REPORT

パレスチナ

学生たちのディスカッション(2) ~女性の社会参画と権利について~

翌日、私たちは再びサマーキャンプを訪れました。

テーマは前日の続き、女性の社会参画と権利についてです。

まず、前日のディスカッションを受けて、保守的な地域から参加している3人の男の子たちに、「どう意見が変わったか、もしくは変わらなかったか」という質問をしました。答えは以下の通りです。

  • 男の子① 意見は変わらない、文化は変えられない。
  • 男の子② 50%くらい変わった。
  • 男の子③ 10%くらい変わった。男女の権利は平等だと思うようになった。 女の子も男である自分と同じように自由に出かかるべき。

ここから、PMRSスタッフのナジュラやボランティアの女性と男性も参加して、再びディスカッションが始まりました。

他の生徒たちは昨日同様、概ね女性の社会参画に賛成でした。

ナジュラ
「人間は人間、男と同じ存在よ。勉強も仕事も結婚もする、全てにおいて同じことをしている。誰かが私に、外出する理由や行き先を聞くのはいいけど、遠いところに行くのはダメと言われても、私は自分の行きたいところに行く。私のお父さんもそれを認めてくれているわ。父や夫の意見は聞かなきゃいけないけど、同時にディスカッションをしなければいけないわ。なぜそれがいけないの?」

男の子①
「伝統的な慣習だから。」

別の男の子
「だって評判が悪くなるじゃない、女の子が夜遅く出かけたら」

ナジュラ
「女の子を心配するのはいいことだけど、彼女の人生を縛ることはお かしいわ。もしあなたの妻が(夜遅くに)外出したいと行ったらあなたは彼女になんて言う?」

男の子①
「(夜遅くの外出は)絶対だめだよ、それを止めてなんの問題がある?」

ナジュラ
「もしあなたがそのまま結婚したら、あなたの息子もおなじ考えになってしまうわ」

男の子③
「そんなにこいつを責めるなよ。俺だって10%しか変わってない」

ナジュラ
「私たちは簡単なことを変えたいだけよ」

男の子②
「俺も妻と一緒に出かける。それでいいだろ」

ナジュラ
「彼女が出かけたいなら出かける権利があるわ。これは神が彼女に与えたものよ。私たちは宗教を間違えて解釈している。私たちは全てを禁止、禁止と言っているけど、それは間違ってる。もちろん私たちは私たちの文化を尊重するべきだわ。でも、結婚するかどうかとか、(誰と結婚するかとか)そういう大事なことは自分で選んだり決めたりしてもいいと思う」

他の参加者の女の子から、
「人が外に出るのは当たり前だけど、ここはアラブの国で、またイスラム教の国だから社会に住む者としてルールに則るべき」
というような意見も聞かれました。

休み時間になると、みんなまだまだ無邪気な様子で遊んでおり、子どもらしい様子が見られますが、しっかりと自分の意見を持っていて大人だなと感じました。


(前日は女の子たちの発言が少ない印象でしたが、 この日は女の子たちも積極的に発言していました。)

海外に出ると信仰を持たないこと自体が理解されないことがあるので、いつも一応"日本では仏教と神教の両方信仰している"と答えますが、私は特に信心深いわけでもなく、お寺や神社にもほとんど行きません。また、子どもの頃から自分で色んな事を選択させてもらってきた私にとっては、宗教や文化がこんなにも人生に影響力を及ぼすものなのか、と改めて感じる体感する出来事となりました。

イスラム教徒の女性たちは、自分たちが男性よりも決定権がなく、自由もないと思われる状況に関して、仕方なく従っているのか、それとも特に疑問を持たず文化だからと受け入れているのかをナジュラに聞いてみました。

すると意外なことに、後者の女性も多いという返事が返ってきました。むしろそれを楽だと感じている女性もいるようです。保護されているという感覚なのでしょうか。


(ナジュラが円の中に入り、自分の意見を伝えつつ、 参加者たちの意見も引き出していました。)

ナジュラたちのような男女の平等性や女性の権利などに関する発言は、敬虔なイスラム教の人たち(特に男性たち)からすれば、なかなか受け入れがたい考えなのだと思います。当然どちらが良い、悪いということではありません。ただ、自由に外に出たい、勉強をしたいと思っている女性たちが、宗教や文化という縛りで、自分の意志で行動できないということはやはり人権を侵害していると言わざるを得ず、彼女たちは、"女性にもどう生きるかを選択する権利がある"ということをみんなに理解してほしいとナジュラは言っていました。

このサマーキャンプに参加しているボランティアも生徒たちも、イスラム教徒の中ではかなりオープンな考え方の持ち主である印象だったので、機会があればもっと保守的な女性たちの話も聞いてみたいと感じました。

世界(特に日本を含む先進諸国など)では、「男女が平等に扱われないこと=人権侵害」という風潮が強く、それを排除する動きが目立ちます。実現するのはかなり難しいことだとは思いますが、それを受け入れ納得している女性たちがいる以上、排除するのではなく、宗教や文化を尊重しつつ"どれを選択するかはその女性の意志に任せる"という社会的構造が必要とされていることを感じました。

直接、現地の人たちから話を聞けたことは、とても貴重な体験でした。
こういった「気づき」を提供して、少しずつでも社会を変えていこうとするPMRSをJVCがサポートする意義を感じる出来事でした。 短い期間の駐在ですが、現地で体験した出来事をまたお伝えできたらと思います。

通訳(アラビア語):JVCインターン 大川梨恵

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