REPORT

南アフリカ

大使が村にやってきた

3年間の研修の成果

少し前のことになりますが、7月8日にパートナー団体であるFAMSAからドロップインセンター(DIC)のボランティアに研修の修了証を贈呈する授与式が催されました。FAMSAとは事業一年目に実施したカウンセリング研修にはじまり、今年終了したコミュニケーション研修をとおして、とくにDICボランティアの子どもたちへのケアの向上に一緒に取り組んできました。

事業最終年の今年。今までのDICボランティアの努力を称えたい。そして、コミュニティの人びとに彼らの努力を知ってもらいたいという思いから、今年3月に終了したコミュニケーション研修の修了証授与式をボドウェ村で実施することにしました。

この事業はNGO連携支援無償を通し外務省からの補助金で実施しています。その中間報告に日本大使館を訪れた際にこの授与式の話になると、「そういうことであれば是非大使が出席できるか調整させてください」と担当者の方から嬉しい申し出が。たった1時間程の式典に出席するにも、首都プレトリアから片道4時間以上の道のり。実現するか不安でしたが、忙しいスケジュールを調整していただき、大使がボドウェ村にやってくることが決まりました。

まさか! 当日まで信じられなかった

大使が訪問されることをボランティアに伝えると、これは大変!と式典2日前からボランティア総出でDICの大掃除がはじまりました。

式典当日、来賓用にとJVCが購入したミネラルウォーターを持参すると、それを車から出す前に、「見て!」と机に並べられたのはボランティアたち自らお金を出し合って買ったミネラルウォーター。この日を楽しみに準備を進めてくれていたことが伝わってきます。

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(大使をDICに迎え入れるボランティアたち)

一方で、村の人たちはまさか大使が村までやってくるなんて、そんなことはありえないと当日まで誰も信じていなかったそう。式典には村長の出席をお願いしたのですが、当日ふたを開けてみると欠席の連絡が。式典開始の時間になっても招待したはずの他の人もあまり表れません。大使の車が到着し、姿を見せてからようやく「ホントに!」と人が集まってきました。(残念ながら、村長は最後まで現れず...)

挨拶はヴェンダ語で

2014年12月に着任されたばかりの廣木大使は、とても気さくでアフリカ文化にも深い興味を持たれています。この日もなんとヴェンダ語で挨拶をされました。「これで公用語11のうちすでに4言語でスピーチしたよ」と笑顔で教えてくださいました。英語のスピーチをヴェンダ語に訳し、スタッフが読み上げた音声を録音したものを繰り返し聞いて当日まで練習をして臨んでくださいました。

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(ヴェンダ語でのスピーチに盛り上がる)

ヴェンダ語で話しはじめた大使を、最初は耳を疑うように、やがて食い入るように見つめるボランティアと村の人びと。一言一言に「うん、うん」とうなずきます。スピーチが終わると大歓声とともにみんなが踊りだしました。大使が自分たちの言語を受け入れ、語りかけてくれたことが本当に嬉しかったよう。よっぽど印象に残ったようで、イベントから数週間たった今でも、「あのスピーチは...」と村の人たちに声をかけられます。

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(スピーチ終了とともに踊りだすボランティアたち)

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(ヴェンダ文化では敬意を示しとき地面に横たわる)

3年間見守ってくれた仲間

FAMSAからは3年間研修を受け持ってくれたトレーナーの一人、ヒャミーさんが出席。DICボランティア一人ひとりに修了証が手渡されました。

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(当日司会が決まってない!と急遽抜擢されたリジーさん(左)。見事に司会を務めあげました)

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(FAMSAヒャミーさん(右)から修了証を授与)

「まるで自分の子どもの卒業式にいる気持ち」と笑顔ながらも少し声を詰まらせて話してくれたヒャミーさん。3年間強い思い入れを持って、私たちからのリクエストにも常に的確に応え、ボランティアたちの成長を見守ってきてくれました。時にはボランティアたちからの電話相談に応えることもあったそう。親身になって相談に乗ってくれる素晴らしいパートナー団体に出会えたことは、JVCにとってもとても心強くありました。

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(廣木大使、来賓席にて)

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(当日は子どもたちの踊りや歌も日々の成果として披露されました)

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(ゼノフォビア反対の詩を披露するヒャンガナニの子どもたち)

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(子どもたちに囲まれる廣木大使)

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(記念撮影)

菜園訪問

式典を惜しまれながら後にした廣木大使は、その足で家庭菜園を実施している家庭も数件訪れました。病気の母親とおばあちゃんと暮らす17歳の若者の菜園では若者に励ます声をかけられていました。

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(菜園訪問へ)

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(モデル菜園であるフローレンスさん宅も訪問)

たった2時間程のボドウェ村での滞在でしたが、大使が励ましに来てくれたことはこれからもボランティアたちの励みになるはずです。

執筆:南アフリカHIV/エイズプロジェクトマネージャー 冨田 沓子

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