REPORT

パレスチナ

パレスチナのコンテンポラリー・ダンス

こんにちは! 6月からエルサレムに駐在している並木です。

季節は夏、すでに日中は外を歩くのが辛い日差しの強さですが、パレスチナっ子たちによれば、これからどんどん暑さが増していくのだそうです...。しかも、季節はラマダーン(イスラームの断食月)。学校は夏休みを迎えていて、学生たちは皆、親元に帰省しています。

ラマダーンと夏休みのため、私が主に担当する東エルサレムの活動も、少しペースがスローダウンしています。その代わり、街はラマダーンのお祭りで夜中まで大賑わい! たくさんの催し物があり、私もお誘いを受けて参加してみました。

コンテンポラリー・ダンスの発表会

その一つが、パレスチナ人によるコンテンポラリー・ダンスです。

ハーレド・バルグーティー(Khaled Barghouthi)さんという、新進気鋭の若手ダンサーによる振り付けの発表です。テーマは「インティファーダ#3」。政治や安全保障という名の下で翻弄されるパレスチナの状況、そして歴史から題材を得て、インティファーダの内面的イメージ、とりわけ若者の内面をダンスで表現する...という試みでした。
残念ながら発表中の撮影はできなかったので、拙いですが文章で少し内容をお伝えしたいと思います。




(チラシ。西岸のラーマッラーで開催されました)

会場に到着した40人ほどの観客たちが通されたのは、いつもは私たちの正面にあるはずの、舞台の上でした。観客たちは3段のひな壇に座り、舞台の奥側から観客席を眺める形で、ダンサーたちの登場を待ちました。
立ち籠めるスモーク、赤くて暗い照明、頭上に大音量で響く、誰かを探しているようなヘリコプターの音。そして暗転する舞台。あまりに真っ暗で、自分の目が開いているのか分からない...と思った時、パッとスポットライトがつきました。私たちの目の前、舞台の上に、上半身を露にした若い男性が後ろ向きに座っていました。

一つひとつの筋肉が生き物であるかのように身体を動かし、自分の身体を抱きしめて、何かに抗うように悶える男性。その後に加わった女性1人、男性2人を合わせ、合計4人の若者たちが、身体をめいっぱい使って観客に訴えかけてきました。
引き止め合うように絡まる男女。もがく彼らのパフォーマンスの後に現れた男性たちによる、ナイフで差し掛かるような振り付けは、昨年10月から続く、若者たちによるイスラエル市民襲撃を表しているように思いました(一般的な呼称にはなっていませんが、この一連の事件のことを、若者を主役とした「サード・インティファーダ」と呼ぶ人たちもいます)。
さらに、投石紐を振り回すパフォーマンスや、次々に現れては消える一人ひとりのダンサーたち。この姿からは、今この瞬間も個々に闘う若者たちの姿を連想しました。その後にはダンサー4人の動きがシンクロし、集合体としての若者の団結を想像させます。最後にはダンサー1人が舞台に残り、もがいては地面に引き倒され、また起き上がる...というパフォーマンスを繰り返しました。これも、不条理に屈せず立ち上がり続ける若者の姿を表しているのでしょう。

身体の隅々までを駆使して何かを表現している4人の若者たちの目つきは、神がかっているようにも見えました。この発表のためのみならず、表現に身体を使うため、日々たくさんの練習を積んでいるであろうことも想像できました。本当に、格好良かったです。

発表を観て感じたこと

プロフェッショナルな演技が詰まった約30分の発表を見せてもらい、私が改めて実感したことがあります。それは、「外から持ち込まなくても、パレスチナ人自身による豊かな試みが、ここには既に沢山あるんだなぁ」ということです。

パレスチナでは、こういった芸術に関する大小の催し物も、プロからアマチュアまで、毎週のように開催されています。また、ドキュメンタリーを作る学生さんもいれば、子どもや地域の人々のためのセンター、NGO等を立ち上げて、独自のプログラムを提供している人たちもいます。
占領という政治的な不条理の中、自分や仲間のいのちを輝かせるために動き続ける彼らのモチベーションやエネルギー。それらに触れると、改めて「外部から関わる意味は、一体何だろう?」ということを考えさせられます。

私はまだ、日本人のNGOスタッフとしてここに来たばかり。現地での任期は6ヶ月ですが、少しずつ考え、消化して発信していきたいと思います。

なお、ハーレドさんの記事が、パレスチナのフリー・ペーパー「This Week in Palestine」に掲載されています。英語の記事ではありますが、パレスチナでダンスを追求する苦労にも触れています。こちらも読んでみてくださいね。
また、彼のパレスチナの街中でのパフォーマンス・ビデオがYoutubeに上がっています。街の雰囲気も味わえるこちらもぜひ、ご覧ください。

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