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パレスチナ

ガザは才能の宝庫!大学生アーティスト、ワラーさんへのインタビュー

こんにちは、エルサレム事務所の山村です。今回もガザの人を紹介します。

このたび紹介するのは、JVCパレスチナ事業が毎年一部のサポーター様にお送りしているクリスマスカードの2018年版をデザインしてくれた、ガザ在住の大学生・ワラーさんです。
彼女は大学生である傍ら、「Piece of Palestine」という企業を通じて、彼女の絵が描かれたしおりを販売しています。そのセンス、色彩感覚、スケッチのスキルには定評があり、クリスマスカードが仕上がった際には、予想以上の仕上がりにJVCパレスチナ事業チームも一同驚きました。今回は、そんな彼女にクリスマスカードに込めた想いや、彼女の普段の姿について質問をさせていただきました。


(Piece of Palestineのオフィスにて、ワラーさんと。)

Q.ガザのどの地域の出身ですか?
A.出身はガザ市だけど、今はハンユニスに住んでいるの。大きい農場ばかりで広いところよ。ガザ市は騒音がひどくて混んでいるけど、ハンユニスは景色がいいの。ガザ地区は、街は似ているけど、それぞれに違っている。そして人も、地域によって違う特徴があるわ。

Q.いつもどうやって絵のモチーフを決めているのですか?
A.Pinterestというアプリで写真を見てイメージを膨らませるの。 小さな栞に描く絵なら...そうね、20分くらいで描いてしまうかしら。

―(山村)?!これを20分で?!

Q.いつも素敵な絵を描かれていますが、どうやって絵を習ったんですか?
A.中学生のとき、学校で週1回の美術のクラスがあったの。そのときの先生がとても良い人で、たくさんのことを教わったわ。

A.中学生のとき、学校で週1回の美術のクラスがあったの。そのときの先生がとても良い人で、たくさんのことを教わったわ。


(ワラーさんの作品たち。新しいシリーズはエルサレムをモチーフにした作品が多い。エルサレムのカフェで販売される予定。)

Q.絵を描いて売ることで、学費をまかなえた、と聞きましたが...
A.絵を描いて売ることで、学費の半分を自分でまかなうことができたの。自立につながるからとても嬉しかった。

Q.JVCパレスチナ事業の支援者向けクリスマスカードは、どういったイメージで描かれたのですか?
A.この教会はガザの旧市街にあるの。とても歴史的なところ。だから、どうしたら大きなクリスマスツリーと教会の雰囲気が一番マッチするか考えたわ。そしたら、空にサンタクロースを描くアイデアが浮かんで、そう描いてみたの。

Q.このクリスマスカードの絵を、どんな想いを込めて描いたのですか?
A.日本の人たちが、見て幸せになれるようにと思って描いたわ。テーマは「幸せなクリスマス」。たくさんの良いことがありますように、という思いを込めて描いたの。わたしにとってこの注文はとても意味があるものだったわ。

Q.ガザではイスラム教徒の人たちもクリスマスを祝ったりするのですか?
A.ガザのイスラム教徒は、クリスマスを西洋の人たちみたいに特別には祝わないわ。年末だけ祝う感じよ。

Q.普段はどこでいつ絵を描いているのですか?

A.家には小さなアトリエがあって、そこでいつも週末に描いているのよ。平日は大学の建築の勉強で忙しいから。

今回の絵は水彩絵の具と色鉛筆で描いたの。わたしは伝統的な建物を描くのが好き。小さいキャンバスに描くのも好き。大きなキャンバスは時間がかかるし、わたしにはコントロールできないと感じてしまうから。



(ワラ―さんの新作1:エルサレム・岩のドームが描かれたしおり。(手描き))

Q.Piece of Palestineを通して売っているしおりの絵を見ると、エルサレムがモチーフになったものが多いですね。
A.エルサレムには行ったことがないけど、いつか行きたいとずっと思ってる。ガザの人たちにとっては永遠の憧れなの。みんなの夢。

Q.Piece of Palestineを通してワラーさんが作品を売って学費をまかなっていることに対して、ご家族はどのように受け止めていますか?
A.家族も応援してくれているの。すごく喜んでいるわ。

Q.家族で絵を描くのはワラーさんだけですか?
A.うちはお母さんも私くらいの頃までは絵を描いていたそうなの。でも子育てで忙しくなって描かなくなってしまったわ。今でも、絵を描くときはアドバイスをもらっているわ。

Q.ガザのアマチュアの画家たちには、展覧会など、絵を発表する機会が十分にありますか?
A.ガザにはたくさんのアーティストがいるけど、あまり作品を発表する機会がないの。私はUNRWA主催の「人権」をテーマにした作品展で、9年生か10年生の頃に優勝したことがあったわ。そうね、学生の頃は作品展に応募する機会がわりとあったわ。大学生になってからは、トム・ケイ(Tom, Kay:パレスチナ生まれの建築家)の建築作品展に応募して、建築デザインで3位になったこともあるわ。

Q.大学では何を学んでいますか?
A.建築工学を学んでいるの。ガザでは建築は5年間のコースなのよ。学部のうちは建築に関して一般的なことを学ぶの。修士でもっと特化して専門を学ぶ感じよ。今、同級生は80人いて、1年生から5年生まで入れると500人の学生がいる。建築を学ぶのは男性よりも女の子の方が多いわ。男の子は土木工学を選ぶ。あ、そもそも、ガザでは大学に行くのは男の子よりも女の子の方が多いのよ。

Q.今後、絵や建築に関連して、何かやってみたいことはありますか?
A.どこか外国で建築を学びたい。そして建築と美術を結び付けたい。旅行もしたい。

インタビューを通して

まだ大学生で、これからたくさんの可能性を秘めたワラーさん。どんな状況にあっても彼女にはアート活動を続けて欲しい、そして世界中を飛び回って色々な国の風景を彼女のフィルターを通して描いて欲しい、と思わずにはいられませんでした。

クリスマスカードはまだサポーターの皆様のもとへ届いていないのでお見せできませんが、日本の皆さまに届き次第、facebookページなどで紹介させていただきます。



(ワラ―さんの新作2:エルサレム・聖墳墓教会が描かれたしおり。(手描き))

  • パレスチナ事業チームでは、日頃ご支援いただいている感謝を込めて、パレスチナ事業のマンスリーサポーターの皆様、そして一定額以上のご寄付をいただいた皆様に、ベツレヘムから毎年クリスマスカードをお送りしています。送料等の問題があり、全ての皆様にお送りできず、本当に申し訳ありません。ご興味を持たれた方は、マンスリーサポーターにお申し込みいただくか、メールでお問い合わせいただければ幸いです。
    マンスリーのお申し込みの際は、「パレスチナ」をご指定ください。
  • またパレスチナとイスラエルの複雑な郵便事情により、クリスマスカードのお届けに数ヶ月がかかることもございます。ご了承いただけますよう、お願い申し上げます。

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