学校に行きたくて、外から眺めていた少年
こんにちは。スーダン事業駐在員の今中です。
今回は、スーダン国境から南に数キロだけ離れた南スーダン・イーダ難民キャンプでの出来事を紹介します。ここでJVCは、スーダンからの難民で、かつ脆弱な立場にいる子どもたちの就学支援をしています。
ある日、JVCイーダ事務所に女性が駆け込んできました。少年を連れています。
現地スタッフに、必死の形相で何か話しています。
「息子を学校で勉強させたいんです」
・・・続けて話を聞いてみます。
「私には夫がいません。そして私には目の病気があって、十分に働くことができません。上の子は特例で無償で学校に行かせてもらってますが、下の子の分まで、つまり2人とも学費を払わないのは、学校が許してくれませんでした」
「だから下の子は学校のそばまで行って、外から、学校の中を覗いているのです。どうか、JVCの支援の対象に入れてくれませんか!」
あまりの勢いに押されながらも、一旦落ち着いて話を聞きます。
そして後日、現地行政と調整し、この親子への正式なインタビューを実施しました。すると、JVCが定める教育支援の対象基準にも当てはまっていたため、JVCはこの女性の子どもを、支援対象とすることを決定しました。
男の子の名前は、サラーフ君と言いました。
定期的に実施している家庭訪問で、お母さんに詳しい話を聞くことができました。
(左からサラーフくん、ラマダーンくん、お母さん。2人は異父兄弟)
お母さんは言います。
「イーダでは、物価高騰が続いています。私は数十キロ離れた難民キャンプの登録カードを持っているため(注:イーダでは2019年に国連による食糧配布が停止しています)、配給があるという日は、乗合いバスに乗って食料を受け取りに行きます」
「現金がないときは、受け取った食料の一部を運賃としてバスに乗せてもらっています。今月は目の調子が悪く体調が悪化し、配給に行くことができませんでした。実は以前は、そのキャンプに住んでいたんです。でも治安が悪く、家のものが盗まれました。成人男性がいない家は、ものが盗まれやすいのです」
「それで子どもたちも、イーダ難民キャンプの方がいいと言うので、移動しました。食べるものが不足しているので、カルカデ(ハイビスカス)の葉を茹でて、それを子どもたちに食べさせるだけの日もあります」
(サラーフ君の家で収穫されたもの)
これまで、「カルカデの葉を茹でて食べる」という人に1度も会ったことがなかったので少々驚きました。
カルカデといえば、煮だしてお茶にしたり、ジュースとして飲むのが一般的なので、その葉を食べるなんて、、というのが正直な感想でした。
こうしてサラーフ君はJVCの支援対象児童になったため、昼休みに学校で給食を食べるようになりました。
ですが、兄のラマダーン君はJVCの支援対象児童ではないため、この支援からははずれています。
サラーフ君はラマダーン君に、「一緒に食べよう」とか「半分ずつ食べよう」と誘うのですが、ラマダーン君「それはサラーフの分だから」と遠慮して絶対に食べに行かないとお母さんは訴えます。
(左:JVCが提供している給食を食べるサラーフ君)
こうした状況から、協議をおこない、JVCは兄のラマダーン君にも給食の提供を開始することとしました。もちろん、こうした対処をするとキリがなくなってしまうので注意が必要ですが、今回のケースは話を聞くと、そうするしかありませんでした。
お母さんは、「子どもたちが学校に通え、ご飯を食べることができて、何よりも心の安心を得ました。本当によかったです」と安堵の表情を浮かべました。
このような支援は困難な状況下で暮らす子どもたちの就学を促進するだけでなく、親の精神的・物理的負担をも取り除くことができるのだと実感しました。
親の心身が安定すると、子どもたちの不安も幾分和らぎます。
数か月後、嬉しいニュースが届きました。
学年末のテストで、なんとラマダーン君が学年1位、サラーフ君が学年5位をとって表彰されたと言うのです。
就学支援において順位は重要視していませんが、こうした可能性のある子どもたちが、今まで学ぶ機会を奪われていたことを考えると、この上なく嬉しい成果です。
今、スーダンで起こっている戦争により、何万人という子どもが教育の機会を奪われ、また、親を亡くしています。
これまでJVCが支援してきた子どもたちのように、脆弱な立場に追いやられている子が後を絶たないのが、悔しいけれど現実です。
紛争下に取り残された人々のことを、そして子どもたちのことを、少しでも想像していただけないかと思って、この記事を書きました。
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(9/5追記:9月限定で寄付額2倍キャンペーンを実施中です。詳細はこちら)
<編集:大村(広報)〉
(就学支援の一コマ:自分たちで食べ物をつくるための研修で整地する子どもたち)
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