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パレスチナ

ガザの声「今日も生きている。人類は今まで何を学んできたのか?ここには一切の正義は無い」

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現地での死者が1,000人を突破した。そのほとんどが市民である。7月22日以降、有り難くも現地パートナーNGO、アルド・エル・インサーン(AEI:人間の大地)のスタッフとは連絡が取れている。家を壊されてしまったアマルはAEIの事務所に家族と避難していて、久しぶりに少しだが眠れるようになったという。砲撃の音は聞こえるが、「少し遠い」とのこと、少なくとも事務所周辺は今のところ安全なのがせめてもの救いだ。動ける他のスタッフは、AEI代表のアドナン医師と巡回診療に奔走し、体調を崩した母子の健康を見て回っている。衛生キットや 、栄養ビスケットの配布も行っている。現在事業のボランティアさんたちとも少しずつ連絡がとれ、多くの人の生存の確認がとれた。

7月26日未明(日本時間)、12時間の一時停戦のさなか、避難所で暮らす人々は、破壊された自宅にモノを取りに行ったり、現金を持っている人は少しでも食料を買い込もうと町に出たりしている。それでも道には瓦礫があふれ、その下には無数のバラバラになった死体が転がっていると言われる。不発弾もある、またいつ再戦されるも分からない。

今のところ米国のジョン・ケリー国務長官を中心とした停戦合意調整は決着せず、状況は未だ不透明で停戦も一時的なものだ。イスラエル側は徹底したハマスの掃討作戦に出たいようだが、一体彼らの言うハマスとは何かとも思う。一般市民が殺され続ける中で、こういった無意味で無慈悲で大規模な殺戮行為が新たな火種を生み、現在捨て身で抵抗しているハマスのような存在がすぐにまた生まれるのではないか?結果、永久にハマスというパレスチナ人の抵抗の思いそのものは無くならない。そう思わないのか?

今回、停戦案が関係国や国連主導で、出来ては消え、消えては出来てきた。しかし本日まで、ハマスとイスラエル側が納得する停戦案が出来ないままである。どちらがわがままを言っているのか?私には、180万の人間を7年もの間狭い地域に閉じ込めて、生殺与奪の権利を思うがままにし、今回も1,000人近い市民の命を奪いながら、「自分たちの主張こそ正しい」と言っている、イスラエルの方がよほどわがままに見える。

アマルは「人間は今までの歴史で何を学んできたのか?世界は結局強い者がやりたいようにやるようになっている。小さくされた人々は、踏みにじられて、死んでいくしかないのか?ここには一切の正義は無いのか、神様は人間に試練を与えているが、それでもこの試練は厳しすぎる、不平等なものだ」と言っていた。

私の29日に予定していたフライトが、テルアビブ空港へのロケット着弾でキャンセルとなった。このまま帰国が延期され続けるなら、ヨルダン経由の陸路で現地に入るほかない。また、この間日本で情報を発信し続けた私が現地で活動する事を拒まれて、イスラエルに入国させてもらえるのかも怪しくなってくる。現地が混とんとしているが、JVCでは緊急資金支援のための募金活動を開始している。是非ご協力をお願いしたい。

一方、UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)をはじめ、国際機関を通じてのガザへの緊急物資搬入のアレンジも始まっている。 日本政府もガザへの支援に拠出を決定したと聞く。早く停戦をして、死者をこれ以上出さない事、それがまず先決だ。同時に、180万人を集団的に罰するガザ封鎖という根本問題を終わらせなければ、今回のような悲劇はまた繰り返される、そのことも忘れずに活動しなければならない。「ガザはいつでも緊急なんだ」いつだったか、知り合いのガザの医師が私に言った言葉が忘れられない。

※JVC職員も大変お世話になっている、UNRWAの清田明宏医師からも記事が届いていますので下記ご紹介します。

執筆者

金子 由佳 (パレスチナ現地代表)

2011年、国際政治学部・紛争予防及び平和学専攻でオーストラリアクイーンズランド大学大学院を卒業。直後にパレスチナを訪れ、現地NGOの活動にボランティアとして参加。一ヶ月のヨルダン川西岸地区での生活を通じ、パレスチナ人が直面する苦難を目の当たりにする。イスラエルによる占領状況を黙認する国際社会と、一方で援助を続ける国際社会の矛盾に疑問をもち、国境を越えた市民同士の連帯と、アドボカシー活動の重要性を感じている。2012年6月よりJVC勤務。同年8月より現地調整員ガザ事業担当としてパレスチナに赴任。JVCのプロジェクトを通じて、苦難に直面する人々と連帯し、その時間・経験を日本社会と共有したい。

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