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コリア

2020年度東北アジア大学生平和交流プログラム 第3回勉強会レポート

〜「徴用工問題」とは何か〜

こんにちは。KOREAこどもキャンペーンインターンの佐藤です。 今回は9月2日に行われた、第3回勉強会について報告いたします。

「東北アジア大学生平和交流プログラム」とは

2001年より、絵とメッセージの交換で東北アジアの子どもたちを繋いできた「南北コリアと日本のともだち展」。 その発展版として2012年から行なっている「日朝大学生交流」では、平壌で日本語を学ぶ朝鮮の学生と日本の学生が交流してきました。日朝の学生たちが行動をともにしながら、まずはお互いを知り、また、ワークショップでは、同じテーマで意見交換し、お互いの考えを活発に語り合うようになりました。

この大学生交流は、2018年度より「東北アジア大学生平和交流プログラム」として再スタートを切りました。このプログラムは、「日朝」を主軸とした大学生交流に日韓も含め、大学生が重層的に交流しながら、平和な東北アジアを担う若者リーダーを育成する交流・勉強会を年間で実施しています。

例年は、プログラムに参加している学生が「日朝大学生交流」を自主的に企画し、毎年8月に朝鮮への訪問団に参加していました。 今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で平壌訪問を断念し、勉強会もオンラインでの実施となりました。しかし、オンラインのメリットもあり、関西と関東の学生が一緒に参加できるようになりました。

第3回勉強会について

今回は立教大学の石坂先生を講師にお招きし、「徴用工問題」について解説していただきました。植民地支配から戦後の争点や日韓政府間の認識の違いなどを含め、歴史的経緯をもって確認する場となりました。

学生は事前に自主ゼミを開き「徴用工問題」について基礎的なことを学び、学生が抱いた疑問を学生同士で共有しました。学生の疑問は事前に石坂先生にもお伝えしたところ、勉強会当日には、その回答も含めてお話くださいました。

「徴用工問題」について

そもそも「徴用」とは、狭義の意味では、朝鮮半島植民地時代に日本が朝鮮に対して名付けた戦時労働動員(注1)の第3段階のことをいいます。しかし募集や官斡旋も結局は現員徴用の対象になったことから、広義では労働動員の全てを指します。この労働動員は国家的に進められた強制であり、その過程も植民地支配の一環ということになります。

石坂先生が強調して仰っていたのは、「徴用工」問題は人権の問題であり国家間の体面の問題ではないということです。国際法や国家間の約束に反するという安倍政権の主張は正しいのかどうかを、歴史的経緯をもって確認しました。

(注1)戦時労働動員...
・第1段階:戦時労働動員の呼称
1965年の朴慶植(パクキョンシク)『朝鮮人強制連行の記録』で、戦時下での朝鮮半島からの動員を「朝鮮人強制連行」と命名し定着。その後、連行だけではなく動員過程総体が強制性を伴うことをふまえ「戦時労働動員」へ。
・第2段階:国家動員としての徴用工
1939年12月、閣議決定で動員を決定、実施。募集・官斡旋・徴用という3段階があるが、すべて植民地支配機関が実行、道-郡の官庁を通じ動員人数を割り当て各地方に人集めに行き警察も協力。朝鮮での凶作が農民たちを押し出すプッシュ要因にも。
・第3段階:強制労働の下での徴用工
炭鉱・鉱山など、危険で劣悪な労働現場に集中配置し、差別待遇も。

日朝関係の変遷

発端は、1965年、日韓条約の請求権協定の段階で日本は朝鮮植民地支配を認めなかったことです。さらに1982年の教科書問題でも侵略否定をしたことに対してアジア民衆からの反発が起こり、この時期から日本の反省の動きが始まりました。教科書問題に関しては、実際私も八幡製鉄所を教科書で知った時に、労働動員の話が関連付けて書かれていなかったことを思い出しました。1990年代は日本政府が個人請求権を認め、細川首相発言や村山談話、日韓共同宣言などと「お詫びと反省」という流れができました。

その後、日本の司法において韓国人原告が敗訴したとはいえ一部和解をすることができました。このようにして個人請求権をもとに和解を通じて解決する方法がありうるのだ、と石坂先生は仰っておりました。徴用工問題と聞けば、認識のすれ違いやなかなか和解に至らないというイメージがメディアからもあったので、このことは私に今後希望があると思わせ嬉しくなりました。

このように日本政府は個人請求権が維持されていることを認めていたし、裁判での和解を妨害することはなかったにもかかわらず、日本政府は「日韓条約で解決済みで一歩の譲歩もない」と2018年の韓国・大法院判決を韓国側のちゃぶ台返しの如く反応しました。これは強制労働を悲惨な状況と認定した日本の司法とも合致しないものでした。さらにマスコミ統制を徹底しました。これが私たち若者の朝鮮半島植民地支配のイメージと繋がり、正しい情報で判断することができていなかったのかと思います。

新たに目指すべきもの

石坂先生の仰っていた解決方法として、「徴用工」問題の民事としての和解、日韓両政府の合意形成、協力関係再構築、歴史教育があげられました。

グループディスカッション

石坂先生のお話の後、学生同士で考えたことや疑問に思ったことなどを話し合い、質疑応答の時間を持ちました。それぞれのグループで、資料の少なさによって困難になっている「認識の共有」や教科書問題、「民事不介入」や「和解」がキーワードとして挙がりました。また日本の政権ごとに変わる日韓関係などの疑問も出て、ひとつひとつお答えいただきました。

一番印象的だったのは、"法的義務がないと言われた時に私たちが見出せる現実的な解決方法は何か"という質問でした。石坂先生はそれが「和解」だと言います。法的に解決が困難なものが多い中で、募金をする、記念館や研究所を作り日本の人がそれに興味を持つ流れを作ることが大切なのです。

そこで、その質問をした学生は日本人同士で対話を行うことの重要性を提示しました。「和解」に向けて対等な日韓関係を作るために、両国の譲れないもの・要求・譲歩するところを私たち若者世代が考えていくべきという結論に至りました。「譲歩」という言葉についても、日本は「譲歩」ではなく当たり前の状態に戻すということからなのではないか、という気づきもありました。

その後の学生たちの感想では、徴用工問題は難しいというイメージがあったが学ぶことができてよかったという声や、他の国での事象と比較することで解決を目指したい、事実を伝えることの必要性を体感したなどの声が多く、深い学びを得ることができたと感じました。


関西のメンバーや留学中の韓国からも参加し、総勢25名となった今回の勉強会。オンラインによる開催はまだまだ課題が残りますが、遠く離れたメンバーが集えるのは、オンラインだからこそですね。)

最後に

徴用工問題に解決方法があることに改めて気づかされました。特に歴史教育に関しては、今の世代を担う一人の人間として、さらに次世代に伝えられる人間として、一人一人が積極的に学ぼうとすることをやめないことです。このようないますぐに自分が始めることのできる解決策があることは、希望の光とも言えます。

政府が関与してしまったこういった大きな問題は、自分ではどうにもできないと思いがちですが、これを見ているみなさんもぜひ自分のできることから始めてみましょう。こうして多くの人が身の回りの正しい歴史を知ることで、今後の私たちが生きる社会がだんだん居心地の良いものになると私は信じます。

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