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パレスチナ

【ガザ空爆】医療サービスとPMRSの対応

12月30日、ガザの緊急対応に関して、PMRS(=Palestinian Medical Relief Society、パレスチナ医療救援協会)のラマッラー・オフィスで緊急会議が行われました。ガザの状況に関して、PMRS代表であり、Palestinian National Initiative事務局長のムスタファ・バルグーティ氏によるブリーフィングがありました。JVCもこの会議に出席しました。

ガザ保健ステータス概況

ガザの保健ステータスは、継続した緊急状態にある。空爆が始まる前から厳しい封鎖により、医療品、医薬品、機器のスペアパーツが不足しており、そして治療を施すために必要な最低限の衛生状態を保つことが不可能な状況が続いていた。現在、病院は設備、医療品、医師、ベッドなど、全てにおいて不足している。シファ病院(ガザの政府系の病院)は側のモスクが攻撃を受けた時に一部破壊された。保健省の救急車は5台が攻撃の被害を受け、そのうち1台は破壊されている。

PMRSガザの様子

PMRSの4つのクリニック、緊急センター、慢性病センターなど、全ての施設は今のところ被害を受けていない。また、スタッフも全員無事。全ての医療チームが、通常対応/緊急対応チームに分かれて24時間体制で次々と運び込まれてくる負傷者に対応している。PMRSでは現在救急車が1台稼動しており、それを2台のモバイルクリニック車がサポートしている。しかし、救急車の数は足りていない。また、既にトレーニングを受けたボランティアたちがサポートしている。

医療品等の不足

空爆が始まる前は、医療品、医薬品をガザに輸送することが難しかったが、この2日間、それらの物資がガザに入ってきている。また、多くのアラブ諸国が、医療物資、食料等をラファから入れる計画をしているが、ラファ国境はもともと物資輸送のために作られておらず、全て手で積み下ろし作業をして細い通路を通さなければならない。

政府系の病院では受け入れきれない負傷者が、どんどんクリニックに運び込まれてくる。もともと、政府系病院が二次医療、PMRSのクリニックが一次医療という"担当"もあったということもあり、PMRSは独自に、市民団体等との連携を取り、コミュニティーレベルで活動を続ける。なお、この状態に及んでも、政府系病院の職員はまだストライキ行っている。

現在PMRSラマッラーには、ガザに送るための2台の救急車が準備され、待機している(この救急車のガザへの輸送のための調整について対応することを、ミーティング内でUNOCHAがオファーした。現在UNOCHAが緊急対応チームを作っており、UNRWA、WFPとともに物資の輸送について調整を担当。PMRS等NGOについても協力するとのこと)。

エジプトへの負傷者の搬送

エジプトは負傷者の搬送のためにラファを開けることを約束したが、その手続きが長くかかること、複雑なことから、大きな遅れが出ており、容易ではない。また、搬送のための救急車も、付き添う医療チームも足りない。現在、34名の重度、重症の患者、負傷者がエジプトの病院へと送られている。そのうち17名がアッリーシュの病院、17名がカイロの病院へと搬送されているが、カイロまでの道のりが遠く、搬送途中で亡くなってしまう危険性がある。なお、Dr.ジハード(JVCは2005年に日本に招聘している)がカイロ側でその調整にあたっている。特にヨーロッパ諸国には、アッリーシュの空港に飛行機を送り、そこから負傷者をヨーロッパの病院に運ぶという支援をお願いしたい。

PMRSの緊急対応について

6ヶ月の期間で、緊急対応アピールを開始した。医療物資の不足は続いている。しかし、現在ボーダーが開いた事から、医療物資についてはこれから支援がつくことは予想される。

昨日からガザで、ファースト・エイド(救急処置)のキャンペーンを始めた。この状態がどのくらい続くか、また広がるかわからず、どこでいつ負傷者が出るかわからない状態に加え、混乱の中でコミュニケーション状態が悪いため、コミュニティーレベルで救急対応できる体制を作るという目的である。ファーストエイドキットの配布、緊急に救急法トレーニングの実施、既にトレーニングを受けた人たちの再講習などが含まれる。

(今朝、ガザに医療物資も含む人道支援物資を届ける船が海上で攻撃を受け、船が破壊され、またキプロスに帰る燃料もないことからレバノンに急遽船が送られたという事件があったのですが、Free Gaza Movementに関わっているバルグーティ氏はその対応に追われていて、会議は遅れてスタートしました。「イスラエルによると、『イスラエルの領海に侵入したから攻撃した』との言い分。ガザを占領していないと言いながら、随分矛盾した理由だ」とのこと。バルグーティ氏は上記、ガザの状況と緊急対応について説明した後、以下のように続けました)

「モスク、大学、薬局などの攻撃、そして多くの民間人の負傷者が出ている。これは決して、イスラエルの主張する“自己防衛”ではない。これはハマスへの攻撃ではなく、ガザ全ての人々に対する攻撃である。停戦が破られたのはハマス側からのミサイル攻撃だと言っているが、先に攻撃したのはイスラエルだ。また、約束したはずの封鎖の解除を実行していなかった。現在のガザには人権が全く守られていない。

この攻撃は、政治的な背景が強く、1つはイスラエルの選挙戦のためのキャンペーンとして、もう1つは軍事実験も含む軍事産業のマーケティング的な意味がある。レバノン戦争での汚名を返上し、武器を売るためだ。イスラエルが地上戦を開始すれば、数千人の死者が出るだろう。パレスチナ側は、イスラエルが攻撃をやめ封鎖を解除すれば、停戦を再び受け入れる準備はある。

どうしたらイスラエルを止められるのか、考えてほしい。これは現場での緊急支援だけではどうにもならない。今回落ち着いたとしても、また数年後、同じ光景を見ることになるだろう。そうならないために、各政府にイスラエルにプレッシャーをかけることを、各団体から、メディアから、してほしい。イスラエル側でもし数十人の死者が出たら、国際社会はどう反応するだろう。ガザの人々が望んでいるのは、平等に扱われることだ。数字で測れることではないが、300人以上の死者という数字を重く受け止めてほしい」

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