
【スーダン】包囲下カドグリでの収穫記録―植えて、耕して、生きるー
.jpg)
国軍と即応支援部隊(RSF)による大規模戦闘勃発から3年が経過し、ダルフール地方・コルドファン地方・青ナイル州では依然として戦闘が続いています。その中でも、南コルドファン州都カドグリの置かれた惨状については、今まで重ねて報告してきました。カドグリ自体は一貫して国軍が支配を続けていますが、周りをスーダン人民解放運動北部(SPLM-N)及び、SPLM-Nと同盟関係を築いたRSFに包囲され、日常品・支援物資の流入が制限されています。物資不足により物価は高騰し、食料支援を受け取ることができず、深刻な食糧危機に直面しています。南コルドファン州は雨季に豊富な雨量を誇り、多くの人々は農業を生業としています。それでも種子や燃料の高騰、治安上の不安から遠く離れた農地に行けないなど、生きていく術を奪われているのです。

戦闘が継続している地域では深刻な食料危機を示しているのが明確だ。
食料保障を表す国際的な基準「総合的食料安全保障レベル分類(IPC)」によると、スーダン全体で約2,600万人が深刻な飢餓直面しているとされています。2025年にはカドグリで最悪のフェーズ5「壊滅的飢餓」が確認されました。スーダン国内でフェーズ5に至ったのはカドグリとダルフールの一部しかありません。それぐらい、カドグリの状況が深刻であることを表しています。
実際にカドグリでは、「一日一食しか食べられない」「草を煮て食べている」「昆虫を食べている」といった声や「有毒の草を食べてしまい子どもが死亡した」というニュースまで流れてきました。幼少期の栄養失調は、免疫機能が十分でないため、命の危険があります。他の病気を併発するリスクも高く、生涯に渡って心身に影響を及ぼしたりする可能性があります。そして、明日自分が食べるもの、子どもに食べさせるものがあるか分からないと思いながら生きる精神的な苦境も無視できるものではありません。
こうした状況下、2025年の雨季が始まる前に、種子を配布することにしました。配布から収穫までは本事業を助成いただいたアーユス仏教国際子協力ネットワークの報告(https://ngo-ayus.jp/column/other/2026/04/sudan/)からご覧ください。

90年代の内戦に巻き込まれ左手を失い、聴覚障がいも抱えるが、配布した種子を栽培中の男性
収穫まで決して容易な道のりではありませんでした。冒頭で言及した通り、カドグリは複数の武装勢力により周囲を包囲されているため、種子をカドグリまで搬入するのもスムーズには行きませんでした。搬入後も略奪を避けるため、JVCの倉庫ではなく、市場にある頑丈な倉庫で保管する対応をとりました。
住民に種子配布を終えた数週間後に、カドグリの市場で大規模な略奪が発生しました。これは、深刻な食料不足の中で、商人が食料を保管し市場への供給を絞ることで価格が高騰しているとして、一部の民兵組織(RSFやSPLM-Nとは別)が行動を起こしたことをきっかけに、住民も巻き込む形で略奪に至ったのです。事態の収拾のため国軍も鎮圧に乗り出しましたが、その過程で民兵組織と国軍の間で交戦が発生しました。
また情勢悪化の影響を受け、住民は武装勢力が近隣に迫る中で遠方の農地へ行くことを避け、自宅近くでの耕作を選択せざるを得ない状況に置かれました。実際に、少女が農地に行った際に武装勢力に誘拐され、それから行方不明になっているという痛ましい事件も起こっています。
さらにコレラの流行もありました。給水システムの脆弱化により、清潔な水へのアクセスが制限され、衛生環境の悪化とともに、感染症が急激に広まったのです。加えて医療品が不足し、治療することも困難になりました。その間、人道支援団体のスタッフがコミュニティへの立ち入りを制限されることになりました。感染状況が徐々に落ち着き始めた後も、RSFが近隣の州を完全に掌握し、ドローン攻撃も活発になり、カドグリにも危険が目の前に迫っているという状況に追い込まれました。

故障されたまま放置された井戸
そんな緊張に包まれる中、待望の収穫を終えた住民にインタビューを実施しました。
.jpg)
「昨年は耕作そのものができず、食事は1日1回しか取れない状況が続いていました。しかし、JVCから種子の支援を受けてから状況は大きく変わりました。全4種類の作物の収穫ができ、来年の雨季用に種子を確保することができ、持続的に農業を続けられる見通しが立ちました。
収穫した作物は自宅で消費するだけでなく、生活を変える収入源にもなりました。ピーナッツの一部はダクワ(ピーナッツバター)として販売し、ササゲはターミーヤ(豆コロッケ)として加工して販売しました。その収入で、砂糖、石けん、さらには家族の薬まで購入できるようになりました。以前は食べられない日もありましたが、今では1日2食を安定して確保できています。

スーダンの食事の定番であるターミーヤ、ダクワサラダ
また、農業を続ける中で害虫の問題もありましたが、指導に従って灰を用いて対処し、ソルガムでは穂に袋をかけるなどの工夫により、被害を抑えることができました。」
「支援を受ける前は、食事は1日1回しか取れず、生活は非常に厳しいものでした。仕事がなく、物価も高騰しているので、種子を市場で買うのが困難でした。」

種子配布前のインタビューの答えるサミーラさん
「ササゲが水害でうまく栽培できなかったのを除くと、他は十分な収穫量がありました。特にオクラはずっと食べ続けることができ、家族の食生活を支える重要な作物になりました。
収穫物は主に家庭で消費し、売ることはありませんでしたが、その結果としてソルガムを市場で買う必要がなくなり、その分の費用を他の生活必需品に回すことができるようになりました。また、今では1日2食を確保できるようになり、収穫した一部は来季用の種としても保存しています。」

保存しているソルガムの下で笑顔を見せるサミーラさん
インタビューするために家庭に訪問すると、農業研修で得た知識を活かして害虫を防いだこと、収穫後に食事量が増えたこと、来年のために種子を保存していることを皆さん笑顔で話してくれました。種子配布は緊急食糧支援のようにすぐには空腹を満たすことはできませんが、「自分で植えて、育てて、収穫する」というプロセスを通じて、住民に満足感や喜びをもたらしているように感じました。カドグリの情勢は依然として厳しい状態が続いていますが、今年もまた雨期が訪れます。昨年保存できた種子を利用して、生きるための挑戦が既に始まっています。

収穫物を誇らしげに見せてくれる住民
・Integrated Food Security Phase Classification (IPC) “Sudan: Acute Food Insecurity Situation”
https://www.ipcinfo.org/ipc-country-analysis/details-map/en/c/1159787/?iso3=SDN
.png)
京都府出身。大学でアラビア語を専攻し、在学中にイエメンに留学。留学中に「アラブの春」と総称される民主化運動が始まり、ライフラインが脆弱化し、国が混乱に陥っていく様を目の当たりにする。卒業後は途上国・新興国の根幹を支えられるようなインフラ支援に携わりたいとの思いで、メーカーにて発電プラント事業を担当。退職後、現地の人々により近い距離で可能性が広がることに尽力したいという思いが大きくなり、2018年JVCに入職し、以降スーダンに駐在。イエメン事業立上げに参画し、2022年よりイエメン事業担当も務める。