
調査研究担当 高橋清貴
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ODA改革ネット・東京の緊急プレスリリースを掲載します
緊急プレスリリース −ODA大綱見直しに関するNGOの意見−
2003年7月9日
ODA改革ネット・東京
私たちNGOは、昨年11月ODA大綱見直しの議論が始まって以来、「なぜ、見直すのか?」、「何を見直すのか?」、「どのようなプロセスで見直すのか?」などの問題提起を行ってきました。昨年11月にシンポジウム「ODAをどう変えるのか」を開催し、今年1月と4月には外務省との意見交換を行ってきました。その中で、多くのNGO・市民から国益重視のODA大綱見直しに異議を唱える声が上がりました。
これを受けて、5月16日にはODA改革ネットが中心になって42団体、個人68名の賛同を得て、「ODA大綱見直しに関するNGOからの共同意見書」を外務大臣当てに提出しました。この度外務省により公開されたODA大綱見直し案によると、これまで私たちが意見交換会や意見書で表明してきた意見が、ほとんど反映されていません。この状況に鑑み、私たちODA政策に関心を持つ納税者として、また市民レベルの国際協力に携わってきたNGOとしての意見を改めて以下に提言します。
- 1.「我が国の安全と繁栄」という国益重視をODAの理念・目的として明記すべきではない。
- 今般公開されたODA大綱見直し案(以下、新大綱案)では、「我が国の安全と繁栄」という言葉で国益重視がODAの理念目的として盛り込まれました。1992年に閣議決定された現在の大綱(以下、現大綱)では、基本理念として人道性、国際社会の平和と繁栄、途上国と先進国の友好関係など、国際社会への貢献を一義的目的として書かれており、優れて高い理念を感じさせるメッセージ性の高いものです。国際社会は2000年の国連ミレニアム総会で「ミレニアム開発目標」を優先し、ODAなどの資金を拠出することを決めました。日本が国際社会の中で尊敬を集め、納税者が誇りを持てるODAとするためにも、またそのメッセージ性を明確にするためにも、こうした国際合意を最優先し国益に関する言及はすべきではないと考えます。
- 2.「戦略的」基本方針の下で国益目的のODA実施は、国際社会の課題解決に結びつかない。
- 新大綱では基本方針が、5項目明記されていますが、その実施に当たっては「戦略的」に行うとされています。自助努力、人間の安全保障の視点、公平性、国際社会との協調などいずれも重要なものですが、また同時に解釈に曖昧さを残すものです。何を目的にODAを行うのか、位置づけ方によっては、これらの方針が狭い国益優先のためのツールや免罪符ともなり、2000年国連ミレニアム総会で合意された「ミレニアム開発目標」などの地球的規模の課題への取り組みが疎かになりかねないとも限りません。また、「戦略」というものが、誰が、どのように作るのか、プロセスの透明性も確保されていません。
- 3.ODAは「ミレニアム開発目標(MDGs)」や人間の安全保障などの実現に最大限の努力をすべきものである。そのためには途上国の自主性(オーナーシップ)を尊重すべきで、「我が国の経験と知見の活用」などは基本方針として適切でない。
- 国益を重視した新大綱では、貧困削減や地球的規模の問題への言及はあるものの、これらへの実効的取り組みについては不明瞭です。新大綱では、様々な基本方針や重点課題が盛り込まれていますが、そのためにODAの目的・役割が曖昧になっています。政策の一貫性と実施の一体性を図るためには、目的・目標を一元的に設定すべきで、それには国際社会が合意した目標(MDGs)や国際社会によって認知された総合的政策(人間の安全保障)を基本に置くことが適切と考えます。
- 4.テロや紛争を貧困問題と安易に結びつけるような重点課題の書きぶりは誤ったメッセージの発信となる。
- 新大綱で掲げる4つの重点課題のうち3点でいわゆる"テロ"や紛争への言及があります。この重要な国際社会の課題に対して、確かにODAの果たす役割は小さくありませんが、その原因の認識と解決への取り組み方法が一面的です。貧しくとも社会的に安定している地域もあるし、テロや紛争を起こす者には裕福な者もいます。また、多国籍企業などの民間の規範なき行動が武器の蔓延や紛争を助長することもあります。このような一面的なテロ・紛争問題のとらえ方は市民に謝ったメッセージを送ることになり、それがひいては他者、他国への無理解や脅威感を煽ることを懸念します。国際協力の第一歩は、他者、他社会、他国、他文化への理解であり、このような重点課題の置き方はODA大綱としてふさわしくありません。
- 5.大綱(特に原則部分)が恣意的に運用される危険性がある。
- 新大綱の原則部分には、「テロや大量破壊兵器の拡散を防止する」という文言が加えられ、今後ODAが平和構築やテロ対策分野での支援が増えることを前提としています。しかし、それらは政治性が強い環境で行なわれるものであり、人権侵害などの危険性が高い分野です。新大綱でも、前文において「総合的に判断の上、ODAを実施する」という表記がそのまま残り、恣意的運用についての課題が残されています。新大綱では新たに「ODA大綱の実施状況に関する報告」としてODA白書で明らかにするとしていますが、国益目的との絡みの中で安全保障や通商政策に関わる事項がどこまで書き加えられるか不明確です。結局、恣意的解釈の運用を事後報告で許す大綱には拘束力がなく、政策文書としての実効性に疑問が残ります。
- 6.人道的見地から世界の人びとが安心して暮らせる社会に向けて貢献するODAという基本理念を基本法で明文化すべきである。
- 新大綱は耳障りの良い言葉が総花的に散りばめられていますが、骨格として貫くのは国益重視です。世界には、今なお多数の人々が飢餓と貧困に苦しんでおり、いわゆる"テロ"や紛争は深刻の度を高めています。日本がODAを行うのは、これらの問題を人道的見地から看過できないからであり、平和国家としての重要な使命であるからです。公平性、中立性に配慮しつつ、現場のニーズに真摯に応えるODAを可能にするためには、拘束力を持つ法律で理念を明記し、多様なステークホルダーで開かれた議論を行い、独立した機関によって実施し、国会を中心とした透明性のある監視が必要です。そのためには、今回の大綱では不十分であり、上記要件を盛り込んだODA基本法の早期制定が必要と考えます。
ODA改革ネットワーク・東京 世話人 山中悦子
高橋清貴
-ODA改革ネットワーク(ODA-NET)- ODA改革ネットワークは、96年9月に生まれたODA改革を目指す市民・NGOのネットワークです。途上国の人々の自立に貢献するODAの実現と、市民社会の「参加と公開」によるODA政策の立案・決定・実施を目指して活動しています。
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<今後の活動予定>
- 7/18 17:30〜18:00
- 緊急記者会見(連合会議室)
- 7/18 18:30〜21:00
- シンポジウム 「ODAによる国際貢献はどうあるべきか?」(同会議室)
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