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パレスチナ

ガザ:募るハマス不信?

ガザ訪問中に人々に聞いた話では、ハマス政権に対する不信が募っている様子が伺えました。2006年の評議会選挙で、ファタハの腐敗に辟易したパレスチナの人々はハマスに期待し、ハマス政権が世界のボイコットにあっても、パレスチナ人は民主的手続きを踏んで出来た政権をボイコットする各国を非難してきました。自分たちの選んだ政権に機会を与えるべきだと。2007年ハマスが武力でガザの治安拠点を掌握したとき、暴力を使ったことに反対する声も聞きましたが、ハマス政権による治安管理下、人々は何年かぶりに夜中でも町を歩き、家族で海に泳ぎに行くことが出来るようになりました。

しかし、今回のイスラエルによるガザへの軍事侵攻はガザの人々のハマス政権に対する不信は募らせたようです。ある医師は、そのことを次のように説明しました。ハマスの力は、その組織力にあった。幹部の命令は下部まで徹底されていた。しかし、今回の軍事侵攻でハマスの次のような顔が見えてきた。1.イスラエルと闘わず、逃げ隠れした。自分達の生き残りしか考えていない。2.戦争後は支持者のみをサポートするようになった。他の政党と同じになった。3.ハマスを支持しない団体に圧力をかけ、非ハマスのNGOに支援活動をさせない、というものでした。

イスラエルと闘わず、民間人を見殺しにした、という見方はガザでは多いようです。同時に、イスラエルの地上戦の攻撃はハマスをおびきだすために、故意に民間人を殺害した、という声も聞きました。また、NGOもビジネスマンも、ラマッラー政府ではなくハマスと支援活動や修復活動を調整するよう圧力がかけられているとのことです。あるビジネスマンは、ラマッラー緊急政府から支援を受けないように言われたものの、経済活動をすることの方が必要と、断固反対したと言います。あるタクシー運転手は、ハマスの仕返しが怖くて人々は批判できないと言いました。別の人は、批判の声をあげるだけでは問題にはならないものの、ハマス批判の上になりたった支援活動は停止させられていると話ました。実際ある農業系NGOは活動が出来なくなったと聞きました。そして、国連の毛布や食料などの支援物資を横領するなどの行為は、その後ほとんどが返品されたようですが、ガザの人達に疑問を投げかけています。

しかし、ハマスへの不信が募ることが、必ずしも腐敗のイメージの強いファタハ支持回復でもないようです。また、西岸の調査会社が出した調査結果では、逆に西岸ではハマス支持が増えたとしています。しかし、パレスチナ内の分裂が今回の軍事攻撃をもたらした要因の一つであったことも確かです。今後ガザの人々が人道危機的生活から解放され尊厳のある生活を営むためには、ハマスとイスラエル間の停戦で封鎖解除を約束される必要がありますが、同時にパレスチナ内を統合し、協力して封鎖解除を確実なものにする必要があります。全ての関係者が、ガザの人々の生活と復興を早急の目的とし、そのための努力を惜しまないことを望みます。

執筆者

小林 和香子(パレスチナ現地代表)

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