REPORT

パレスチナ

パレスチナを支援するイスラエルのNGO:2)Search for Common Ground

お待たせしました。イスラエルNGOの紹介、第二弾です。

Search for Common Groundは、1982年に米ソ対立の緩和を目的に米国で設立された団体です。世界53ヵ所に事務所を持ち、アジア、アフリカ、中東、東ヨーロッパで活動を展開しており、紛争解決の分野では世界最大のNPO/NGOです。


(Search for Common Groundウェブサイトより)

団体の概要

世界から暴力を伴う紛争をなくすことを目標としている団体です。「対話」を軸に、「メディア」の活用や、「コミュニティ」間の橋渡しなど、紛争関係にある集団の交流や連携を促す活動を行っています。パレスチナ・イスラエル事業に関しては、共同事務所をエルサレムに置いています。「紛争(コンフリクト)」や「違い」は避けられなくても「暴力」は避けられる、というメッセージをうたっています。「多くの人々が、紛争を政治というより宗教の問題だと捉えている現実があり、異なる宗教問の人々の対立が顕著になっている」(団体へのインタビューより)とのことで、宗教間の相互理解を目的としたプロジェクトをメインに様々な活動に取り組んでいます。


(Search for Common Groundウェブサイトより)

プロジェクト内容

当NGOは世界規模プロジェクトの一つとして、「信者の安全を守るため、宗教的指導者が聖地の情勢に対して責任を負う」という規定を作成しました。
作成の過程においてエルサレムでは、ユダヤ教・イスラム教・キリスト教、各宗教の代表者による話し合いと、公開講演が行われました。
作成にあたっては10以上の宗教的指導者の意見を取り入れ、これまでボスニアヘルツェゴヴィナ、北米、ナイジェリア、インドなどで実際にプロジェクトを実施してきました。それぞれの紛争の個別事情を踏まえ、今後もさらに活用を拡大していく方針です。作成の過程においてエルサレムでは、ユダヤ教・イスラム教・キリスト教、各宗教の代表者による話し合いと、公開講演が行われました。
なおこのプロジェクトは、作成された規範を国連の場で議題にあげ、勧告として採決にかけることを最終的な目標としています。

パレスチナ・イスラエル内部では、エルサレムの「ハラム・アッシャリーフ/神殿の丘」という聖地の問題について、宗教関係者が議論できる場を設け、彼らの協力関係の構築を促しており、研究や監視を通じた聖地の保護も行っています。
同じく、宗教に関わる問題を解決するため、現地の警察官、そしてイスラエルの兵役前の学生に対する教育にも取り組んでいます。こうした取り組みを通じてイスラエル側公務員への教育を徹底することで、パレスチナ・イスラエル市民の争い、特に宗教を理由に争いが発生する場合、兵士や警察が公平な姿勢で問題に介入する事が出来ると考えています。


(Search for Common Groundウェブサイトより)

また、Search for Common Groundの柱でもある「メディア」を用いた活動として、パレスチナ・イスラエル双方の消防士が協力し合った実話を描いたドキュメンタリー映画の制作や、パレスチナのニュースサイトと連携したテレビやラジオ番組の制作などを行っています。
これらのプロジェクトは、メディアを通じた人々の交流促進を狙いとしています。

加えて、若手をターゲットにしたプロジェクトにも力を注いでいます。
イスラエル・パレスチナ両側から様々な分野の若手リーダーを募り、野外での活動を 通じて信頼関係を育むプログラムの実施、そしてエルサレムにおいて対話の機会を設けることで和平への道を切り開こうとしています。

進捗状況

人間同士の関わりを深める草の根プロジェクトに関しては一定の成果を出しているようです。例えば上記の若者育成プロジェクトについては、終了後に参加者の8割が和平への信頼性が高まったと回答しています。また、宗教教育を受けたイスラエル警察や兵士は、パレスチナ人・ムスリムへの理解が深まり、パレスチナ人が何故反発するか?について一定の理解を持って問題介入にあたるようになったと回答している人も増えているようです。
一方で、宗教的な問題に関しては、宗教界の上層部が政治に飲み込まれていることもあり、政治が硬直している今、なかなか進展が見込めないのが課題のようです。また同宗教内部においてもヒエラルキーや派閥があり、なかなかまとまった意見が出ないと言う問題もあるようです。


(公開講演のパネルのひとつ。2015年11月18日@Konrad Adenauer Conference Center)

参考リンク

Search for Common Groundウェブサイト
Search for Common Ground facebookページ
(セキュリティー上の問題でアクセスできない場合がございます。)
※本記事は現地事務所の元インターン・小寺さんを中心とした聞き取り調査に基づいています。

取材
・小寺愛(元パレスチナ現地インターン)・金子由佳(パレスチナ現地代表)

編集
・大室奈津美(現 東京事務所インターン)・山村順子(パレスチナ事業担当)

一覧に戻る

関連記事

【ガザ】現金給付支援を受け取った人びとの声③

【ガザ】現金給付支援を受け取った人びとの声②

【ガザ】現金給付支援が現地に届き始めました

戦闘勃発から一年 スーダンの現地の声を聞く