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パレスチナ出張記【8】「ハマス」にSDカードを没収された

「国際社会にもっと介入して欲しい」

ガザでの道中は、常にタクシー運転手のリヤードさんの車で移動をしていました。

リヤードさんは私たちに、色々な話をしてくれました。

「安心して暮らしたいだけなのに、何でこんな風に暮らさないといけないのか」

「自分は自分の立場でものを言っている。人それぞれに考えはあるけれど、自分は戦争が嫌で仕方ない。1人1人が安全に暮らしたいだけだよ」

「昔は皆、一緒に生きてたんだから。正しい道に戻ることを願います」

「国際社会にもっと介入して欲しい」

最後の言葉は、リヤードさんだけでなく、出会うほとんどの人から投げかけられた言葉です。言い換えれば、「見て見ぬふりをしないで欲しい」ということでしょう。

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「ハマス」にSDカードを没収された

さて、堀さんのルポ動画だと、12:30頃から騒がしくなる話し声。

気付けば、オートバイに乗った若者たちが私たちの車を止めていました。

今回の撮影は「軍事施設の撮影はしない」など細心の注意を払って行われましたが、出張記【2】にも書いたとおり、約1か月前に、ガザ地区を実質統治するハマスの幹部が何者かに殺害されるという事件があり、その犯人がジャーナリストやエイドワーカー(NGO職員など)のふりをして入域し、犯行に及んだのではないかとの「噂」があり、外国人でカメラを持っていた私たちの車が目に止まったようです。

車を止めたのは、「ハマスの軍事部門に属する」という私服警官の3人でした。私服ということもあり、見た目は普通の若者です。

リヤードさんが、「この人達はあやしくない。ガザの状況、戦争被害を伝えるために来てくれている人たちだ」「AEI(JVCのガザのパートナー団体。現地で有名)と一緒にプログラムをやっている団体だ」などと必死に話してくれましたが、「SDカードをチェックする」と、あっという間に没収されてしまいました。

オレンジジュースのおもてなし

ハマスの私服警官のチェックに渡ったSDカード。「返ってこなかったらどうしよう・・・」と不安が襲います。

それなのに、なぜか没収した相手が、携帯電話で色々と報告をしながら、私たちに冷たいオレンジジュースを差し入れてくれました。近くの、自家発電で店を営んでいるところで買ってきてくれたようです。

「???」

こんな状況下でなぜ、ジュースが渡されるのか・・・?意味が分かりませんでしたが、「外から来た旅人をもてなす」というイスラム教の教えにのっとっていると説明されました。

初めて出会う「ハマス」の人。

何となく「怖い」というイメージを持っていましたが、目の前にいるのはどこにでもいそうな若者です。

この調子だと、これまでも私たちは「ハマス」に接していたのかもしれません。私服警官ということもあり、それ程までに、他の人と何の区別もつかないのです。

SDカードのゆくえ

どうしたものか・・・と思いながらもなす術もなく、アラビア語の喋れるスタッフがリヤードさんと私服警官のやりとりに耳をすませていたところ、突然、SDカードが返却されました。

「怪しい者ではない」と理解をしてもらえたようです。

ホッと胸をなでおろす私たち。解放されました。

それにしても運転手のリヤードさんはどんな時も、私たちを守ってくれました。

「この人達はガザの状況、戦争被害を伝えるために来てくれている人たちだ」

と、必死に訴えてくれました。感謝してもしきれません。

数々の準備をしてきていたものの、本当に何があるか分からない状況を、あらためて噛み締めた出来事でした。

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(道中出会った子どもたち。好奇心で満ち溢れるその瞳に、もうこれ以上、怖い思いをして欲しくないと、どんな大人も思うでしょう)

(今回は10:00~13:05までのお話でした。 ぜひ映像も合わせてご覧ください)

<パレスチナ出張記【9】につづく>
(2023/10/追記:現在再掲準備中です)

(2023年10月10日追記)
JVCは2023年10月の情勢を受け、パレスチナ・ガザ緊急支援を開始します。

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