REPORT

スーダン

得られたものは技術や収入だけではないー評価報告②職業訓練ー

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JVCスーダン事業では2010年からスーダン、南スーダンの複数の地域において活動を実施してきました。活動の継続を判断するうえで、それらの活動が対象地域に効果的だったか、関わってきた人々にどんな変化をもたらしたのか、活動の実施においてJVC側の体制面は十分だったかなど事業評価を実施しました。

今回の報告では、評価報告①補習校支援に続き、職業訓練において見えてきた成果・課題、裨益者の声を紹介します。

職業訓練とは?

JVCは南コルドファン州の避難民地区にて2019年度より紛争や経済事情によって学校に行っていない15歳未満の子どもに対して、補習校支援を実施してきましたが、15歳以上の若者に対しては、職業訓練を通し、知識・技術を身に付けるだけでなくビジネスマナーやマネジメントスキルを学び、生計向上と自活を目的とした活動を実施してきました。

職種は訓練終了後の就職先を視野に入れ、カドグリの街に一定数の工房(訓練終了後の受け入れ先)があること、市場にニーズがあること、読み書き能力がなくても学べることなどを考慮しつつ、若者の希望も聴取した上で、縫製・食品加工・溶接・電動三輪車(トゥクトゥク・リキシャ)整備の4つの職業を選定しました。

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食品加工の訓練でビスケットを作る訓練生

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電動三輪車整備の訓練生

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スーダンでは一般的に左の乗り物をトゥクトゥクと呼び、右の乗り物をリキシャと呼んでいる。

成果

4職種に119人が登録をし、78%にあたる93人が修了試験を合格し訓練修了。
そのうち75人が実地研修に参加し、54人が最後の過程まで修了しました。

縫製・食品加工に参加した計9名は職業訓練を協同で実施した現地行政のザカートオフィスがアレンジしたお店にて商売を継続。また、自身のコミュニティでスモールビジネスを続けた参加者も多く確認されました。

溶接に参加した19人は12の工房に、電動三輪車整備に参加した26人は9の工房に分かれて実地研修を継続しました。

研修生は、工房や日々の業務量によって異なりますが、500-12,000SDG(当時のレートで120~3,000円)/日の収入を得られるようになり、中には溶接工として水道公社に就職する訓練生もいました。

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トゥクトゥクの部品の名称を覚える訓練生

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縫製研修で洋服を作った訓練生

職業訓練修了生、講師の声

電動三輪車整備の講師 ファトヒーさん


電動三輪車整備の講師を努めたファトヒーさんは12人の職業訓練生を受け入れ、そのうち5人が今も継続して働いています。

「訓練生は5つのコミュニティから来ていました。(反政府組織SPLM-Nが実効支配する)ヌバ山地から来たばかりの若者もいたので言葉の壁がありました。アラビア語がよく理解できない訓練生がいて苦労しましたが、別の訓練生が通訳代わりになっていました。」

訓練生のムハンマドさんについては「素行がよくなり、礼儀正しくなりました」と笑顔で紹介してくれました。ムハンマドさんも「コミュニティに貢献できていて、コミュニティの一員だということを実感できています」と満足気です。

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電動三輪車整備の講師ファトヒーさん(写真右)と訓練生モハンマドさん(写真左)

溶接の訓練参加者 アルアミンさん


溶接の訓練に参加したアルアミンさん。片足に障がいがありますが、南スーダンの難民キャンプにて教育を受けたので、英語を話すことができます。

2019年にカドグリに来ましたが、2020年には武力衝突が発生し、高校の卒業証明書など大切なものを消失しました。父親を早くに亡くし、お兄さんたちは海外にいるため、一家の大黒柱の役割を担っています。

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訓練中のアルアミンさん(右)。アラビア語が苦手な訓練生に現地の言葉で説明している。

訓練から1年以上経った現在の仕事について伺いました。

「配属された中央市場の工房では収入は少なく、交通費にほとんど消えてしまうため、友人がオーナーをしているコミュニティ内の工房で働いています。現在は凡そ1日に5,000SDG(当時のレートで約1,250円)の収入があります。主にベッドの製作や修復が多いですね。ベッドを依頼されて作っても、お金を払えなくて取りに来ないお客さんもいます。それでも工房で得たお金で、妹の学費や洋服、食料を買ったりしています。」

訓練中に実施した
ライフスキルトレーニングについては、
「どうやって同僚と接するか、お客さんをリスペクトすることの重要性や時間に遅れないことなどを学びました。以前は5分も待てなかったですが、今では忍耐強くなりました。道具や部品もよく整理できるようになりました」と振り返ってくれました。

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アルアミンさんが製作したベッドの枠組み。1時間もあれば溶接できるという。

職業訓練のその先

溶接の技術訓練に参加した訓練生は実地研修をした工房で働き、家具などを作って収入を得ることができました。

お金を工面できたことで、一度ドロップアウトした学校に戻って教育を継続するためにJVCが運営する補習校に参加したり、縫製の技術訓練に参加した訓練生は作った洋服を売って収入を得て、ハルツームの大学に進学したり(さらに大学内でも自作の鞄などを販売!)と、修得した技術を活かし収入を得て、次の人生のステップに進んだ訓練生たちもいました。

さらには、ライフスキルトレーニングや仲間との共同訓練を通して、生活態度の変容、信頼関係の構築や自己肯定感の向上、コミュニティへの貢献の実感など、訓練生だけではなく、コミュニティの安定にも寄与していると考えられる変化がみられました。

「研修の初めは、訓練生のお互いのことを知りませんでした。いつも自分の住んでいる地区にしかいないので、最初は怖かったです。今では他人を敬うこと、言葉に耳を傾けること、人と上手に付き合うこと、窃盗は絶対にしてはいけないことなど多くのことを学びました。そしてこの訓練のおかげで兄弟といえる仲間ができました。 」と話す訓練生もいました。

 

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電動三輪自動車整備訓練生サディークさん(中央)と工房の同僚たち

進学をしたり、技術を磨き続けたりと、前向きに次の目標を持ち続ける人、「工房で得た収入で兄弟の学費を払っている」と家族を支える人、それぞれの熱意と強さと思いやりにとても胸が打たれました。

しかし残念なことに2023年からの大規模戦闘により、職業訓練に参加した若者が仕事を失い、軍隊に参加したという報告も聞いています。それでも職業訓練を通して得たスキルや経験が彼らの人生を支える糧となっていくことを強く願います。そして私たちも現状に諦めずに、現地の若者を支える活動を進めていきます。

執筆者

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スーダン事業・ラオス事業 東京担当

東京都出身。小学生の頃にマザーテレサの伝記を読み、世界中に飢餓や紛争で苦しんでいる人々がいることを知り衝撃を受ける。「世界の問題と苦しんでいる人々を無視しない人になりたい」と思い、国際協力に関心をもつ。大学卒業後は一般企業と在日イエメン共和国大使館で勤務しながらJVCの英語ボランティアに参加する。パレスチナを訪れた際、現地で実際に起きている現状を目の当たりにし、自分の無力さと問題の複雑さを痛感。問題から目をそらさず長く向き合い、 自分か主体的に支援活動に携わりたいという思いが強くなり、2022年5月、JVCに入職。

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