REPORT

アフガニスタン

ピース・アンバサダー・プレゼンツ! 平和の交流プログラム報告

2018年の夏頃から、JVCのピース・アクションの活動はだんだんと地域的な広がりを持ってきました。今回の平和交流プログラムでは、ナンガルハル州中部・南部の郡の人々によるクズ・クナール郡への訪問が叶いました!厳しい治安により人の移動を伴う活動はリスクが生じるため、今回も慎重に人選や移動手段、集まる場所の確認を行い、準備を重ねてようやく実現したのです。8月から12月にかけて複数の交流プログラムを実施したうちの一つをご紹介します。


JVCはパキスタンと隣り合う、東部ナンガルハル州で活動しています)

JVCは、クズ・クナール郡(赤丸)で住民グループ主体の保健と教育の取り組みをサポートしてきました。ここは、暴力・戦闘が人々の暮らしを脅かし続けているアフガニスタンの中でも特に事件が多いナンガルハル州にありながら、「平和」を保ってきた特殊な場所です。今回、「IS」を名乗る勢力やタリバンの攻勢が強まり激しい戦闘が続いている他の地域からやってきた人々が訪問し、地域活動の現場を見学し、住民同士で語り合いました。


(この度、ナンガルハル州南部の村からクズ・クナールに住民がやってきました!)

こういった交流を重ねることで、クズ・クナールで見られるような地域住民の協力の形が他の地域にも広がり、武装集団の加勢の呼びかけに若者がリクルートされていかないよう、住民自らが「ピース・アンバサダー」として非暴力・平和のメッセージを発信していくことを目指しています!!


「よくいらっしゃいました!」訪問者を温かく迎えるJVCスタッフと村人。いい笑顔です。)

クズ・クナール郡にあるゴレーク村を代表して、青年グループのハリクさんが、訪問者に歓迎の挨拶。

ゴレークにようこそ。ゴレーク村は、モデル村だと思っています。社会全体に良い影響が広がっていくためにも、このような交流が大事です。私が考えているのは、年長者が、今の若者に本当に必要なことをサポートすることが重要だということです。今の社会では、若者は問題の原因だと捉えられがち。でもそうではなく、改善のための主体だと考えるべきです。私達若い世代は、自身が問題となってしまうリスクがありますが、解決のためのアクターとなるべきです。ヘルマンドの平和行進(注)のようなイニシアティブを見習うべきです。

(注:2018年5~6月に南部の州・ヘルマンドから首都のカブールに向けて約700KMのみに地のりを若者を中心に、人々が政府と武装勢力タリバーンの停戦と平和を求めて行進した市民の動き)


(ゴレーク村のホープによる、歓迎の挨拶。それにしても絨毯が美しい)

そのあと、ゴレークの住民から、自分たちがJVCのサポートとともに行ってきたここでの地域活動を紹介しました。保健に関する資料を集めた共用資料室の運営管理、学校での保健の授業や応急処置研修、女性たちによる保健教室と家庭訪問、男性村人に向けた健康教育の実施、学校での教員トレーニング。こうした住民主体の取り組みが村の結束に繋がり、武装勢力によるトラブルをできるだけ地域内に呼び込まないことにも貢献してきたこと。他の地域の人々にも、誇らしく、これまでの活動を発表しました。彼らはまさに、「ピース・アンバサダー」。

ゴレーク村の宗教指導者で、教員でもあるロイダールさんも力強いスピーチ。

皆さんようこそ。お互いのことをよく知ること、お互いの「恐怖」とニーズに対応していくことが大事です。2つの地域はどちらもそれぞれ課題を抱えているが、平和的な交流とネットワークを通じてこそ、解決していけるでしょう。諸外国はアフガニスタンに真の平和への道を作るつもりがなく、終わらない戦争が何百万という殺戮と無辜の人々の命を奪ってきて、そして今なお国は安定を見てない。豊かな者や軍閥たちは安全な場所にいて、子どもたちには外国で教育を受けさせているその一方で、この国では民間人の死が毎日増えていく。続く内戦で、国の発展や法の執行が阻害され、諸問題を悪化させている。

イスラム教は、当然暴力を肯定していない。そのようなムスリム(イスラム教徒)がいるとすればそれは正しく学んでいないからである。ムスリムを批判することができても、イスラム教を批判すべきではない。イスラム教は平和、兄弟愛、優しさ、愛を説くが、人類は戦ってしまう。イスラムを理解せず、盲目的に伝統や習慣に従っているからだ。"真に平和の道に進むのであれば、サタンの足跡を追ってはならない。それはあなたにとって真の敵である" (クルアーンの一節)


動画も見ましたが、本当に魂のこもった熱い熱いスピーチでした)

受け入れ側の村からのそういった発表を聞いて、訪問側も語ります。

ホギャニ村出身のグル・ハジュディンさん

私はソ連侵攻の時代に、ナンガルハル州でムジャヒディン(イスラム聖戦士)司令官としてたくさんの戦争を戦った。その自分が今はこの平和交流プログラムに参加している・・・。今、戦争だけが解決の唯一の道ではないことを感じている。ゴレーク村に来たとき、この村の雰囲気を見て、戦争がなかった頃の暮らしを思い出した。私達には口があり考える頭がある。話し合うべきである。


「ゴレークに来て昔を懐かしく思い出した」とのセリフにぐっときます・・・。)

この交流の最後に、受け入れた村の住民から、「平和の絵の展示会を行うのはどうだろうか」と提案がありました。「例えば、村の若者に"平和な社会"というテーマで具体的に平和が実現した社会のイメージを描いてもらい、掲示する。実施の運びになれば、自分も率先して実現にむけて動きたい」とのこと。JVCとしても、村人と協議しながら、この提案のような具体的な案の実現に協力を検討するとともに、今回クズ・クナールを訪問したホギャニ郡にも新たな平和構築活動への動きが作られるよう、サポートしていきたいと考えています!

最後に、現地から届いた集合写真のキャプションに次のような言葉が添えられていました。

"We get together on the basis of our similarities. We grow on the basis of our differences."(私達は似ているから集う。違うからこそ、成長できる。)

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