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パレスチナ

ガザの声「24時間のうち4時間しか電気がきません。発電機のためにガソリンを貯めていましたが、あと20リットルしか残っていません」(7月18日付)

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ガザ市近郊のJVC事業地にて(2013年11月21日、今野撮影)

ガザ地区中部のディール・アル・バラフに住む看護師の友人に、電話で状況を聞きました。私がパレスチナを発つ直前の7月14日に電話で話した際には、彼の自宅周辺もイスラエル軍の空爆を受けて近所の住民が殺されていましたが、まだ家から出て市場に買い物に行くことができていると話していました。また、電気も大規模攻撃の開始前と同様、1日8時間来ており、彼の声も比較的落ち着いていました。しかし、今日18日に電話したときの彼の声は震えて、ずっと緊迫感を強めており、「状況はとても悪い」と話していました。以下が、彼から聞いた詳しい状況です。

「状況はとても悪いです。ミサイルが家の上を飛んでいくのが聞こえます。妻と娘はとても怖がっており、私もいつミサイルや砲弾が落ちてくるか分からないので、市場に行くこともできません。昨日なんとか市場に行くことができましたが、いつ爆弾が落ちてくるか分からないので、もう行きたくありません。でも、家には食料がほとんど残っておらず、とても不安です。戦車の砲弾やあらゆる種類のミサイルが落ち込まれています。状況はとても厳しいです。今は、24時間のうち4時間しか電気がきません。発電機のためにガソリンを貯めていましたが、あと20リットルしか残っていません。殺された人々の多くは民間人です。屋根のない収容所とされたガザで、罪のない人々が殺されているのです」

ガザ地区で生まれ、看護師としてサウジアラビアで20年間働いた後にガザに戻ってきた彼は、ハマースが嫌いなファタハ支持者です。ガザに戻ってきてからパレスチナ自治政府で看護師として働いていましたが、2007年にハマースが実効支配を始めると解雇されました。でも、ハマースかファタハのどちらを支持しているかという問題は、現在も続く大規模空爆ではあまり意味をなしません。市場に向かう道中に砲撃で殺されるかもしれないし、近所を狙ったミサイルが誤って自宅に落ちてくるかもしれないからです。なによりも、いつ殺されるかもしれないというとてつもない恐怖が、信条や所属に関係なく、ガザの人々に同じく降りかかっています。

私はこの友人に、JVCが他のNGOとともにイスラエル大使館にガザ地区での無差別攻撃を止めるように求める要請書を送ったことや、攻撃に反対するデモが行われていることを伝えました。彼は泣きそうな声で、「ありがとう。ガザの人々を、ガザを支えてくれて本当にありがとう。私と家族のことを心配してくれて本当にありがとう。私からは連絡ができないから、また必ず連絡してください」と言いました。

彼と私の間の連絡は、電気が数時間しか来ない今、彼の自宅に残された20リットルのガソリンにかかっています。僅かなガソリンと食料がなくなった時のことを考えるガザの人々が、爆弾が降り注ぐ中でどれほど不安な時間を過ごしているだろうかと想像するたび、胸が締め付けられる思いです。彼が「必ず連絡してくれ」と必死に願っていたのは、外国人である私からの電話が、外の世界とつながる唯一の手段であり、ガザのことを一瞬でも忘れられる時間になっているからなのかもしれません。

※7月20日付の国連OCHAの発表によると、大規模空爆が開始された7月7日以降、イスラエル軍の攻撃によって殺された死者は336人(うち民間人228人、子ども77人、女性56人)、負傷者は2,268人(うち子ども657人、女性463人)に上っています。また、18ヶ所の医療施設と85ヶ所の学校が空爆・砲撃を受け、ガザ地区の住民の8割が1日4時間の電気しか受け取れなくなっています。他方、イスラエルのハアレツ紙は、イスラエル側の死者数は7人(うち民間人2人で、うち1人はベドウィンのアラブ人市民)と報じています。

執筆者

今野 泰三(パレスチナ現地代表)

大学在学中に明け暮れたバックパッカー旅行。その道中、カンボジアで内戦の記憶と開発のひずみの中で苦しむ人々と出会い、シリアでパレスチナ難民から祖国への思いを聞き、ロシアの空港ではどこにも行けない無国籍のガザ難民と夕食を共にした。無数の出会いに背を押され、01年よりJVCボランティアチームに参加。英国留学、シンクタンク勤務、エルサレム留学、大阪での研究員生活を経て12年より現職。パレスチナで見たもの聞いたものを日本の皆さんと分かち合いながら、世界の「希望」「幸せ」を少しでも増やせるよう一緒に考え行動していきたい。

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