちゃんを探すことにしました。彼女はとっても素敵な絵を描いてくれたので、私たちはその絵を使い「戦争反対」のキャンペーンポスターにしました。ポスターは14000枚をすり、デモなどで用いました。「かわいい!」と評判で、より多くの人がデモに参加しやすくなったのはスハッドちゃんのおかげです。

私はこの絵をリボンに印刷して胸につけて歩いていました。ヨルダンでも毎日のように、何人かに声をかけられ、「私にも非戦リボンをください」といわれました。でも、私はスハッドちゃんのことをあまりしりません。どこに住んでいるのかとか。お父さん、お母さんのこと…

サダム政権では外国人がイラク人一般家庭を訪問することは禁止されていたのです。そこでスハッドちゃんの写真を見せると、6歳のフセイン君が「サエッドさんところの女の子だ」と言います。サエッドさんは隣の音楽・バレエ学校の用務員でした。車で30分のところにスハッドちゃんも避難してるそうです。スハッドちゃんに会えると聞いて、ポスターを探しました。戦争が始まる前に、ホテルのロビーに貼っておいたものが残っていました。それを丁寧にはがします。

そして早速訪ねることにしました。サエッドさんの家に着くと子どもがぞろぞろ出てきます。何でも、戦争で3家族が一緒に住んでいるので15人くらいの子どもがいるそうです。その中にスハッドちゃんがいました。早速ポスターを渡すとスハッドちゃんはとってもうれしそうです。
「アメリカの人は早く、病院とか、学校をなおして欲しい。コンピューターとか楽器とか壊したものを全部なおして、そして早く出て行ってください」
正直な気持ちでしょう。

スハッドちゃん(疎開先で)スハッドちゃん(疎開先で)

「お医者さんになりたい。子どもたちが大好きだから」
その後、私たちはスハッドちゃんのいた音楽・バレエ学校に行きました。

スハッドちゃんの家は、学校の隣の粗末な小屋でした。米軍の空爆がひどくなるとスハッドちゃんを含めて3人の子どもは実家に預けられました。一番下のこどもとお父さんとお母さんが家に残りました。庭には防空壕が掘ってあり、夜の6時から朝の6時まで何度もそこで寝たそうです。爆弾の破片が飛んできて屋根には5箇所の穴があいていました。お母さんは背中を怪我しました。4月7日には、近くにいたイラク兵が「危ないからここから離れなさい」といいました。そこで一家全員が実家に避難しました。

それから5日後に戻ってくると学校はめちゃくちゃに荒らされていたあとでした。子どもたちのバレエの衣装が散らばり、ピアノは象牙の鍵盤が持っていかれています。壊されたバイオリンや、ウード(アラブの楽器)が散らばっています。それでも、いくつかのグランドピアノは無事に残っていました。イラクにこれだけグランドピアノがあるなんて、かつて豊かだったころの遺産でしょう。スハッドちゃんも貧しいながらも、学校でウードを習っていたそうです。

スハッドちゃんのお母さんは、涙ぐみます。
「持っていかれた家具なんてたいしたことはない。どうせ私たちはたいしたものなんて持ってなかったから。でも学校はどうでしょう。こんな風になっちゃって、イラクの子どもたちの将来はあるのかしら」

その後、私たちはヨルダンまで戻ってきました。ちょうどその日ザフラーニエというところで、米軍がイラク軍の兵器の廃棄中に何らかの事故が生じ、ミサイルが誘発して近隣の住宅街を直撃したというニュースがはいってきました。少なくとも15名が死亡しています。スハッドちゃんたちが避難している地区なので安否が気遣われます。


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