職業訓練を経て、うまれた変化とは?第3回(全3回)
今まで3回に渡って職業訓練の研修生に対してのインタビューをお伝えしてきました。
・第1回インタビュー(溶接)
・第2回インタビュー(溶接)
最終回にあたる今回は、スーダンで移動に欠かせない乗り物、リキシャ・トゥクトゥク修理(メカニック)の訓練生と講師の方へのインタビューです。それぞれの生活や心情の変化、是非お読みください。
私はカドグリのシャイール地区の出身です。物心ついた時から10年間パン屋で働いてきましたが、同じ日々の繰り返しで技術が伸びることも無かったので、行き詰まりを感じていました。
そんなとき、同じ地域の友人が職業訓練の登録が行われていることを教えてくれ、自分も行ってみることにしました。それ以来とても充実した日々を送れています。
子どもの頃に沢山苦労をした分、JVCの職業訓練で大変や苦しいと感じたことはありません。様々な車種を自力で修理できるようになった事を誇りに思います。機械を大切にすることを覚え、何年か前までやっていた他人の車に石を投げつけるような子供染みた遊びはしなくなりました。
生活のリズムも整いました。朝5時に起き、シャワーを浴びて、紅茶を飲んだら仕事。夕方4時に仕事を終えたら、そのあとは友人とサッカーをしています。帰宅したら夕食をとって寝るだけです。将来は地元のシャイールで自分の工場を持てるよう頑張りたいです。
私はここに来る前、金鉱山で働いていました。常に健康被害や崩壊の危険に晒される職場でした。
ある日、地域の学校で教鞭を取っているコミュニティリーダーが職業訓練の募集がある事を教えてくれ、安全な職場で働くためには技術が必要だと思い、参加しました。
今では、メカニックの技術に魅了されています。細かな機器の扱い、部品の組み立て、電気系統など高度な技術を身につけて、人の役に立てることが嬉しいです。お給料で家族に砂糖やコーヒー豆を買ってあげることもそうですが、車両の故障で困っている人を助けてあげられた時に、格別の満足感を得ます。
単なる力仕事より、技術を追求する職種の方が断然自分に適していると思うので、今後も腕を磨いて行きたいです。
私はこの職業訓練に参加する前は特に何もしていませんでした。友達もおらず家で引きこもって、家族にも疎まれるような存在でした。
元々母がコミュニティリーダーに相談していたのか、ある日JVCという団体が職業訓練をやると言うことで自分も引っ張ってこられました。最初は何がなんだかよく理解できず、授業でエンジンやギアなどの概念を説明されても意味不明でしたが、諦めることなくそれらの概念を一つ一つ理解していき、やがて学びが喜びに変わりました。
今では沢山の同僚に恵まれて、お客さんとも関わりがあるので、もう一人じゃないということが本当に嬉しいです。自分の努力で苦境を打破出来たことに達成感がありますし、生産的な生活を送っていると、明るい未来を感じます。
私は家族を支えるために働いています。母が左手に怪我をしていて働けないことと、兄弟たちはみな学校に通っているので、自分が収入を得る必要があります。
元々メカニックには興味があったので、JVCの職業訓練に巡り合えたことは本当に幸運でした。天職にありつけた事で働くことが苦にならず、今は力をつけるため人一倍働いています。朝6時には出勤し、皆が帰宅した後も午後6時7時くらいまで残って仕事に励んでいます。
平日に安定した仕事に打ち込めているお陰で休日はのんびりと過ごせます。金曜日のお祈りの他は、洗濯や家事、あとは体を休めるだけです。家族にお金を入れているため中々自分で使える分が残りませんが、近いうちに自分の工具セットを持って、ファトヒ先生のようなプロフェッショナルを目指したいです。
私はカドグリのムルタ地区の出身です。子どもの頃から機械について勉強したいと思っていました。機械産業が盛んなカドグリでは、時折職業訓練が行われていることを知っていましたが、長い間登録する機会に中々ありつけないでおり、もどかしい日々を過ごしていました。
ある日JVCが訓練生の登録を行っていたところに、私は偶然通りがかりました。気になって覗いてみると、自分のことも受け入れてくれるというので嬉しくなってすぐに登録しました。以来、沢山の勉強と訓練をすることが出来て多くの変化が生まれました。
以前は自分に自信を持てず人の目を気にしてばかりいましたが、今では自分の腕に自信があるので、胸を張って歩けます。精神面でも、鉄や油に触れながら機械と向き合って行く中で忍耐力が付きました。収入も安定してきたので、次の目標は結婚して家族を持つことです。
JVCの職業訓練の圧倒的な強みは課程修了後のフォローアップにあります。職業訓練を提供する団体は他にもありますが、大抵の場合、修了後は道具箱を配布して終了です(その道具箱が市場で売られることがしばしば)。その点JVCは技術の習得はもちろんのこと、就職後も訓練生たちが市場に溶け込んで行けるよう、長い期間にわたってコミュニケーションを取ってくれるので、生徒の安心感が違います。
今回の職業訓練プログラムにおいて、様々な課題がありました。苦労したのは生徒の出席率を安定させることです。ほぼ全員の生徒が貧困家庭にあるため、何かを学ぼうにしてもその日を生き抜く資金が無く、稼ぎに出ると言って授業を休まざるを得ない事があります。例えば生徒のムハンマドなどは手間暇かけて焼いたレンガを100個売ってやっと13000スーダンポンド(日本円で2500円程度)の稼ぎになるわけですが、欠席が多くては職業訓練にならないので、午前午後の時間帯に分けて生徒が来やすい時に工場で実地訓練を受けられるよう工夫しました。JVCの職員さんにはいつも相談に乗っていただいただけでなく、食事の提供、交通費の負担など多様な支援を通じて出席率の安定、延いては生徒の課程修了に貢献してもらいました。
プログラムの構成についても、実地訓練に入る前に理論を学ぶ期間が十分確保されていたことが指導する立場として助かりました。今回の職業訓練のプログラムは訓練生たちが彼らの年齢故に学校への編入が叶わないという問題を解決するという趣旨の下、立案されたと理解しています。「年齢が高い」と言っても彼らはまだ10代後半、20代前半の若者で技術は問題無く体得出来ました。
カドグリの地はアラブ系・ヌバ系民族の武力衝突に苛まれてきました。訓練生にはアラブもヌバも混在していますが、JVCの職業訓練プログラムは互いのことを理解し合う最適なプログラムだったと感じています。同じ避難民として様々な場所から集まった彼らが同じ課題に挑戦し、同じ釜の飯を食う。まるで一つの大きな家族のようにこの時代を生き抜く。こうした体験を通じて人間として成長出来ていることが日々の言動からも顕著に見て取れ、指導者冥利に尽きます。JVCさん、日本の皆さん、ご支援本当にありがとうございました。
(訓練生とファトヒ先生の集合写真)
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