
【おすすめ本紹介!】『イエメンを知るための63章』 (会報誌T&Eから)
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本記事は、2026年1月20日に発行されたJVC会報誌「Trial & Error」No.361に掲載された記事です。会報誌はPDFでも公開されています。ぜひご覧ください。 |
この本は、イエメンを「紛争中の遠い国」ではなく、豊かな文化と精神性を持った人々の住む世界であると知っていただくために、ぜひ皆さんに手に取っていただきたい一冊です。
イエメンと聞いて、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。馴染みのない方も多いかと思います。コーヒーや石油、紛争や情勢不安といったイメージが浮かぶ方も多いかもしれません。現在は紛争の影響で、多くの国内避難民や難民が生じているイエメンですが、元々は「幸福のアラビア」や「緑のアラビア」と呼ばれる素晴らしい国でした。今回、私も事業担当としてイエメンを訪問しましたが、「素晴らしいイエメン」は過去のものではなく、厳しい現状の中でも人びとの暮らしや姿勢の中に、確かに生き続けていると感じました。地域や人々によって異なる歴史や文化があり、困難な現実と前向きな側面が併存する、そんな多面的なイエメンに近づけてくれるのが本書です。
イエメンの歴史・地理・社会・文化などが63章にわたって紹介され、どこからでも読み進められる構成となっています。長引く紛争によって公共サービスが滞り、水や燃料の不足が続く厳しい現実を抱えている一方で、人々の暮らし、地域ごとの環境や文化の違いなど、私たちが普段目にするニュースからは見えにくい側面も丁寧に描かれています。
編者の佐藤寛さん、馬場多門さんのもと、イエメンに関わる多くの研究者や実務者が執筆していますが、その中にはJVCイエメン事業担当で、イエメン留学経験もある今中も含まれています。アデンの街の雰囲気や留学時に経験したアラブの春の様子など、現地での生活を経験した本人ならではの視点が盛り込まれており、私自身読んでいて、自分の固定観念に気づかされました。
JVCでは現在、タイズ県で子ども広場の運営や学校の教室建設などの活動を行っています。小さな力ではあるものの、この素晴らしい国が一刻も早くその状況を改善し、いつかまたイエメンを思う人々が安心して訪問できるようになるように、活動を続けていきたいと思っています。
『イエメンを知るための63章』
佐藤 寛、馬場多門 編著/明石書店/2025年/2000円(税抜)