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パレスチナ

「平和に生きたい」と願うことは自由だと思う 11月9日からのガザ・イスラエル情勢について【5】

現地時間の20日17時、ガザ地区にいるアマルに電話すると、「今夜21時にハマースとイスラエルが和解するって」という嬉しそうな声が電話の向こうのから聞こえてきました。「いよいよ和解するの!」と私もうれしくなって、この争いが終わったら何をしようか?と言う話で盛り上がります。「アイスクリームを食べに行く、アマルの家族と一緒に停戦祝いのパーティーを開く、そして何より、被害を受けたJVCの事業地の人々に会いに行って、子どもたちに必要なものをちゃんと届けるために一緒に働く」。アマルとそんな話をしていると、彼女の後ろで響く攻撃の音も、すぐに消えてくれるのではないかと思いました。

アマルは「信じることは自由なの」と言いました。停戦をして、平和に暮らしたい、誰からの脅威も受けずに、思うことを思うようにやりたい。そう思うことが、まるで特別なことのように思えました。

翌日の現地時間21日17時、「昨日は停戦合意されなかったね。けれどきっと今晩こそは停戦合意が発表されるよ」と彼女がまた力強く言いました。空爆が激化して8日目、この間殺されたパレスチナ人は140人以上、子どもたちも多数含まれています。体に障害を持っていた4歳のムハンマド・リアド・シャダッラ君は自宅の前で空爆を受けて亡くなったそうです。また、3歳のラナン・ヨセフちゃんは、全身やけどで亡くなりました。

イスラエル側にも死者が出ていて、21日までに5人がガザからイスラエルに向けて発射されたロケットで亡くなりました。また同日、イスラエルの経済、文化の中心都市テル・アビブでは、バスへの仕掛け爆弾の爆発によって、数名がけがをしたとのニュースがありました。

現地時間21日夜、確かに地元メディアは一斉に停戦合意の報道をしています。主な内容は、【1】イスラエルはガザへの一切の攻撃をやめ、またターゲット・キリング(ミサイルの狙い撃ちによる暗殺)もやめる事。【2】パレスチナのあらゆる武装勢力はイスラエルへの攻撃をやめる事。【3】この停戦合意の24時間後、封鎖されているガザのすべての検問所を開けて、人々や物資の出入りを簡単にできるようにすること。【4】その他の事は徐々に決めていくこと、となっています。

この合意を安定的なものにするために、あるいは実効性のあるものにするために、ガザにいる武装勢力も、イスラエル軍も、また双方の市民も、あらゆる努力をしなければなりません。今まで封鎖されていたガザの検問所を開け放つことは、イスラエルにとっては容易ではないかもしれません。また双方で戦っている人々にとって、振り上げた拳を下ろすのも難しいと思います。それにはあまりに多くの人が亡くなり、多くの人が家を失いました。

今日、私と今野は、世界食糧計画(WFP)主導のガザの食糧支援に関する調整会議に参加しました。その参加者であった国際連合パレスチナ難民救済機構(UNRWA)の職員さんは、「今日の時点で10,000人がUNRWAの学校に避難しているが、避難場所は十分に足りていない。生活のための十分な施設はなく、また壊された家の代わりになるようなシェルターもない」と言っていました。

また、19日に出されたAIDA(パレスチナで活動する国際NGOの連合体:Association of International Development Agencies)の声明にもあるように、「ガザの人々には、壊された生活を再び復興させるだけの十分な余力をもはや持っていない」という危惧もあります。事実、普段から封鎖によって十分な物資が入らないガザの人々は、2008年‐2009年の軍事侵攻の後、壊された家屋のコンクリートを再度細かく砕いて再利用し、それを家の再建に充てていましたが、その作業がどれ程大変なことだったかは、計り知れず、ようやく人々も前向きに立ちなおった印象でした。なので、今回の事で、再び全てを失ってしまった人々が、どのように生活を再建するのかを考えると、想像できないほどの苦しみがあるようにも思えます。

JVCとしては、引き続きガザの人々が必要とするものについて情報を現地で収集し、この停戦が現実となった際には、出来るだけ効果的な支援を行いたいと思っています。アマルとまた一緒に事業地に回ることができる日を、とても楽しみにしています。

執筆者

金子 由佳

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