学校に行っていないのは、誰の意思でしょうか〈夏募金リレー2023 #2〉
いつもJVCにあたたかなご支援をお寄せいただき、まことにありがとうございます。
スーダン事業の今中です。
2023年4月に勃発したスーダンの戦闘により、亡くなった市民の数は随時発表されていますが、死傷した兵士の数は発表されていません。正確な数は分かりませんが、何百人ではすまないのは明らかです。
当時私が滞在していたJVC事業地のカドグリでは、関係者の親族に限らず、市場やバス停などあらゆる日常の場で、「誰がどこで亡くなった」「今日は何人亡くなった」「誰の葬式に行った」という話が聞こえてきました。
(ハルツームで亡くなった国軍の兵士の葬儀)
中央政府から長い間辺境の地として扱われ、開発が進まなかった南コルドファン州では、生活のために兵士になる人が後を絶ちませんでした。兵士のリクルートも、たびたびおこなわれています。大きな産業がなく、大きな工場もないカドグリでは、職業の選択肢が限られているのです。
ここは、学校に行ったことのない子どもたちで溢れています。
学校に行っていないのは、彼らの意思でしょうか?
ほとんどの場合、紛争による影響や家計の事情から、学校で学ぶ機会が奪われています。
さらに今回の戦闘によって新たに数千人単位の人々が戦闘地域からカドグリに退避し、その半数近くは就学年齢の子どもたちです。今後さらに増加することが予想されます。
(JVCの補習校で学ぶ子どもたち)
JVCの補習校に通うようになった子どもたちは、私たちの予想以上に「勉強を続けたい!」という気持ちが強いです。両親を亡くし、親戚の家を転々としていたある女の子は、そこで家畜の世話を命じられ、学校に行くことを反対されていました。それでも「勉強して『前進』したい。将来は先生になりたい」という思いで補習校を修了し、現在は正規の学校に就学しています。親戚の考えも軟化し始めました。
JVCでは授業を実施するだけでなく、保護者への啓発、行政・学校・保護者と連携して就学の障壁を取り除くための取り組みも同時に実施しています。また、保護者による学校の見守りも促進しています。
(修了式の喜びを分かち合う保護者と子どもたち)
勉強したことのなかった保護者が、「私たちも学びたい」という口にするのです。もちろんすべてがうまくいくわけではないですが、この取り組みこそが持続可能な教育のために重要です。
長引く戦争を受けて、国軍は引退した兵士の再リクルートをスーダンの他州で始めました。多くの人々が殺到しているそうです。戦争により仕事を失った人々が、お金のために兵士になろうとするのは、ある種当然なことかもしれません。
それでも、不当な労働から解放するとともに、子どもが安心して「子どもらしい」時間を過ごすことが、彼らの健やかな心身を育み、将来的な生計手段や就業の可能性を広げることに繋がると信じています。そしてそれは、長い目でみるとコミュニティの安定にも、大いに貢献していくのではないでしょうか。
日本のメディアでは、私を含めた在留外国人の退避に注目が集まりましたが、逆にそれによって見失われているものもあると思います。
故郷で戦闘が発生し、そこに留まるしかない人々に対して、「ともにいる」というお気持ちを、日本から送っていただれば幸いです。
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JVCでは6月の下旬から、夏の募金キャンペーンがスタートしています。
期間中、JVCスタッフが今思っていることや、皆さんにお伝えしたいことなどを不定期に綴っています。第二弾は、スーダン事業・現地代表の今中の思いをお届けしました。
(第一弾はこちらから)
(今中は7月15日現在、日本に滞在しています。情勢を注視しながら遠隔で事業運営を続け、現地に戻るタイミングを調整しています)
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