
【2025年度活動報告】住民主体の共有資源の管理と利用の支援
ラオスでは労働人口の約7割が農業に従事しており、多くの人が豊かな自然の恩恵を受けて暮らしています。土地や森林、河川などの共有資源(コモンズ)から得られる自然の恵みは、日々の食糧やいざという時の支えになっています。さらに、文化・社会的なアイデンティティとしても機能しており、住民の暮らしの基盤となっています。しかし、プランテーションや水力発電ダムといった開発事業の進出による土地収用や森林伐採が後を絶たず、食料・文化・安全面でも村人の暮らしを脅かしています。
また、市場向けの換金作物栽培が広がり、収入は増えたものの、過度な依存や土壌劣化によって住民の暮らしが不安定になり、社会の不公正が深まっています。
2025年度は、新たに活動場所をセコン県山間部であるダクチュン・カルム両郡に移し、「住民主体の共有資源の管理と利用の支援」をテーマに、自然資源などの共有資源が住民によって持続的な方法で管理・利用され、人々の暮らしが守られることを目的とした新たなプロジェクトを開始しました。
2025年度は3年計画のおよそ1年目にあたります。受益者層は、対象の農村で暮らす人々で、3年間での直接・間接を含むひ益者数は約3,857世帯、40,000人にのぼります。
2025年度の成果を村単位でみると、コミュニティー林(保全林)や魚保護地区の設置を4村で、農薬や化学肥料などの使用による環境への負荷や土壌劣化の低減・防止の活動を7村で、法律研修や危険な化学農薬等の周知を1村で行いました。その他にも、計4回の会議や研修の機会を通して、現地行政官や開発企業に対する、開発問題の危険性の周知を行いました。特に、前プロジェクトでコミュニティー林を設置した1村で、現地行政による一方的な県境変更によって村人の不利益が発生した事例があったため、JVCが仲介役となり近隣県行政や近隣農村民と話し合いを行い、当該村民の不利益を是正しました。
2022年に開始したセコン県での前プロジェクトを引き継ぐ形で進めていた新規プロジェクトが、現地行政によっても承認され、本格的にスタートしました(2025年9月MoU締結)。対象地となるのは、セコン県山間部のダクチュン郡・カルム郡で、対象村は両郡計18村となります。
新規プロジェクトは、主に
①コミュニティー林や魚保護地区の設置及び持続的な農産物栽培を支援する「共有資源管理の仕組みの設置支援」
②法律研修などを通し、村人の権利を守る法的知識の普及を図る「法律研修」
③現地行政や関係機関に実践の改善や危険性の周知を図る「働きかけ」
④「村人同士の交流や現地行政官のキャパシティ・ビルディング」
⑤前プロジェクトで実施した活動が持続するようにサポートする「フォローアップ」
から構成されます。2025年度は、3年計画の1年目として活動を実施してきました。

MoU調印式の様子
新たにカルム郡三村、ダクチュン郡三村で村の基礎情報および直面している開発問題についての情報を収集しました。この過程で共有資源が食料や収入の源として大切であること、またそれらが減少しつつあることを多くの村人とともに確認しました。
基礎情報収集の過程で村人とともに村の共有資源について話し合いを行い、その結果カルム郡一村でコミュニティー林を、カルム郡一村及びダクチュン郡二村で魚保護地区を、また両郡各一村で持続的な農産物栽培の支援を行うこととなりました。2026年2~3月にかけて、コミュニティー林や魚保護地区の設置式典を各村で開催し、現地行政官や近隣村民も招いて、規則の周知などに努めました。平均しておよそ120名の村人が参加し、盛況のうちに終了しました。また、農産物栽培支援を行った村では、家庭菜園の創設やピーナッツ播種による土壌改良の取り組みも進んでいます。ピーナッツ播種にあたっては新たに両郡から6村・13名の村人を選び、各27キロずつを配布しました。この13名がモデルケースとなり、ピーナッツ栽培による土壌改良が試行される予定です。また、コミュニティー林や魚保護地区を設置した村では、式典終了後、パトロールの研修を行うなどフォローアップを行っています。

まだ豊かな自然が残るエリアで、魚保護地区を設定しました

新たに創設した家庭菜園で、持続的な農産物栽培の支援を行っています
2025年度は、法律研修を1村で行い、約40名の村人の参加を得ました。活動開始後は、活動②に注力したため法律研修を多く実施することはできませんでしたが、2026年度からは本格実施する予定です。なお、他INGOなどと協働で作成した「2026年度版法律カレンダー」を、現行プロジェクトの対象村18村及び前プロジェクトの対象村10村で、10~30部ずつ配布し、同時にカレンダーの使い方や法律の内容について解説しました。さらに、2026年1月には、カレンダー作成の中心となっているNGO「LIWG(Land Information Working Group)のメンバーをセコン県に招待し、「カレンダー発表会議」を開催しました。現地行政官や村人らを招き、住民の土地権利擁護の重要性や、開発事業の危険性などについて共有しました。加えて、LIWGのメンバーがコーチとなり、JVCスタッフや現地行政官向けに、法律カレンダーを用いた効果的な法律研修の実施方法について、勉強会を開催しました。

カレンダーを配布したときの様子

現地行政やJVCスタッフ向け勉強会の様子
前プロジェクトでコミュニティー林を設置した1村で、県行政による一方的な県境変更が行われ、県境にまたがっていたコミュニティー林が近隣村に配分された結果、当該村が使用できなくなる事態が発生しました。村人からJVCに連絡があり、事態が発覚しました。そこでJVCは、当該村と近隣県及び郡行政や近隣村との間を取り持ち、事態の深刻さや解決方法などについて話し合いを重ねました。その結果、県境の変更自体は変えられなかったものの、コミュニティー林が近隣村と当該村で共同管理されていくこととなり、当該村民のコミュニティー林利用権を回復することができました。

現地行政との定期会議で問題を提起